9月20日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”理数脳”育成のキーポイント、“STEM”について取り上げていたのでご紹介します。
そもそも“STEM”という耳慣れない言葉ですが、それは教育に関する以下の4つの単語の頭文字を組み合わせたものなのです。
Science(科学)
Technology(技術)
Engineering(工学)
Mathematicis(数学)
需要が拡大する一方で、人材不足が予測されるエンジニアや研究者を育成しようと、今この“STEM”教育に企業も動き出しています。
9月20日、都内で開かれたおもちゃの表彰式は、ネット通販大手のアマゾン ジャパンが初めて開催した知育・学習玩具大賞です。
同じ大きさの木を積み重ねて好きなかたちを作る積み木「カプラ200」と世界の国旗を学ぶことが出来る「世界の国旗かるた」が対象に選ばれました。
アマゾン ジャパン おもちゃ&ホビー事業部の白子 雅也さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「理系教育を強化していこうという動きは欧米ではどんどん進んでいて、アマゾンにおいてもそれ以外の場所でも”STEM”はどんどん展開され浸透していくものと考えております。」
アメリカのアマゾンでは既に“STEM”関連の専用ページもあり、おもちゃに占める知育玩具の数は他国に比べおよそ2倍となっています。
ちなみに、アメリカのオバマ大統領は、次のように演説されております。
「未来を勝ち取る最初の一歩は技術革新をすることだ。」
「科学・技術・工学・数学の分野で新しい教師を10万人準備したい。」
アメリカではオバマ政権のもと、2011年頃より“STEM”教育を積極的に推奨、2016年度予算では“STEM”関連に約41億ドルを投じています。
また、惜しくも落選しましたが、今回のアメリカ大統領選候補のクリントンさんも公約に掲げておりました。
しかし、日本では未就学児を持つ親の70%以上が知育や学習玩具に関心があるものの、購入頻度が低い人が大多数というのが現状です。
白子さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「親御さんの目線からご覧になった時に、学術的な裏付けがあった方が安心なんですけど、あまり専門的なことを言われてもよく訳が分からない、自分の子どもにとって良いのかが分からないという意見もありました。」
そこで今回、教育や脳科学の専門家を審査員として招き、数十万点あるという“STEM”関連のおもちゃから8つを受賞商品として選びました。
では、受賞したおもちゃはどんな効果が期待出来るのでしょうか。
小さなブロック、「アソブロック」は一つ一つ組み合わせ、関節のように回転させたり、自由に動かせるのが特徴です。
東京大学大学院教育研究所の秋田 喜代美教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「上から見たり、いろいろな見方をするうちに、いろいろなものに見えてきたりして、想像力を豊かに刺激することが出来るのが一つの特徴だと思いました。」
一方、パーツを差し込みサボテンのようなオブジェを作り上げる「サボテンバランスゲーム」について、東京大学大学院薬学系研究科の池谷
裕二教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。
「予想とそれに対する手段を考えて解決することが必ず必要なんです。」
「日常生活で自分を外から眺めたらどういうふうに見えるんだろうかとか、あるいはこの問題の裏側には何があるんだろうとか、大人になる過程の重要な一つの要素を育むことが出来ると考えています。」
崩れないようにバランスを考えながら積み上げる動作が脳の成長につながるといいます。
また、芋虫型のプログラミングロボ、「コード・A・ピラー」は直進や曲がるなど指示が記録された胴体をつなぐことで3歳からプログラミングの基礎を学べるといいます。
アマゾンではこうした授賞式の他、9月20日から知育・学習玩具専門サイトを開設し、目的に合わせ、商品を選び易くしました。
白子さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「アマゾンらしい、いかに品揃えが広いですよだけではなくて、新しいもの、より最先端のものも探してすぐ見つけていただける、楽しく遊んでくれるだけではなくて、そこから学んで欲しいとか、もっとこういうことが出来るようになって欲しいっていう、そういうのが具体的になってきているので、そこにあった商品はまだまだニーズが高まってくると思います。」
番組の最後に、番組コメンテーターであるモルガン・スタンレーMUFG証券チーフエコノミストのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。
「(“STEM”という理数系に強い子どもを育てるために民間企業は動き出しているが、政府が後押しすることがあれば何があるかという問いに対して、)やっぱり予算だと思いますけど、この問題は日本経済の持続性がかかっている一つの問題ではないかと思いますね。」
「生産性を上げないといけないですね。」
「理数系の人たちを増やしてようやくイノベーションが増えて、新しい商品を作って輸出も出来てようやく持続性のある医療制度、年金制度になるんですけども、今の状況を見るとちょっと怖いですよ。」
「OECDの数字を使いますけれども、公的教育費(対GDP比率)ランキングで日本は(3.5%で)35位とほぼビリです。」
「では教育費を増やそうとするとどこかを削らないといけないということですから、やっぱり決めないといけないと思います。」
「ただ、やったら本当に効果が出るということだと思います。」
「“ゆとり教育”を止めましたよね。」
「で、最近の若い人は英語力が上がっています。」
「これはやっぱり良かったということを意味すると思いますけど、とにかく理数系の教育を増やそうということが持続性の一つのポイントだと思います。」
「(日本経済を支えるためにもそこの予算を付けるべき)だと思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
日本は少子高齢化先進国です。
ですから、年金制度や健康保険制度を健全な状態で持続させるためには、こうした制度を支える側の若い世代がこれまで以上に税金などを納められるように能力やスキルを高めて産業力を高めていくことが求められます。
そうした中で、OECDの公的教育費(対GDP比率)ランキングで日本はほぼ最下位という状況はこうした制度を維持していくうえでとても危ういと言えます。
更に、政府はこうした課題に対して斬新な対応策を打ち出すというよりも、現状の枠の中で対応するというのが基本方針のようです。
これまで何度となくお伝えしてきたように、現在はAI(人工知能)、IoT(Internet Of Things)、ロボット、あるいは再生医療など様々な分野でテクノロジーが急速に発展しつつあります。
そして、こうしたテクノロジーは新たな雇用を創出し、新たな商品やサービスの提供により私たちの暮らしをより豊かにしてくれます。
そして、こうした基盤は“STEM”の強化なのです。
ですから、高齢者対策を重視するだけでなく、子どもへの公的教育費に対してももっと目を向けていただきたいと思います。
今後増々高齢化社会が進み、一方で特別な教育関連対策がなされないまま少子化が進めば、日本の年金制度や健康保険制度が破たんすることは明らかなのです。