2017年02月24日
アイデアよもやま話 No.3635 ”和”の職人技に世界が注目 その2 切れ味のよさと安全性を兼ね備えたステーキナイフ!

昨年12月18日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で世界が注目する”和”の職人技について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。

2回目は、切れ味のよさと安全性を兼ね備えたステーキナイフについてです。

 

1回目では、魚の調理法を極めた魚屋さんについてご紹介しました。

一方、和食で使われてきた道具を、海外に売り出す動きも出ています。

700年の伝統を持つ、刃物の産地として知られる福井県越前市です。

越前打刃物と呼ばれる伝統の和包丁は抜群の切れ味を誇ります。

この5年間で売り上げが倍増した打刃物メーカー、株式会社龍泉刃物があります。

社長の増谷 浩司さんは、伝統の技に新たな工夫を加えて海外市場を開拓してきました。

海外での成功の鍵となったのがステーキナイフです。

伝統を受け継いだ鋭い切れ味と、波紋のような美しい模様が特徴です。

このステーキナイフに使われているのは、市内にある金属加工メーカーが作った鋼材です。

性質が違う金属を特殊な技術で重ね合わせて加工しています。

厚さ数ミリの板を拡大してみると、およそ70層の金属が重なり合っているのが分かります。

その金属を再び熱して柔らかくし、職人が打つ場所を細かく変えながらナイフのかたちに整えていきます。

そして、今度は目や指先で何度も確認しながら刃を研ぎ澄ませていきます。

熟練の職人ならではの技です。

生産できるのは、1日に僅か2本程度。

ようやくナイフに美しい模様が浮かび上がりました。

完成したナイフを使ってみると、押すだけでは切れませんが、ほとんど力を入れなくても引くだけですっと切れます。

その秘密は何か。

刃の部分を顕微鏡で拡大すると、200ミクロンの細かいぎざぎざが出来ていました。

硬さが違う70層に重なり合う金属の削れ具合の差によって生み出されていたのです。

ただ、子どもも使うステーキナイフには、切れ味のよさと相反する安全性も必要となります。

増谷さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「握り手の近い所は全く刃が付いていない。」

「お客様がけがをしないように、切れないような状態になっています。」

 

100種類以上の試作を重ねてきた増谷さん、刃先に丸みを持たせ、持ち手に近い部分は切れないかたちにして、ステーキナイフを完成させました。

 

今、評判を聞きつけた海外のレストランから注文が殺到しています。

オランダにあるレストランでは、ステーキなどの肉料理にこのナイフが使われています。

人気のステーキナイフについて、このレストランのお客さんは次のようにおっしゃっています。

「(ある女性客は)とても切り易いわ。」

 

「(ある男性客は)手に馴染みやすい良いナイフだね。」

「切れ味も良いし、食事も楽しくなるよ。」

 

この人気のステーキナイフ、注文から4年以上待つ製品もあるといいます。

ステーキナイフで会社の知名度が上がった効果は、本業の和包丁にもつながっています。

オランダの包丁店では、増谷さんの会社の和包丁が店の中心にずらりと並んでいました。

この包丁店の店主は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「とても質の高い包丁です。」

「料理人だけでなく、いろいろな所から引き合いがあるよ。」

 

増谷さんは昨年12月、食の都、パリにも販売拠点を設けました。

国内市場が伸び悩む中、さらに海外に販路を広げようとしています。

増谷さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「職人が昔ながらの技術を上手に取り込んで、新しいものづくりをしていくと。」

「日本に留まらず世界に発信して、その国に受け入れられるようなものづくりをしていきたいと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

切れ味のよさと相反する安全性、更には波紋のような美しい模様を兼ね備えたステーキナイフ、ほとんど力を入れなくても引くだけですっと切れるということなので、機会があれば是非自らその切れ味を試してみたいと思います。

 

この素晴らしいステーキナイフに使われているのは、市内(福井県越前市)にある金属加工メーカーが作った特殊な鋼材といいます。

こうした素材メーカーと刃物メーカーという企業同士の組み合わせでお互いの素晴らしい技術を持ち寄ることによって世界に誇れる素晴らしい商品が生まれたのです。

まさに、アイデアは既存の要素(企業)の組み合わせなのです。

全て自社だけで完結して商品づくりをしなくても、技術を補完し合えるような企業同士の協業により、より優れた商品をより短期間のうちに完成させることが出来るのです。

ですから、どの企業がどのような独自の技術を持っているのかを容易に把握出来るような環境の整備がとても重要ということになります。


 
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