2017年01月03日
アイデアよもやま話 No.3590 日本が開発した夢の金属“コバリオン”!

昨年11月2日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日本が開発した夢の金属について取り上げていたのでご紹介します。

 

日本で開発された非常に高い強度を誇る金属、それがコバリオンです。

コバリオンはプラチナ並みの輝きを持ち、ステンレス製のナイフに比べ強度は2倍、しかもほとんど錆びないといいます。

金属アレルギーを引き起こすニッケルをほとんど含まないということから医療現場だけでなくアクセサリーの素材としても注目されています。

しかし、世界での認知度はまだまだ低く、製造する中小企業は新たな販路を開拓しようと動き出しています。

 

イギリスの西側に位置するアイルランド、そこにゴールウェイという港町があります。

近海で獲れるカキが地元の名産品です。

昨年9月24日、町で開かれていたのは世界カキむき世界選手権です。

30個のカキの殻をナイフを使っていかに速くむけるかを競い合います。

日本を含む世界20ヵ国からレストランのシェフなどが参加しました。

昨年の優勝者はスウェーデンのシェフ、優勝賞品として贈られたのは日本製のカキむきナイフです。

このナイフ、コバリオンでできています。

会場で行われたデモンストレーションでも注目を集めていました。

このナイフの製造を手掛けている株式会社エイワ(岩手県釜石市)ではこのナイフのPRをするため優勝賞品として採用してもらえるよう売り込んでいたのです。

すると次々と注文が舞い込んできました。

 

実は、このコバリオンという金属を元々開発したのは東北大学金属研究所(仙台市青葉区)の千葉 晶彦教授です。

これまで人工関節などに使われてきた金属には加工しやすくするためニッケルが入っていました。

しかし、千葉教授はニッケルアレルギーに苦しむ人を救うため新たな金属を作ろうと思い立ちました。

そしておよそ10年の試行錯誤を経てニッケルに代わり窒素を入れたコバリオンという新しい金属を生み出したのです。

その製造を株式会社エイワが担ったのです。

 

今では東京・銀座のジュエリーショップ、京セラ クレサンベール銀座店でアクセサリーとしても販売されています。

こちらのショップ店長の竹内 桂一郎さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「どうしてもニッケルアレルギーの方はお付けになっていてかゆくなってきてしまうということがあるんですけど、そういった反応が全くないというふうに伺っております。」

 

プラチナに比べて価格が割安なうえ、アレルギーの原因となるニッケルをほとんど含んでいないことから売れ行きは上々だといいます。

エイワの佐々木 雄大常務は、コバリオンを海外に売り込もうと自らヨーロッパの地に乗り込んでいたのです。

佐々木さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「うち(の会社)は岩手の釜石という東京からかけ離れた所で商売しているんで、海外に展開をやっていかないと駄目なんじゃないかなと思っています。」

 

佐々木さんは次にイギリスのロンドンにやって来ました。

出迎えた男性は、有名ファッション・デザイナーのポール・コステロさん、かつてダイアナ妃の衣装を数多く手がけたことでも知られています。

昨年9月16日に開かれたロンドンのファッションショーでも自らのブランド、ポール・コステロは大きな注目を集めました。

佐々木さんは有名デザイナーのコステロさんに認めてもらうことでコバリオンの知名度を高めようとしていたのです。

 

コバリオンにニッケルが含まれていないことも高評価です。

商談は順調のように見えましたが、穴の開いた指輪のデザインにしたいという要望がコステロさんから出されました。

これを聞いた佐々木さん、表情が険しくなりました。

コバリオンは強度のある金属なので穴を開けるのに時間がかかるため量産化が難しく、また開けた穴を磨き上げることも技術的に非常に難しかったのです。

硬いというコバリオンの強みが裏目に出たのです。

佐々木さんが諦めかけたその時、なんとコステロさんは技術的な困難に理解を示し、穴のないデザインに修正してくれたのです。

こうしてコバリオンリングは今年3月にコステロブランドとして発売されることになったのです。

コバリオンについて、コステロさんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この重厚感がいい。」

「確かにコバリオンは硬い金属だが、非常に手触りが良い。」

「まだ課題はあるが、今日の結果にはとても満足している。」

 

一方、佐々木さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今回のこの件から世界への一歩につながっていければ本当に「コバリオンを世界に出していきたい」という想いが更に強くなったという感じはあります。」

 

番組コメンテーターで経営供創基盤CEOの冨山 和彦さんは、次のようにおっしゃっています。

「東京を経由しないで一気に行っちゃっているところがいいですよね。」

「東京を経由する意味ないですから。」

「だって東京なんて世界からみたらちっちゃいマーケットですからね。」

「面倒くさくなく、いきなり行っちゃえばいいんです。」

「だって今ネットの時代だしね。」

「飛行機でパッと飛んでいけるんだから。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今回ご紹介したエイワに限らず、日本には素晴らしい製品を開発した中小企業が沢山あると思います。

しかし、販売力の弱さから中々国内での販路開拓が思うように進まずに悩んでおられる企業があると思います。

そうした時に、冨山さんのおっしゃるように国内に限らず海外に販路を求めて突破口とするという戦略もあります。

また、昨年のピコ太郎さんのあっという間の大ブレイクにもあるように、今やネットを通じて良いにつけ悪いにつけ、人々の興味を引きつけるような情報は短期間のうちに拡散していく時代になっているのです。

ですから、商品やサービスの価値を最大限にアピールするためのネット活用戦略も無視出来ません。

 

いずれにしても、コバリオンのような従来に比べて低価格で強度があり、しかも健康的にも優しい金属が普及することこそ、私たち一般ユーザーにとってメリットがあるのです。

ということで、金属に限らず優れた製品が少しでも世の中に浸透していけるような仕組みや環境であって欲しいと思うのです。


 
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