2017年02月20日
アイデアよもやま話 No.3631 電通の労働環境改革に見る本気度!

広告大手の電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24歳)が2015年12月クリスマスの日に長時間労働を苦に投身自殺したことに関しては、アイデアよもやま話 No.3527 広告大手の若手女子社員自殺報道に接して!あるいはプロジェクト管理と日常生活 No.471 『電通社長の辞任表明を企業の働き方改革の起爆剤に!』でお伝えしました。

そうした中、2月14日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で電通の労働環境改革について取り上げていたのでご紹介します。

 

新入社員の過労自殺問題で書類送検された電通は、2月14日に決算会見を開きました。

先月就任された電通の新社長、山本 敏弘さんは決算会見の場で次のようにおっしゃっています。

「労働環境の改革が私の最重要課題と認識しております。」

「弊社が抱えております労働環境に関する問題が極めて多岐にわたり、複雑である。」

「機械化した方が良いもの、してはいけないものを具体的に切り分けている最中であります。」

 

「(改革への投資で2017年期の国内事業は減収減益を見込んでおり、)2017年の(国内事業の)減収は、「仕事量を無理に追いかけない」という意味だとお考えいただければと思います。」

 

社員の労働時間の削減などを進める電通は、社員の労働環境を改善するため新たに70億円の投資をすると明らかにしました。

200人の臨時雇用などを計画し、仕事の機械化も進めるといいます。

そして電通は4月までに労働改革案を打ち出す方針です。

 

番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄准教授は、次のようにおっしゃっています。

「(電通も)今回は本気で改革をしようとしていますね。」

「実際に、夜10時になると皆さん帰られて電気消えます。」

「一方で、電通というのはいっぱい働いてお客さんにつぎ込んでそれで今まで儲けてきた。」

「それがある意味強みだった部分もあって、その強みがこの対策で弱まるんじゃないかという懸念を持っていらっしゃるのも事実なんですね。」

「(働き方を変えたうえで、今までの文化とは違う新たな電通文化を作っていかなければいけないのでは、という問いに対して、)そういうことになると思いますね。」

「実際にそういう方も電通の中に出て来ていまして、私はポイントは生産性をいかに上げるかということだと思うんですね。」

「労働時間を短くすることが目的だけではなくて、それを通じて生産性全体を上げていくということが重要なわけです。」

「日本経済は実はあまり生産性が高くなくて、(2015年の日本の労働生産性は)OECD35ヵ国の中でも22位なんですね。」

「実はギリシャやスペインより生産性が低いんです。」

「これだけ素晴らしい技術があってこれだけ勤勉な国民がいて、生産性がOECDの中で22位っていうのはどこかに無駄があるんですね。」

「例えば、身近なところでは会議が長いとか、パワーポイントの資料をいっぱい作り込んじゃうとか。」

「だからそういうところから含めて変えていかなければいけないんですが、ただそう言っても中々変わりませんので、まずはこういう労働時間に枠を設けて、社員一人一人にどうやったら無駄をなくすかということを気付いてもらうと。」

「それで、結果として日本全体の生産性の底上げを図っていくっていうことが重要なんだと思いますね。」

「(いろいろな企業でまだ短い時間で良い成果を出す術を確立されていないのではという指摘に対して、)そうですね、電通の社員の中でも(その術を)気付いていない方が多いですし、パナソニックが週10時間という(残業時間の)制限を徹底的に設けましたけど、あれも社員に気付いてもらうという環境作りだと理解した方がいいと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

電通の新社長、山本 敏弘さんが決算会見の場でおっしゃった「労働環境の改革が私の最重要課題と認識しております」という言葉には並々ならぬ決意が感じられます。

実際に社員の労働環境を改善するため新たに70億円の投資をすると明らかにしております。

そして電通は4月までに労働改革案を打ち出す方針といいます。

しかし、ただ単に労働時間を制限するというのでは、実態を変えることはあまり期待出来ません。

自宅に仕事を持ち込むなど、隠れたかたちの残業となってしまいます。

 

そこで、労働改革案を打ち出すポイントについて、私の思うところを以下にまとめてみました。

・まず、1日当たり、および1ヵ月当たりの労働時間の制限、および生産性向上の目標を設定する

・あらゆる現状の業務プロセスをまとめる

・その結果から、あるべきプロセスを検討する

・そのプロセスを機械化した方が良いもの、してはいけないものに切り分ける

・機械化した方が良いものについては、AI(人工知能)、ビッグデータなどの活用の可能性を検討する

・機械化してはいけないものについては、難易度により業務を切り分ける

・難易度の低い業務については、パートや契約社員の活用でカバーする

・このような業務プロセスの見直しにより、労働時間の制限、および生産性向上の目標が達成出来るかどうかを検証する

・もし、達成出来なければ、達成できるまで業務プロセスの見直しを繰り返す

・こうして完成した業務プロセスを実際に特定の業務部門で一定期間試行する

・その結果、問題点を改善したうえで全社展開をする

・その後も、目標対実績を把握し、1年ごとなど定期的に業務プロセスを見直し、更なる改善を継続する

 

いかがでしょうか。

 

さて、2015年の日本の労働生産性はOECD35ヵ国の中でも22位という低さです。

ですから、電通には是非、日本全体の生産性の底上げを図っていくうえでのリーダーを目指すくらいの意気込みで労働環境の改革に取り組んでいただきたいと思います。

その結果、多くの社員がワークライフバランスの観点から満足出来るような労働環境が確立出来れば、自ら命を絶った高橋まつりさん(当時24歳)の供養にもあると思います。


 
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