これまで、アイデアよもやま話 No.1250 いろいろな味が簡単に作れてしまう!
で人工的な味づくり、そしてアイデアよもやま話 No.1547 オランダが進める夢の人工肉作りプロジェクト!でオランダでの人工肉作りについてご紹介してきました。
また、世界的な人口増により2050年には全世界の肉の生産量を2倍にしなければ、肉にありつけなくなるとも言われています。
そうした中、昨年12月20日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”人工肉”バーガーについて取り上げていたのでご紹介します。
アメリカの代表的な食べ物といえばハンバーガーですが、今、肉を使わずに風味や味を再現した“人工肉”を使ったハンバーガーが広がり始めており、近く日本にも上陸しそうだといいます。
アメリカ サンフランシスコのレストラン、コックスコームでは昨年10月から始めたばかりの新しいメニューが大人気となっています。
“人工肉”を使ったハンバーガーで、その名も「インポッシブル・バーガー」、つまり“あり得ない”ハンバーガーです。
実は、このハンバーガー、肉を使わずに牛肉を再現した100%植物由来の“人工肉”なのです。
この「インポッシブル・バーガー」を食べた二人の若い女性客は、番組の中で次のような感想を述べています。
「牛肉を食べる時はホルモン剤が使われていないかなど、気を配っている。」
「この肉は脂が多過ぎないし、いいわ。」
「本当においしい。」
「“植物性”なのに肉汁まで出てすごい。」
牛肉100%のハンバーグと比べるとこの「インポッシブル・バーガー」は少し薄く見えますが、焼いてみるとちゃんと焦げ色も付いてミディアムレアの焼き加減まで牛肉そっくりです。
「インポッシブル・バーガー」の価格は19ドル(約2200円)で、ランチにしては値段がかなり高めですが、次々と注文が入ります。
普通のハンバーガーよりコレステロールなども低く、健康的だとリピーターもいて、他にも3つのレストランで提供が始まっています。
コックスコームの副料理長、マイク・ヤングさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「“人工肉”バーガーは、週200〜300出るよ。」
「メニューに加えてから売り上げが急増した。」
この「インポッシブル・バーガー」を開発したのは、シリコンバレーのベンチャー企業、インポッシブル・フーズです。
創業者は、スタンフォード大学の生物化学名誉教授でもあるパット・ブラウンCEOです。
およそ130人いる社員の3分の2は科学者です。
牛肉の味に近づけようと、分子を解析するなど5年をかけて開発しました。
ブラウンCEOは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「植物由来の成分だけを使って肉や魚を作れないか考えた。」
では実際に“人工肉”は何からできているのかですが、肉の本体は小麦から抽出したプロテイン、つまりタンパク質、そしてこんにゃくの粉などから取った炭水化物はつなぎの役割です。
そして、脂身を再現するのは、冷やし固めたココナッツオイルと大豆のプロテインです。
更に牛肉再現のカギとなったのは、肉独特の味や香り、色を生み出す液体、レグヘモグロビンです。
マメ科の植物の根に存在する血液に似た成分で、肉らしさを植物で再現しているのです。
開発の狙いは、地球環境への負荷を減らすことになります。
畜産の場合、飼育する過程で大量の水や飼料が必要なうえ、CO2も排出します。
しかし、“人工肉”の「インポッシブル・バーガー」なら水は85%削減、CO2は89%削減という具合に大幅に削減出来るのです。
なお、このビジネスにはマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツさんが100億円以上投資し、話題になっています。
ブラウンCEOは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「ばかげていると思うかもしれないが、今後20年で世界に流通する肉を全て“人工肉”で置き換えるのが目標だ。」
こうした“人工肉”をめぐる競争では、高級スーパーのホールフーズ・マーケット(ニューヨーク)がビヨンド・バーガー(5.99ドル)の販売を始めています。
これも100%植物由来です。
三井物産も出資し、2017年に日本でも発売予定です。
更に進んだ企業も登場しました。
ベンチャー企業のメンフィス・ミート(サンフランシスコ)では、実験室で肉を作り出しました。
牛肉から取った細胞を培養し、“人工的”に肉を作ることに成功したのです。
昨年1月、世界で初めて“培養ひき肉”のミートボールを完成させました。
そして、昨年11月には“培養かたまり肉”を完成させ、5年後には商品化を目指しています。
バイオ技術の進歩により、食肉大国のアメリカで始まった人工肉の開発競争、今後私たちの食生活を大きく変えることになるかもしれません。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
本来、植物や動物を生のまま美味しく食べることが出来れば地球環境に負荷を与えることはありません。
しかし、人間は他の動物とは違い、より美味しく食べられるように特別な飼料を与えたりして、その結果地球環境に負荷を与えてきました。
しかし、冒頭でもお伝えしたように、世界的な人口増により2050年には全世界の肉の生産量を2倍にしなければ、肉にありつけなくなるとも言われているのです。
今や、肉ばかりでなく、漁獲類も獲り過ぎ、あるいは地球温暖化の影響で国内の近海での漁獲量が以前に比べてかなり少なくなっているという話を耳にします。
このように食料資源は有限であること、また従来の方法での肉などの食品加工による地球環境への負荷などの状況下でこれまでの食生活を維持していくためには、持続可能な食品作りが求められるのです。
その解決策の一つが“人工肉”なのです。
また、“人工肉”の作り方にもいろいろあるようですが、しばらくはそれぞれの関連企業による試行錯誤が続くと思われます。
更に、こうした研究が進められていくと、これまで存在しない匂いや風味の食べ物、あるいはとても食べやすく、しかも健康維持につながる栄養バランスの行き届いた食べ物も生まれてくる可能性をもたらしてくれると期待出来ます。