2017年01月09日
アイデアよもやま話 No.3595 自動車をめぐる新たな動き その1 充電不要の電気自動車の登場!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

1回目は、充電不要の電気自動車(EV)の登場についてです。

 

まず、昨年11月2日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)、および昨年12月10日(土)付け読売新聞の夕刊記事で充電不要のEVについて取り上げていたので両方の内容をまとめたかたちでご紹介します。

日産自動車は、昨年11月2日に新型のハイブリッド車を発表しました。

ハイブリッドというと、通常はガソリンエンジンと電動モーターを切り替えて走るという仕組みですが、その常識を覆す新しい技術をコンパクトカーの新型モデル「ノート e-パワー」に投入しました。

発表会で、西川 廣人共同CEOは、次のようにおっしゃっています。

「従来のハイブリッドとは全く異なる、これまで培ってまいりました電気自動車の技術を駆使いたしました日産ならではの新たな電動化のご提案と。」

 

また、従来のハイブリッド車との違いについて、星野 朝子専務執行役員は次のようにおっしゃっています。

「駆動がモーターにしかつながっていないのでエンジンは発電するために存在しているだけですので、完全にモーターだけで走る、つまり電気だけで走る。」

 

従来のハイブリッド車(HV)はエンジンとモーター、それぞれを切り替えて車を動かします。

新しいe-パワーではエンジンが担うのは発電だけ、モーターだけで動くので走り心地はEVと同じだといいます。

走行中にバッテリーが減り、充電する際にエンジンが動きますが、アクセルやブレーキ操作とは関係ないのです。

最も効率の良いエンジン回転数で発電し、低燃費を実現しました。

ガソリン車や従来のHVの燃費は通常、急加速や急ブレーキをかえるとエンジン回転数が変わり、効率が悪くなります。

一方、e-パワーはこうした走り方をしても、電力を消費するだけなので安定した燃費で走れるのです。

 

第一プロジェクト統括グループの小宮 哲さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(電気自動車を充電スタンドで充電するとか、探すことに抵抗感を持つ人がいることがe-パワー投入の背景なのかという問いに対して、)我々は電気自動車を普及する立場からすると、そうでなくなって欲しいんですけど、事実としてはまだまだお客様が気になるのは航続距離と充電ということになりますので、その2つをこのe-パワーで解決したい。」

 

他者に先駆けて2010年にEV「リーフ」を発売した日産ですが、充電スタンドの設置台数が十分ではなく、普及の足かせとなっています。

「ノート e-パワー」の価格は約177万円と、約320万円の「リーフ」よりも100万円以上割安です。

ガソリンを使いながらEVの走り心地を実現し、EVの魅力を広めたい考えです。

星野さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これで電気自動車っていいねっていう感覚が広まると思うんですけども、そうするとやっぱり電気自動車のラインアップをもう少し揃えるべきではないかなと考えています。」

 

実際に「ノート e-パワー」に試乗した番組のサブキャスター、大浜 平太郎さんは次のようにコメントしています。

「今回の車(「ノート e-パワー」)は飽くまでも電気自動車へのきっかけにして欲しいという位置づけなんですけども、とても良くできていい車だったんですね。」

「ただその一方で、日本人の場合特にそうかもしれないけどまだまだ電気自動車に対して潜在的な抵抗感が強いんじゃないかという指摘もあるんです。」

「要するに、これ以上自分が電気に頼る生活ってどうなんだろうという抵抗感なんですが、原発の問題もありますし、再生可能エネルギーが中々軌道に乗らないと。」

「そういった中で、使い方として停電が起きた時に電気を溜める機能もあるんだよとかいろんなことを言ってるんですけど、それを理由に買っている人ってまだ正直そんなにいないですよね。」

「だから、見ていると車の側の性能ってかなり完成形に達してきているので、ここから先って例えば超効率的なソーラー発電が出来る充電スタンドを造るとか、そういったことに舵を切って行くタイミングに来ているんじゃないかなって感じがするんですけどね。」

「要するに、環境に優しい電気を車に入れているんだよって思えるような環境モデルを作るとか。」

 

番組の最後に、番組コメンテーターで経営供創基盤CEOの冨山 和彦さんは、次のようにおっしゃっています。

「同じ例えば化石燃料の油を炊いてどっちがいいですか環境にとって、っていうのは理屈で言っちゃうと発電所で石油で発電した時のエネルギーの交換効率とガソリンでエンジンを回した時の効率のどっちがいいんですかっていう比較なんですよ。」

「これは、今のところ明確に発電所の方が効率がいいと理論上はなっちゃいます。」

「これが一つのポイントなんですが、もう一つ大きいのは今度パリ協定にアメリカと中国が乗っかっちゃったと。」

「CO2の問題、これ乗っかっちゃったっていうことは最大の市場なんですよ。」

「アメリカ陣営と中国陣営がEVの方に走っていっちゃうとやっぱりどっちがメジャーかということで勝敗が決まってくるんで、だからEVの方に流れていく可能性は高いですね。」

「もしアメリカの市場とアメリカのメーカー、中国の市場と中国のメーカーがそっちに行くとすると。」

「(環境対策面で日本は乗り遅れつつあるのではという指摘に対して、)元々日本は技術力が高いですから、やっぱり方向が明確になったら相当いい戦いが出来るはずです。」

 

以上、番組、および記事の一部の内容をご紹介してきました。

 

実はたまたまですが、私は昨年銀座の日産ギャラリーに立ち寄る機会がありました。

その時、「ノート e-パワー」が展示されていたので説明員にあれこれ質問しました。

そして、この車は売れると確信したのです。

その理由は以下の通りです。

・走行距離や充電スタンドの場所を気にすることなく、EVと同じ感覚を味わえること

・2リッターターボエンジンに匹敵するビッグトルクであること

・燃費がトヨタのハイブリッド車「アクア」とほぼ同等であること

・2020年度燃費基準+20%を達成していること

・価格が約177万円と割安であること

 

「リーフ」に乗り始めて今年で7年目を迎え、走行距離が6万km近くとなる私が特に感じるのは、スムーズな加速性能や走行時の静かさなどガソリン車とは異次元のEVの走行時の魅力です。

一方で感じるのは、フル充電での航続距離の短さと充電スタンドの少なさです。

航続距離が短く、しかも充電スタンドがここ最近増えたとはいうもののガソリンスタンドに比べればまだまだ少ないのです。

ですから、特にちょっと長距離ドライブをした際には、バッテリー残量と充電スタンドの場所を絶えず気にしながらの運転になってしまうのです。

また、「リーフ」の初期モデルのフル充電での航続距離のカタログ値は200kmですが、実質的な航続距離は購入当初で約140km、それが7年目を迎える今では110km足らずですので、実際に安心して走行出来る距離はざっと90kmほどです。

ですから、夏場や冬場、特に冬場のちょっと遠出のドライブの際には、エアコンの使用は論外です。

しかし、「リーフ」の最新モデルではフル充電での航続距離のカタログ値は280kmに伸びています。

それでもガソリン車に比べると「リーフ」の最新モデルの航続距離の短さはやはり気になります。

こうしたことを考えると、一度バッテリー残量や充電スタンドの場所を気にせずに走行出来る「ノート e-パワー」を試乗してガソリン車とは異次元の魅力を味わえば、多くの人たちは購買意欲をかき立てられると直感したのです。

 

そうしたところ、新型ノートが昨年11月の国内販売で1万5784台を記録し、トヨタ プリウス/アクアなどの人気車種を抑え、軽自動車を含めた全銘柄のランキングで初めて1位になったと発表しました。

日産車が月間販売台数1位の座に輝いたのは、1986年9月のサニー以来、実に30年2ヶ月ぶりの快挙といいます。

ちなみに、ノート全体の売り上げの7割以上を「e-パワー」が占めており、躍進の要因となったといいます。

 

恐らく、「ノート e-パワー」の購入者はバッテリー切れを心配せずにEVとしての動力性能を堪能出来るので、二度と純粋なガソリン車を購入することはないと思います。

そういう意味で、「ノート e-パワー」は少し回り道にはなりますが、今後のEVの普及に向けて過渡的な位置づけのEVとして大きな突破口になるはずです。


*** 追記 ***


以前から実際に「ノート e-パワー」に試乗してみたいと思っていたところ、今日たまたま試乗する機会を得ました。
そこでその乗り心地ですが、一言で言えば期待外れでした。
思ったよりもガソリンのエンジン音が大きく聞こえ、運転した感じも普通のガソリン車とほとんど違いが分からず、加速力もそれほど感じられませんでした。
ですから、EVとは言うものの「リーフ」とは全く“別物”という印象でした。
しかし、こうした感想も100%バッテリーを動力源とする「リーフ」に慣れ親しんでしまったからだと納得しました。


いずれにしても「ノート e-パワー」に試乗した人が同時に「リーフ」にも試乗してみれば、その乗り心地や加速力の違いに驚くと思います。
ですから、日常的に運転する距離が100km前後以内で「ノート e-パワー」を購入するよりも50万円ほど資金に余裕があれば、「リーフ」をお勧めしたいと思います。
逆に、日常的に100km以上の長距離を運転する人には「ノート e-パワー」をお勧めします。


さて、「リーフ」にはAC100V(MAX100W)電源として使用出来るコンセントの設置がオプションとして用意されているのでスマホなどを充電したい時に便利です。
ですから、ひょっとしたら「ノート e-パワー」にも同様のオプションがあるのではないかと思い、日産の窓口に問い合わせてみたところ無いという返事でした。
これにはちょっとガッカリしてしまいました。
せっかくガソリンで発電しているのですから、災害などによる停電時、あるいはキャンプなどに出かけた際に、発電した電力を電源として使用出来るようなオプションがあればとても便利です。
このオプションはちょっとしたセールスポイントになりますから、なぜ無いのかとても不思議に思います。


 
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