2017年03月05日
No.3642 ちょっと一休み その584 『アメリカの民主主義は崩壊しつつある!?』

1月20日のアメリカのトランプ政権誕生以降、連日のようにトランプ政権の動向が様々なマスコミで取り上げられています。

そうした中、2月21日(火)放送の「プライムニュース」(BSフジ)では「トランプ大統領の“黒幕”バノン主席戦略官の世界観」をテーマに取り上げていました。

そこで、今回は番組を通してアメリカにおける民主主義の崩壊の様相についてご紹介します。

 

青山学院大学地球社会共生学部の会田 弘継教授は、番組の中で以下のようにとても興味深いことをおっしゃっていました。

「民主主義の問題ですけれども、世界価値観調査というのがあって、これに従ってアメリカの、あるいはヨーロッパの世代別に人々が今民主主義をどう思っているのか調査すると、いわゆるミレニアム世代、1980年代以降の世代の人たちの民主主義に対する信頼感はものすごく低いです。」

「30%かそのくらいしかない。」

「例えば1950年代生まれ、あるいはそれ以前の人たちだと当たり前ですから、アメリカ人だったら80%民主主義が大切なものだという人が今若い世代では30%ぐらいしかいない。」

「これはものすごく真面目な学術調査ですよ。」

「そういうかたちで出てて、確かに民主主義に対する大きな疑念が生じている。」

「それはなぜか、やっぱりそれは今アメリカ社会の姿ですよね。」

「勿論、トランプに投票した人たちはものすごく閉そく感、これは古い話ですけども富の集中の問題ですよね。」

「で、それを打破出来ない。」

「それからいわゆる長期停滞型の経済に入ってしまった。」

「その中で、かつてだったら格差があっても成長の中でそれが何とか解消された、希望を抱けたかも知れない。」

「しかし今、実際にそういう展望も恐らく人々は失っているのかも知れない。」

「で、これは調査するとアメリカの世代間の格差の流動性というのは今どんどんなくなっている。」

「つまりアメリカはアメリカらしくなくなっている。」

「親の代が貧しくても頑張れば子どもの代では豊かになる、それが実際にはそういうふうになっているかどうかを経済学的に調査すると、アメリカはなってないんですよ。」

「イギリス、アメリカはひどく格差が固定化しちゃっている。」

「そういう状況が人々にとても不安な気持ちを抱かせて一種の破壊性みたいなものを求める。」

「重要なのは、価値観についてはこういうことが言えるんですね。」

「つまり、多文化主義とかいわゆるグローバルに生きている人は当たり前。」

「つまり、大企業で今や世界的にサプライチェーンが広がって企業のエリートは世界中を動き回るわけですから、中国人、インド人、日本人、みんな一緒にお互いの価値(観)を尊敬し合って。」

「つまり多文化主義っていうのはエリートにとっては必要でもあり、また進歩的なものでもある。」

「それはしかし、では今度のアメリカでフライオーバーと呼ばれるいわゆるレフトビハインド、あるいは忘れられた人々、中心部の地方、農村部、あるいは荒廃したあるいはラストベルト、そういうところに住んでいる人にとってなぜそういう価値観を持たなければいけないか、彼らはグローバルに生きているわけではない、むしろグローバライゼーションによって自分は苦しい立場に置かれているんじゃないか。」

「そういう人たちにとってグローバルな価値観を持つということは全然分からない。」

「今、たとえばトイレの男女別を無くそうって言っているわけですよね。」

「それも古い価値観の中で生きてきて、なんでそんなことしなければいけないのか。」

「これも一つの多文化主義の流れの中で出てくるわけですけども、人々は付いて行けない。」

 

補足:ラストベルトはさびついた工業地帯を意味し、この呼び名はこれらの地域の多くの産業が時代遅れの工場・技術に依存していることからつけられました。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

これまでのアメリカのイメージといえば、世界中の民主主義国家の大黒柱的な国家であり、世界をリードする圧倒的な存在でした。

また、「アメリカンドリーム」という言葉に象徴されるように、どんな家庭に生まれようとも誰でも努力次第で経済的、あるいは社会的な成功を収めることが出来る、というような夢と希望に満ちた国家のイメージでした。

ところが、今回ご紹介したように現実は、若い世代では30%ぐらいしか民主主義に対する信頼感を持っていないというのです。

まさに、アメリカがアメリカらしくなくなってきているのです。

その背景は、やはり格差社会化の進行、およびそれに伴う世代間の格差の非流動性にあるようです。

 

こうしたアメリカに広がる閉そく感がとりあえず現状を打破してくれそうなトランプ大統領を誕生させたと思われます。

そのトランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、内向きな政策を打ち出しています。

このアメリカの大転換は当然世界的に大きな影響を与えます。

今のところは、少しでも悪い影響が出ないように願うのみです。

しかし、先進国を中心にその他の国々が知恵を出し合って、アメリカの暴走を食い止め、アメリカの政策の軌道修正を出来るような状態をもたらすことを目的に一致団結していけば、明るい未来が見えてくるはずです。


 
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