粉薬の包み紙、「オブラート」について、特に若い世代の中にはその名前すら知らない方々が多いと思います。
そうした中、その「オブラート」の新たな用途について、1月10日(火)放送のニュース(NHK総合テレビ)で取り上げていたのでご紹介します。
粉薬を飲む時に包み紙として使われてきた「オブラート」、最近あまり見かけなくなりましたが、今海外で人気を集めています。
その使い道は全く意外なものでした。
デンプンと水で作られた「オブラート」、苦みのある粉薬が減り、錠剤の薬が増えたことで最近あまり見かけなくなりました。
現在、国内で「オブラート」を製造しているのは3社だけで、瀧川オブラート株式会社(愛知県新城市)は国内シェア7割を占めています。
こちらの会社では「オブラート」の利用が減り、売れ行きが伸び悩む中、4代目社長の瀧川
紀幸さんは新たな一手を打ち出しました。
「オブラート」に食べられるインキを使ったペンで絵を描き、食べ物に貼ってデコレーションすることが今海外で人気を集めているのです。
瀧川社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「長いこと薬を飲むフィルムでやってきたので、他に使い道はないかというのを常々考えていまして、食べられるフィルムということで何か出来ないかというのが始まりです。」
一昨年、瀧川社長は新たなマーケットを開拓しようと海外市場の調査に出向きました。
訪れたのは漢方薬を飲む人が多いシンガポ−ル、「オブラート」で漢方薬を包んで飲んでもらえるのではと考えたからです。
しかし、現地で言われたのは、「煎じて飲みますよ」でした。
煮出して飲むことを知って焦った瀧川社長が苦し紛れに取り出したのが食紅のペンでした。
新しもの好きのシンガポール人が非常に「それはいい」ということで、そこから偶然始まったというのがきっかけです。
専用の「オブラート」の開発、これまでは厚さ0.01ミリで、ペンで描くと溶けてしまいます。
そこでデンプンと水の配合や乾燥させるスピードを変えるなどの改良を加えて0.02ミリ以上にしました。
また、シンガポールのシンボル、マーライオンなどの絵柄をあらかじめプリントして食品をデコレーションし易いように工夫しました。
特に旧正月に使うめでたい言葉がヒットしました。
昨年10月、日本の食文化をPRするイベントでも注目を集め、現地の飲茶チェーン店からは1万7000枚の発注がありました。
アニメのキャラクターなどを描いたキャラ弁を作る人も出てきました。
現地の主婦や料理研究家がブログやSNSで発信し、人気が広がっています。
瀧川社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「ホームパーティや誕生パーティなんかで、手軽に使っていただけるのが非常にありがたいですね。」
「笑顔であふれる一助になればというふうに思っています。」
「出来れば、そのまま日本へ持って来て、日本でもそんなシーンが見られればいいなと思います。」
瀧川社長は、絵を描いたり、文字をプリントしたり出来る「オブラート」の販売を今年から国内でも始めたいと考えています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
どんなにヒット商品で成功した企業でも、そのヒット商品はやがて売り上げが頭打ちに、そして売り上げが下降線をたどっていきます。
そうした時に、ヒット商品を支えた技術を他の商品づくりに活用出来ないかと考えるのは当然です。
しかし、そのアイデアはすぐに閃くというものではありません。
今回ご紹介した「オブラート」の生産技術もたまたま「オブラート」がシンガポールに出向いた時に、現地企業の方との会話の中で食品のデコレーションとしての用途のヒントを与えてもらえたのです。
まさに、アイデアは存在し、見つけるものであるという言葉そのものです。
独自の技術を持ったメーカーは沢山あると思います。
しかし、そうした中にはその技術を生かし切れてない企業も多いと思います。
ですから、自社独自の技術を一覧表にまとめておき、ビジネス環境や売れ筋商品の動向などを定期的に把握し、更に消費者の抱える問題点に対して常にアンテナを張っておき、一覧表に照らして何か応用出来ないかと思いを巡らせておくことはとても重要だと思います。