2017年01月13日
アイデアよもやま話 No.3599 自動車をめぐる新たな動き その5 激化する自動運転車の開発競争!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

5回目は、激化する自動運転車の開発競争についてです。

 

まず、昨年10月2日(日)放送のニュース(NHK総合テレビ)で自動運転について取り上げていたのでご紹介します。

2016年は自動運転元年とも呼ばれていました。

この夢の新技術を活用して交通や物流など新たなサービスの開発が進んでいます。

 

シンガポールでは公道を使った自動運転タクシーの実験が始まっています。

スマホでタクシーを呼び、決められたコースを乗り降りすることが出来るというものです。

 

一方、アメリカでは自動運転のトラックを開発、長距離運転ドライバーの負担を減らすことが出来ると期待されています。

 

また、オランダでは自動運転の小型バスを走らせ、マイカーに代わる新しい交通システムを生み出そうと取り組みが始まっています。

オランダ東部の学術都市、ヘルダーランド州では地元の政府が中心となって自動運転バスを公道で走らせる実験が行われています。

車内には運転席がありません。

車体に取り付けられたセンサー、そしてカメラ、こうした機器を使って自転車や自動車を認識し、運転手がいなくても自動で走行することが出来ます。

技術責任者の大学教授は、1〜2年後には完全に自動化が出来るようになると見込んでいます。

将来的にはこの自動運転バスが街中を何台も走り、利用者が自由に乗り降り出来るような交通システムを作り上げる構想です。

渋滞が課題となっている都市部に導入すれば、マイカーを持たなくてもよくなり、交通量を減らすことが出来ると考えられているのです。

 

日本でも自動運転を活用して社会を変えようという取り組みが始まっています。

IT企業のディー・エヌ・エー(DeNA)は2015年にいち早く自動運転を活用した事業に乗り出しました。

自動運転に得意とするIT技術を組み合わせることで社会を変えるような新たなサービスを生み出せると考えたのです。

今、DeNAが2020年の実用化を目指して開発を進めているのが自動運転による無人タクシーです。

高齢化や過疎化が進む地域で活用出来ると考えています。

DeNAの執行役員、中島 宏さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「完全自動運転が出来るかもしれない。」

「そうなると、同じようにモビリティの発展に伴って世の中が便利に豊かになる現象が絶対に起こるだろうと。」

「ライフスタイルが革命的に変わる、それは間違いないと思います。」

 

この無人タクシーに期待を寄せている町があります。

山口県周防大島町です。

人口およそ1万7000人、その半数以上が高齢者です。

主な交通手段はバスですが、路線によっては本数は決して多くはありません。

自動車がなければ、買い物などが不便な環境です。

DeNAではこの町でも自動運転車を活用出来ないかということで取り組みを始めています。

しかし、この島で無人タクシーを走らせるうえで大きな課題が見えてきました。

ガードレールのない狭い道、消えかかった白線、センサーで周囲を認識して走る自動運転車にとって厳しい道路状況でした。

中島さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「こういうところで走らせるような技術までレベルが上がってこないと日本中で困ってらっしゃる方々は救えないということでもあるので、これはチャレンジしなきゃいけないところかなと思っています。」

 

さて、自動運転は人手不足が深刻な物流業界でも生かされようとしています。

業界団体の調査では、過半数の業者が労働力が足りないと答えています。

少子高齢化により今後状況はより厳しくなると見ています。

更に拍車をかけているのが受取人の不在による再配達の増加です。

大手宅配業者、ヤマト運輸のあるドライバーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今日は(不在が)25軒目ぐらいだと思います。」

「最近は不在の方が多くなってきたと思います。」

 

ネット通販の普及で宅配便の利用が急増する中、再配達が増え、ドライバーの負担は増しています。

こうした中、ヤマト運輸がDeNAと手を組んで自動運転を活用した新しいサービス、「ロボネコヤマト」の開発に乗り出しました。

ヤマト運輸が考える自動運転による宅配サービスとは以下の通りです。

まず利用者がスマホで受け取りたい時間や場所を指定します。

すると、指定した通りに自動運転車が来ます。

車内には鍵のかかる箱が備え付けられていて、利用者はパスワードを入力するなどして鍵を開け、荷物を取り出すシステムです。

利便性を上げて確実に荷物を届けることで配達の負担を減らせるのではと考えています。

 

ヤマト運輸では自動運転を活用した更なるサービスも検討しています。

スーパーや飲食店と連携して弁当や食料品を配達出来ないか、人を乗せながら宅配も行うサービスは出来ないか、議論が続きます。

長尾 裕社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「社会構造も変わってきていて、特に我々の業界は労働力が先細りになっていく可能性が高いと。」

「サービスの多様化を作っていく際の1つの手段としては、今回チャレンジする自動運転がブレークスルーしていくための技術になり得る可能性があるのではなかろうかなというふうに考えています。」

 

番組では、自動運転の普及にあたって以下のような課題をあげています。

・歩行者の急な飛び出しなどの緊急事態でも安全を確保出来る自動運転の開発

・自動運転に対応した法整備などの社会的なルールづくり

  自動運転車が事故を起こした場合の責任の所在

  保険や免許制度の扱い

 

なお、実用化の目途についてですが、政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年をターゲットに自動運転の開発を推進していて、まずは限定された地域でサービスを始めようと考えています。

そして、今から10年以内の2020年代の前半には国内で完全な自動運転車の販売が始まる可能性があります。

こうした中、IT企業の他に大手通信会社など様々な企業が参入し、自動運転で新たなサービスを展開しようとしています。

 

世界は本格的な自動運転時代を見据え、既に大きく動き出していて、競争も激しくなっています。

日本として、技術開発は勿論なんですが、これを社会課題の解決にどう生かしていくのか、そういった使い方について考えていく必要があると番組では考えています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、他にも自動自動車をめぐる新たな動きはいろいろあります

 

昨年8月17日(水)付けネットニュースによれば、アメリカのフォード・モーターは16日、2021年までにハンドルやアクセルのない完全自動運転車の量産を始めると発表しました。

まずライドシェア(相乗り)などの配車サービス向けに供給するといいます。

 

また、昨年8月19日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)によれば、8日、スウェーデンの自動車メーカー大手、ボルボとアメリカの配車サービス大手、ウーバーが自動運転車の開発をめぐって提携したといいます。

 

自動運転タクシーの実用化を目指す動きについては、アイデアよもやま話 No.3337 自動運転タクシーの実証実験開始!でもご紹介したことがありますが、国内のいくつかの地域で既に実証実験が始まっております。

 

また、昨年12月5日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で自動運転技術を活用した工場敷地内での無人搬送について取り上げていたのでご紹介します。

日産自動車は完成した自動車を港まで無人で搬送するシステムを開発し、報道陣に昨年12月5日に公開しました。(日産自動車 追浜工場 神奈川県横須賀市)

組み立て工場から出荷用の港まで工場敷地内での1.4kmの走行です。

車両に付けられたカメラやレーザースキャナーで道路の白線や障害物などを感知します。

例えば、前に自動車が止まっていると自動運転車も停止、そしてあらかじめプログラムされた地図データ通りに自動走行します。

1台の自動運転車で3台まで搬送出来ます。

現在、この工場では1日におよそ1000台の自動車を生産しており、組み立て工場から専用のドライバーが1台ずつ運転して運んでいます。

搬送業務の効率化が狙いで、2019年に無人搬送の本格運用に移行する計画です。

近い将来は、完成車だけでなく自動車を造る工程で部品を工場内で自動的に運ぶようなシステムへの応用を考えているといいます。

更にもっと先には、自動運転車が製造ラインから出てきたらその自動運転車がそのまま港まで移動することも想定しているといいます。

 

なお、物流業界での自動運転への取り組みについては、海外でも積極的に進められているようです。

昨年12月5日(月)放送のニュース(TBSテレビ)ではアメリカでは自動運転のトラックが190kmを走破し、荷物を届ける実験に成功したと報じていました。

この実験はタクシー配車サービスを手掛けるウーバーの子会社によりアメリカのコロラド州で行われました。

 

ということで、一般自動車、タクシー、宅配便自動車、トラック、バス、あるいは工場などの敷地内で使われる自動車など現行の自動車に代わる様々なタイプの自動運転車の開発競争が世界的に激化する様相を呈しています。

中でも、日本は東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年を目標にこれからの4年間ほど自動車メーカーは関連企業や国、あるいは自治体をも巻き込んで急速に自動運転車の開発が進むと期待出来ます。

 

それにしても完全自動運転車の実用化に向けては大変大きなハードルがいくつもありそうです。

今回お伝えした中だけでも、ガードレールのない狭い道、消えかかった白線など、センサーで周囲を認識して走る自動運転車にとって厳しい道路状況をどのようにクリアするのかとても興味があります。

また、自動運転車が本来走行すべき道を選択出来るためには、災害などで通行止めになった道路や新しく造られた道路についても通行止めや開通と同時にリアルタイムでカーナビに反映されることが求められます。


 
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