2017年03月06日
アイデアよもやま話 No.3643 世界が注目するベストセラー「サピエンス全史」の指摘 その1 認知革命!

1月4日(水)放送の「クローズアップ現在」(NHK総合テレビ)のテーマは「“幸福を探して” 人類250万年の旅〜世界的ベストセラー〜」でした。

番組では世界が注目するベストセラー本、「サピエンス全史」を通してこれまでにない新たな視点から人類のこれまでの歴史、そして将来を取り上げていたので4回にわたってご紹介します。

1回目は、人類の最初のターニングポイント、“認知革命”についてです。

 

8年間にわたって激動の世界をリードしてきたアメリカのオバマ大統領(放送時)は今ある本に夢中になっています。

未来を生きるヒントが詰まっているというのです。

オバマさんは、どうやって私たち人間が豊かな暮らしを手に入れたのか、その答えがここにあったとおっしゃっています。

 

その本は「サピエンス全史」、人類250万年の歴史を斬新な視点でひも解く壮大なストーリー、世界的なベストセラーとなっています。

世界のトップランナーたちも口々に賞賛、IT界の巨人、ビル・ゲイツさんは、人類の未来が気になっている全ての人に薦めたいとおっしゃっています。

また、フェイスブック創業者のザッカーバーグさんは、この世の謎を解き明かしてくれる知的冒険の書だとおっしゃっています。

 

イギリスのEU離脱やトランプ次期大統領(放送時)の登場、異次元の金融緩和や資本主義の停滞、そして人工知能(AI)やバイオテクノロジーなど科学の急速な進歩、2017年の私たちは後の時代からみれば大きな歴史の岐路に立っているのかもしれません。

そうした混迷の時代を生き抜くヒントが詰まっていると言われているのが、イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリさんの書いた「サピエンス全史」です。

世界48ヵ国で200万部以上を売り上げています。

 

この本の特徴は、人類250万年の歴史を全く新しい切り口で解釈している点です。

7万年前に起きた認知革命、1万2千年前の農業革命、人類の統一、科学革命と、人が発展を遂げたターニングポイントを4つの時代に分けていますが、作者が全ての時代において重要だと考えているのが私たち人間がフィクションを信じる力です。

 

私たちが普段の暮らしで当たり前に思っているお金や会社などは全てフィクションで、みんながあると信じているから成り立つのです。

国家や法律など私たちの社会はフィクションだらけであると本には書かれています。

そして、この“フィクションを信じる力”こそ人類が繁栄したカギだというのです。

 

今からおよそ7万年前、私たちの祖先、ホモ・サピエンスより力が強いネアンデルタール人という別の種族もいましたが、生き残ったのはホモ・サピエンスでした。

ネアンデルタール人はリンゴなど実際に見えるものしか言葉にして周りに伝えられなかったといいます。

でもホモ・サピエンスは神様のようなフィクションを創造し、それを全く見知らぬ他人に伝えることが出来たといいます。

フィクションを創造し、みんながそれを信じる、そのことで多くの仲間と協力し、大集団での作業が可能になったのです。

これが人類の最初のターニングポイント、認知革命です。

私たちの祖先が集団で大きな力を発揮し、地球上の覇者になった源です。

人類史研究の第一人者、海部 陽介さんは、“フィクションを信じる力”で人間が発展した証拠は古代遺跡にも残っているといいます。

海部さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ラスコー洞窟の壁画です。」

「黒で描かれたバイソンとそれから人間がいるんですけど、よく見るとその人は頭が鳥のような姿をしています。」

「現実に存在しないものを創り出しているわけですね。」

「そういう物語を生む能力がここに既にあったんだ。」

「こういう能力を持った人たちだったからこそ大きな社会を作っていったという仮説をバックアップするような・・・」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ラスコー洞窟の壁画については学校で学んだ記憶はありますが、あらためて番組で海部さんの説明を聴くと、当時の人たちの想像力の豊かさに驚かされます。

 

さて、私たちがふだんの暮らしで当たり前と思っている宗教や憲法、資本主義経済、企業、あるいは文化、芸術、そして、小説や映画、テレビドラマなどは全て私たち人間が自ら生み出したフィクションである、という指摘は言われてみれば確かにその通りだと思います。

そして、このフィクションこそが私たちホモ・サピエンスの生存、暮らしの発展のカギであるという指摘も納得出来ます。

 

ネアンデルタール人のように現実にあるものの枠内で物事を考えるのと現実の枠外でも物事を考えるというのでは次元が違い、大変大きな差があります。

現実の枠外には無限の世界が広がっているからです。

こうした説明に触れると、なぜネアンデルタール人が存続出来ず、ホモ・サピエンスが今も存続しているのかという理由がよく分かります。

 

こうしたことから「サピエンス全史」の著者、ハラリさんの唱えるように、このフィクションというものが“認知革命”と言われるようにとても大きな変化であるということが納得できます。

 

さて、この考え方を今を生きる私たちに当てはめてみると、次のようなことが言えると思います。

国連憲章や国の憲法や会社の方針、あるいは様々な組織の取り決めは全てフィクションなのですから、これらを当然と受け止めて縛られることなく、周りの環境や時代の流れの中で不都合が生じて来れば、アイデアを駆使して変えることが新たな進歩につながるということなのです。

 

なお、このフィクションも人間が相互に理解し合えるようになってこそ、そのパワーを発揮することが出来ます。

そういう意味では、お互いの思いを伝えることの出来る言葉の発明、そしてその言葉を書き残すことの出来る文字の発明も“コミュニケーション革命”と位置付けてもいいほどの大きな変化だと思います。


 
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