2017年01月17日
アイデアよもやま話 No.3602 自動車をめぐる新たな動き その7 見えてきた未来の自動車のかたち!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

7回目は、見えてきた未来の自動車のかたちについてです。

 

まず、昨年7月11日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で自動車のミラーレスについて取り上げていたのでご紹介します。

 

自動車を運転する際に周囲の状況を確認し、安全を保つために必要な部分がミラーです。

昨年6月にそのミラーに関する基準が大きく変更されました。

これまでは鏡を使わないとミラーは認可されなかったのですが、今回の変更で鏡を使わないミラーレス車も可能になったのです。

ミラーレスとは鏡の代わりにカメラとディスプレーを搭載することを意味します。

従来のサイドミラーの位置にあるカメラで外の映像を撮影し、ディスプレーにその映像が映し出されるのです。

そこで、今その開発競争が激しさを増しています。

 

番組では、開発競争の最前線を取材しました。

自動車用ミラーを製造している市光工業(神奈川県伊勢原市)では、今ミラーレスの試作機を搭載した実験車両で実験が進められています。

市光工業では現在、このミラーレスのシステムを商品化するため、国際的な認証機関、デュフ ラインランド・ジャパン(横浜市都築区)で試験を受けています。

市光工業では2017年には認証を取得し、海外での販売に乗り出すことを目指しています。

 

市光工業が開発を急ぐ背景には、産業構造が変わることへの危機感があるといいます。

市光工業では、国内の自動車メーカー8社と取引があり、年間300万個以上の自動車用ミラーを生産しています。

自動車が輸出される国ごとにミラーの規格には細かい決まりがあり、仕様が異なります。

なので、組み立て作業の機械化が難しく、これまで人手に頼ってきました。

しかし、ミラーレスなら各国の規格に合わせてソフトウェアを変更することになるため、手作業が不要になります。

 

さて、ミラーレス車はここ数年のうちに登場すると見られています。

ミラーレスには欠かせない車載カメラの市場も拡大しそうです。

世界の車載カメラモジュール市場は2025年には3609億円(2013年比約5倍)と見込まれています。

その市場に新たに食い込もうとしているのがカーナビ大手のJVCケンウッド(東京都八王子市)です。

その特徴は、JVCケンウッドが得意とする映像処理技術です。

運転席の両サイドと後方に合計3台のカメラを搭載し、3つのカメラが捉えた映像を一つのディスプレーに合成して表示出来ます。

自動車の運転中に後方の様子を一つのディスプレーで確認出来るので視線の移動が減り、安全性が高まることが期待出来ます。

 

更にこの自動車はミラーレスだけではありません。

スピード表示などは全てフロントガラスに投影するヘッドアップディスプレーに映し出されます。

JVCケンウッドでは自動車のミラーレス化が運転席全体の電子化の起爆剤になると考えていて、そこにチャンスを見出そうとしています。

JVCケンウッドでは、このミラーレスシステムを10年以内に実用化する計画で開発を急いでいます。

 

ミラーレス参入の動きは他にも以下のような動きがあります。

・2015年6月

  パナソニックがスペインの自動車用ミラー大手、フィスコに出資

・2015年12月

  デンソーが画像処理技術を持つモルフォと提携を発表

 

さて、市光工業によるとミラーレスには以下のようなメリットがあるといいます。

・従来のサイドミラーに比べて画角が2倍以上に広がり、これまで死角だった箇所まで見ることが出来る

・ギアをバックに入れた場合、地面に近い箇所まで表示され、これまで見えずらかった後ろのタイヤ周りまでよく見えるようになる

・サイドミラーに比べて軽量化され、空気抵抗も少なくなるので燃費が約1%改善する

 

一方、番組ではミラーレスの課題として、従来のミラーのような奥行き感の無さによる違和感を指摘しています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

既に、自動車の周りを360度にわたってモニターに映し出す機能を装備された自動車が市販化されつつありますが、これまでのミラーでは死角となっていた箇所やスピード表示などが全てフロントガラスに投影するヘッドアップディスプレーに映し出されるようになれば、運転時の安心感が増し、事故防止にも大いに役立つと期待出来ます。

更に、自動運転機能との組み合わせにより、事故防止対策は更に強化されます。

車線変更時に後ろの車からクラクションを鳴らされたり、ぶつかりそうになってヒヤッとした思いをしたのは私だけではないと思います。

こうした経験から出来るだけ早く今回ご紹介したような機能を標準装備するように全ての自動車メーカーにお願いしたいと願います。

 

さて、自動運転車時代の到来を見据えて、ぶつからないことを前提とした自動車づくりの動きも出て来ています。

実際にぶつからないことを前提にした、布で覆われたような試作車を展示会で見たことがあります。

完全自動運転車が実用化され、ぶつからないことが保障されるような時代になれば、車体は鉄板ではなくプラスチックなど軽量化された素材に代えることが出来ます。

そうなると、自動車のデザインのバラエティが広がり、生産コストの削減により自動車の低価格化にもつながりますから、消費者にとってはメリットがあります。

一方で、自動車産業に係わる従来の素材産業にとっては大きな影響が出てきます。

 

ということで、ここでも従来の産業から新しい産業への転換がもたらされるのです。


 
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