2017年01月10日
アイデアよもやま話 No.3596 自動車をめぐる新たな動き その2 激化するEVメーカー間の航続距離競争!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

2回目は、激化するEV(電気自動車)メーカー間の航続距離競争についてです。

 

以前ご紹介したように、EVメーカー大手でアメリカのベンチャー企業、テスラモーターズの創業者で最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクさんは、EVで既存のガソリン車を置き換えようという自動車革命を目指されております。

EVにはフル充電での航続距離の短さが普及の大きなネックになっていました。

そうした中、昨年8月24日(水)付けネットニュースでテスラモーターズが新たに大容量のバッテリーを公開したと報じられていたのでご紹介します。

昨年8月23日、テスラモーターズは「モデルS」および「モデルX」向けの電池容量100kWhのバッテリー、「P100D」を発表しました。

テスラモーターズは、大容量の「P100D」を搭載することで世界最高の加速力を持つEVが実現出来るとしています。

マスクCEOはこの新しいバッテリーについて、「非常に大きな一里塚であり、世界中の人々が未来は電気(自動車)にあると納得すると信じている」と述べました。

また、マスクCEOはこれに先立ち、ツイッターで商品発表を行うと表明しました。

 

テスラモーターズによると、新しいバッテリーの搭載により「モデルS」の最高航続距離は300マイル(482.8キロ)を超えるといいます。

マスクCEOは、気温がそれほど高くない環境下なら、サンフランシスコからロサンゼルスまで1回の充電で走行出来るとしています。

 

一方、昨年9月15日付けネットニュースによると、2017年末頃には納車が始まるとされているテスラモーターズの普及モデル、テスラ「モデル3」は3万5000ドル(約360万円※奨励金を含めず)という価格設定、215マイル(約346km)の航続距離です。一方、シボレーの新型EV「ボルト」は価格を未設定ですが、3万7500ドル(約385万円)以下にはなるだろうとの見方があり、航続距離は238マイル(約383km)になるといいます。

 

更に、昨年9月30日付けのネットニュースによると、VWは「パリモーターショー2016」の会場で開いた記者発表会で2020年投入のEVはフル充電での航続距離600km、しかも「ゴルフ」並みの価格で発売すると発表しました。

 

また、昨年10月17日付けのネットニュースによると、ルノーの新型EV「ゾエ」はフル充電での航続距離が400km(NEDCモード=新欧州ドライビングサイクルモード)で、実際の走行距離は300km程度といいますから、それでも現行型の日産「リーフ」の航続距離280kmよりも長くなり、「リーフ」が改良したあかつきには、同種のバッテリーの搭載が期待されます。

 

しかも、昨年6月24日付けのネットニュースによると、2010年12月に発売された本格的な市販EVの先駆けである「リーフ」が2018年にフルモデルチェンジを予定しているといいます。

日産は2015年の東京モーターショーにおいて「IDSコンセプト」と呼ばれる次世代EVのコンセプトモデルを公開しており、その航続距離は500〜550kmになると発表されました。

このことから、2018年の発売を予定している新型「リーフ」の航続距離は、従来の約2倍の距離である550kmになると予想されています。

ちなみに550kmという航続距離は、水素燃料電池自動車にも匹敵するレベルです。

 

以上、複数の関連記事の内容をご紹介してきました。

 

EVメーカー間ではバッテリーメーカーを巻き込んでより長い航続距離、および低価格化の競争が激化し、この状況は当分続くと思われます。

 

そうした結果、エアコン使用時でも実走行での航続距離が300kmを超えるようになれば、すなわち航続距離のカタログ値が500kmほどになれば、タクシーなどの業務にも十分に耐え得るとこれまで思っておりました。

ですから、今回のテスラモーターズによるバッテリー、「P100D」の発表は、ガソリン車からEVに移行する自動車業界のシンギュラリティ(技術的特異点)と言えるのではないでしょうか。

更に、先ほどご紹介した通りに2018年にフルモデルチェンジされる日産「リーフ」の航続距離が550kmであれば、一挙にEV時代到来となります。

 

そして更なるバッテリー技術、および量産化技術の進化によりバッテリーの小型化、および単位容量当たりの航続距離の伸び、および低価格化はまだまだ期待出来ます。

ですから、2025年くらいには現行のガソリン車とほぼ同等の航続距離、および価格のEVが市販化されていると期待出来ます。

 

なお、更に以前にもお伝えしたように、こうしたEVには大容量のバッテリーが搭載されていますから、移動手段としてのみならず電源としての用途も期待出来ます。

ですから、電力需要の少ない深夜時間帯に充電して、昼間の駐車中には家庭用電源として使用すれば、昼間の電力需要ピークが低くなり、その分従来の火力発電所などの発電供給施設を削減することが可能になります。

また、災害などによる停電時には緊急電源としての活用も期待出来ます。

このようにEVにはこれまでの自動車にはなかったメリットがあるのです。

ですから、これから発売されるEVには全て一般家庭用電源としてEVに搭載されるバッテリーを使用出来るような機能を標準装備して欲しいと思います。

 

ちなみに、冒頭にご紹介した「モデルS」について、以前から疑問に感じていたことをテスラモーターズの日本法人窓口に問い合わせた結果は以下の通りでした。

・チャデモ方式の急速充電器で30分充電した場合の走行距離は?

⇒ 125km

・エントリーモデルからのバッテリーの増加は?

 ⇒ 可能である

・改良されたバッテリーへの切り替え、および古いバッテリーの下取りは?

⇒ 出来ない

・搭載するバッテリーを家庭用電源として使えるようなサービスは?

⇒ ない


 
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