2017年01月12日
アイデアよもやま話 No.3598 自動車をめぐる新たな動き その4 ドイツで2030年以降に自動車から「エンジン」が消える!?

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

4回目は、ドイツでは2030年以降に自動車から「エンジン」が消えるかもしれない状況についてです。

 

これまで3回にわたって、EV(電気自動車)の普及に向けた動向についてお伝えしてきましたが、こうした状況を踏まえて、ドイツでは日本では考えられないようなとても積極的な動きがあります。

昨年10月13日付けネットニュースによると、ドイツ連邦参議院(Bundesrat)は2030年以降にガソリンやディーゼル機関など内燃機関を使用した自動車を禁止する決議を採択したとドイツの有力週刊誌「デア・シュピーゲル(DerSpiege)」が報じています。

同じくこのニュースについて報道した米フォーブス誌によれば、決議採択はただちに法的効果を有するわけではありませんが、ドイツの規定がEU全体の規定になる場合が多いため、今回の採択が今後、欧州の環境対策の大きなターニングポイントになる可能性が高いといいます。

こうしたEUの状況は、ガソリンやディーゼル機関など内燃機関を使用した自動車の終焉が近いことを意味しています。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

さて、以下にWikipediaなどを参考にこれまでのアメリカの自動車に関連する大気汚染防止への取り組みをまとめてみました。

アメリカでは1963年12月に大気汚染防止のための法律、大気浄化法(Clean Air Act of 1963)が制定されました。

酸性雨対策やオゾン層の保護が目的であり、自動車の排出ガスの削減や、二酸化硫黄排出量の削減、フロン、四塩化炭素の全廃が主な内容となっています。

そして、1970年、1977年及び1990年に大幅な改正がなされています。

ちなみに1970年大気浄化法改正法は、通称マスキー法(Muskie Act)と呼ばれています。

アメリカの上院議員、エドムンド・マスキーの提案によるためこの通称が付けられました。

内容としては、

1975年以降に製造する自動車の排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)の排出量を1970-1971年型の1/10以下にする

1976年以降に製造する自動車の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の排出量を1970-1971年型の1/10以下にする

 

ことをそれぞれ義務付け、達成しない自動車は期限以降の販売を認めないという当時としては大変厳しい内容でした。

 

ところが、1972年に発表した本田技研工業(ホンダ)の低公害エンジン、CVCC(Compound Vortex Controlled Combustion)は当時世界一厳しく、パスすることは不可能とまで言われたこのマスキー法の規制値を最初にクリアしました。

そして、ホンダはこれがだめだったら4輪市場からの撤退も考えなければならないという背水の陣でこのエンジンを搭載したシビックを開発しました。

そして1974年11月、シビック1975年モデルがアメリカの環境省(EPA:Environmental Protection Agency)に持ち込まれ、審査に合格しました。

シビックは年を追うごとに燃費が向上し、1978年モデルまで4年連続でアメリカでの燃費1位を獲得し、『シビックの良さは燃費』、ということがアメリカのお客さまの間で定着していきました。

また、燃料を選ばない低公害車ということでも評価を受けました。

 

さて、その後もアメリカではカリフォルニア州の環境局が1990年に州内で一定以上の車を販売しているメーカーは、その一部をZEVにしなければならないという法律、すなわちZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)を制定するなど、EVや燃料電池車などの有害なガスを出さない自動車の普及に積極的に取り組んできました。

 

こうした中で、“脱原発”にも積極的な政策を打ち出したドイツは、2020年以降の温暖化ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとなる「パリ協定」の実質的な成果を達成すべく、ドイツ連邦参議院は2030年以降にガソリンやディーゼル機関など内燃機関を使用した自動車を禁止する決議を採択したのだと思われます。

 

考えてみれば、厳しい排ガス規制を課したマスキー法がホンダをはじめとする日本の自動車メーカーを背水の陣に仕向け、結果的にこうしたアメリカの排ガス規制が日本の自動車メーカーに世界最高水準の開発力をもたらしたのです。

自動車業界に限らず日本のメーカーにはいざという時に発揮されるこうした潜在力があるのです。

ですから、もし本当にドイツで2030年以降にガソリンやディーゼル機関など内燃機関を使用した自動車を禁止する法律が制定されたとしても今からそれに応える準備に取りかかれば、きっと日本の自動車メーカーはバッテリーなどの関連メーカーと協力してこの法律の壁を乗り切ることが出来ると確信します。

 

ここまで書いてきてとても残念なことがあります。

それは、こうした動きのきっかけが欧米の政策からもたらされることです。

日本の現政権には、単に経済成長に重点を置いた政策を打ち出すだけでなく、今後の世界のあるべき姿、そして日本の進むべき道を明確にしたうえで、世界に先駆けて積極的にそれを実現するための法律を制定し、国内メーカーが取り組むべき課題を提示して欲しいと思います。

では、今後の世界のあるべき姿ですが、私が考えるのはプロジェクト管理と日常生活 No.470 『今人類に課せられている6つの課題!』でお伝えした通りの内容です。

メーカー各社が社をあげて真剣に取り組むに値すると思えば、きっと潜在力を発揮して時間がかかっても成し遂げると思うのです。

そして、自ずと経済の活性化もこうした成果の一つとして得られるのです。

こうしたところにこそ政治の価値があるのではないでしょうか。

 

ということで、現政権には今後の世界のあるべき姿をベースにした日本の進むべき道を明らかにし、他国に追随するのではなく、他国に先駆けた積極的な政策を打ち出していただきたいと思います。


 
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