2016年12月08日
アイデアよもやま話 No.3568 拡大するクラウドファンディング!

これまで何度かクラウドファンディングについてお伝えしてきました。

そうした中、10月7日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でクラウドファンディングの最新状況について取り上げていたのでご紹介します。

 

消費の多様化によって新商品を次々と出しても売るのが難しい時代と言われています。

そこで大手メーカーがインターネットを通じてこの商品なら買ってもいいという消費者の声を直接拾い上げ、商品の開発に反映する動きが出て来ています。

 

10月7日、ソニーが発表した新商品「アロマスティック」(税別8980円)は時間や場所を問わず一人で香りを楽しむことを狙いとしています。

口紅を一回り大きくしたようなかたちで、自分の嗅ぎたい香りに合わせてボタンを押すことで5種類の香りを楽しむことが出来るのです。

小さいカートリッジの中に5種類の香りが込められており、カートリッジは3種類(税別2280円〜)で合計15種類の香りが用意されています。

 

この商品は、ソニーが昨年立ち上げたクラウドファンディングのサイトから生まれました。

クラウドファンディングとは、商品やサービスなどのアイデアを持つ人が不特定多数の人からインターネットを通じて出資や協力を募り、アイデアを実現させることです。

そして、アイデアが実現した場合には出来た商品やそれによって得た利益の一部を出資者に還元する仕組みです。

 

ソニーの新規事業創出部の小田島 伸至統括部長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「大きい企業になるとお客様から遠くなりますので、新しい商品ほどお客様と直接話しながら作り込んでいった方がいいと。」

「(クラウドファンディングの効果について、)実際に欲しいよということで決済を切って下さるお客様の声は非常に重たくてクリアなものがありまして、非常に具体的な意見をいただくことが増えました。」

 

これまでにもお客の意見を反映して、表示やベルト部分の模様の変わる腕時計「FES Watch」や様々な家電製品を一台でコントロール出来る学習リモコン「ハウスリモートコントローラー」などを商品化しています。

 

更にソニーはクラウドファンディングを新しい商品を生み出す以外にも利用したいと考えており、小田島さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今は商品だけを出していますけども、今後は作っている過程であるとか会話とか活動みたいなものも出来るかぎり見せて、クラウドファンディングそのものをエンターテインメントにしていきたいと考えています。」

 

さて、日本でクラウドファンディングの先駆けとなったのがサイバーエージェントが運営するサイト「Makuake」です。

2013年のサービス開始以来、累計15億円以上を調達しました。

「Makuake」の中山亮太郎社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「だいたい月に100件くらい始まっているので、年間にすると1000件を超えてくると。」

「どんどん増えていますね。」

「ニッチなものでも「そんなの誰も買わないでしょう」っていうのがターゲット、求めている人がいて、そういうのが「Makuake」を使って生まれてくると。」

「新しい製品を作ったりとか、お店を開業する時に利用するケースがものすごく増えてきたと。」

 

クラウドファンディングの活用は飲食店にも広がっています。

「KURAND」は3000円(税別)で100種類の日本酒が飲み比べし放題の日本酒専門店、時間無制限で料理の持ち込みも自由です。

「Makuake」で目標額のおよそ5倍、316万円を集めました。

酒屋であるリカー・イノベーションが日本酒を広めるために昨年初めて「KURAND」1号店をオープンし、外食産業に乗り出したのです。

 

「Makuake」ではクラウドファンディングで集めたお客の意見を積極的に取り入れました。

リカー・イノベーションのプロモーションプランナー、辻本 翔さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「オープン前に来店出来る特典をつけたんですけども、そういった期間の間にお店のスタッフは準備期間として、まずはお客様の声を聞いて商品やお店作りを徹底していくというところも出来ましたし、試験的な場が作れたかなと。」

「(実際にお客の意見を取り入れた実例として、)酒瓶の首のところにかかっているアイコンがありまして、味わいを独自に11種類のタイプに分けて、それを一升瓶の首にかけることによってお客様が選びやすくするというのをお客様の意見を取り入れて導入しました。」

 

このアイデアは、日本語が堪能でない外国人客からも好評だといいます。

業績も好調で開店から1年ほどで都内に4店舗を展開する急速な成長ぶりです。

実際にクラウドファンディングで出資して来店したある男性客は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(いくら出資したかという問いに対して、)4万2000円ですね。」

「少しでも自分が投資して、この店ができているという“携わっている感”があるのがいい気がしますね。」

「お金持ちの人がやれるのが普通の投資や出資だったりしてありますけども、少額でも自分が出資できて携われるのがクラウドファンディングかなという気がしますね。」

 

クラウドファンディングは企業側からするとテストマーケティングの場になっており、出資者側からすると出資すると開発段階から意見を言うことが出来るのでまるで開発チームの一員になったかのような気分を味わえる、それが新たな体験の提供になっているといいます。

更に、出来上がったものに愛着が湧くので、それを長く使ってもらえることにもつながるのではないかという企業側の意図もあるようです。

 

番組コメンテーターで、クレディ・スイス証券のチーフ・マーケット・ストラテジスト、市川 眞一さんは、次のようにおっしゃっています。

「ソニーの件はかなりユニークなんじゃないかなと思うんですけども、例えば昨年アメリカで成立した特許は29万8407件あるんですけども、このうち17.6%に相当する5万2409件は日本企業などの機関が取っているのものなんですね。」

「で、トップ20のうちの8社が日本の会社で、ソニーは実は7番目に入っています。」

「特許は必ずしも知財(知的財産)として優れているかどうかっていうのは議論のあるところですけども、やはり日本の企業も研究開発能力であるとか技術力を一つ象徴していることは間違いないと思います。」

「ただ非常に残念なのは日本の場合、大企業に技術者が集中していてなかなか外に出てベンチャー企業を起こすとかスピンアウトするということはないもんですから、そうすると本来外に出れば製品や商品につながっていくような技術が企業の中に死蔵されてしまうケースが多いと思うんですね。」

「これは経済的にもったいないですし、技術者にとっても残念なことだと思うんですけども、そこでこういうかたちでクラウドファンディング、すなわち外のお金を導入することで製品化につなげるということになれば、技術者の方もモラルも上がってくるんじゃないかな、それがひいてはもしかすると企業にとってみると企業の文化を変えて何か大きなものにつながっていく、そういった期待が持てるのかなというふうに思いながら今ビデオを見せていただきました。」

「(ソニーのような大企業ではマーケットが小さいと取り組まないような状況について)、そういったところをこういうかたち(クラウドファンディング)で製品化していくことで技術者のモラルを上げ、それが全体としての企業の大きな展開につながっていくというのが理想なんでしょうね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今や、クラウドファンディングは個人のアイデアをかたちにするための支援の場としてだけでなく、企業の新商品開発の場、あるいはマーケティングの場としても欠かせない存在になりつつあるようです。

考えてみれば、誰のアイデアであろうと、あるいは誰が作ったものであろうと関係なく、購入者はより良い魅力的な商品を望んでいるのです。

ですから、特に大企業や大学などの研究機関で自分のパワーを発揮出来ないアイデアマンや技術者がクラウドファンディングを通して新たな製品やサービスをかたちにしてそれがビジネスにつながれば、それに関連した人たち、企業や研究機関、購入者がそれぞれハッピーになれるのです。

 

ということで、クラウドファンディングは新たなモノづくりやサービスの誕生にとってとても素晴らしいインフラだと思います。

ですから、クラウドファンディングのプロバイダーには、今後は世界的な展開も視野に入れてより良いサービスを目指していただきたいと思います。


 
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