2016年11月10日
アイデアよもやま話 No.3544 新たな”仮想現実”活用法!

これまで何度となく”仮想現実”(バーチャルリアリティ:VR)についてご紹介してきました。

そうした中、9月7日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新たな”仮想現実”活用法について取り上げていたのでご紹介します。

 

今年はVRの世界に入り込んだ体験が出来るヘッドマウントディスプレーが相次いで発表されて、VR元年とも言われています。

ゲームなどエンターテインメントだけでなく、ビジネスやプロスポーツの世界でもこのVRを活用する動きが広がり始めています。

 

9月2日、東京都下水道局の葛西水再生センターの施設内にある建物の上、高さ20mほどの場所で作業していたのは明電舎の社員です。

危険を伴う高所で照明の取り付け作業をしていたのですが、ふと緊張が途切れてしまうこともあるといいます。

そんな社員の教育のために、明電舎が今年5月から使い始めたのがVRです。

VRを体験するためにゴーグル型のヘッドマウントディスプレーを付けた従業員は、高所作業に使う足場が置かれた床の上を歩くと、その足場は地上60mの高さにかけられています。

この高さを体験するという教育なのです。

足に取り付けられたセンサーが足の動きを感知し、実際に歩いた通りに映像の中の足場を進んで行きます。

ヘッドホンから聞こえるのは風の音、扇風機で実際の風を当て、臨場感を高めています。

そして、最後にここから飛び降りるのです。

実際に高所での作業経験が豊富な作業員が体験しても恐怖のあまり思わず声が出てしまいます。

また、このVRを体験した若い女性作業員は最後に飛び降りることが出来ませんでした。

実に4人に1人は飛び降りられませんが、それも教育の一環だといいます。

品質安全管理部の部長、土屋 浩さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「高所って怖いものだよっていうふうな危険を察知する意識付けが出来ればいいのか・・・」

 

明電舎はこれまで人形を落としてネットで受け止めてもらうことで恐怖を感じてもらう教育をしてきました。

それがVRを活用することでよりリアルな恐怖を感じてもらえるのです。

 

普段の仕事の中で安全管理はかなり現場で徹底されているので、ヒヤッとすることはいいことなのですが、減っているといいます。

しかし、怖いとかヒヤッとする感覚は危機管理のために大事だということで、それをあえて体験してもらうという考え方なのです。

 

一方、プロスポーツの世界でもVRの活用が始まっています。

プロ野球、東北楽天ゴールデンイーグルスの今江 敏晃選手は最近試合前にVRを使ったトレーニングに取り組んでいます。

楽天野球団が今シーズンから実験的に導入したバッティングのトレーニングシステムです。

楽天野球団とNTTデータが共同で開発しました。

今江選手は、この日対戦する日本ハムファイターズのメンドーサ投手の投球を確認します。

今江選手は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「対戦相手のピッチャーがマウンドにいて、自分がバッターボックスに立つシチュエーションて本当に試合でしか味わえないので、映像ですけどその感覚で立てるのはすごく大きいと思いますよね。」

 

チームのトレーニングを担当しており、このシステムの開発に携わった楽天野球団・チーム戦略室の室長、上田 顕さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「元々、我々は選手に対して(ビデオ)映像やデータを使ったトレーニングシステムはやってきたんですけど、より選手がリアルに何かバッターボックスに入る前に体感出来るですとか、探したところにVRを見つけまして。」

 

こうしたVRトレーニングが効を奏したのか、8月31日の日本ハムファイターズのメンドーサ投手に対して2打数1安打でした。

去年まで2年連続最下位の楽天、上田さんはVRがチーム飛躍の起爆剤になると考えています。

 

なお、VR関連の市場規模予測ですが、2025年には世界で8兆円規模にまで成長するといいます。(出所:ゴールドマン・サックス)

当然、ゲーム、映画、娯楽の分野は急成長しますが、今回ご紹介した体感教育、トレーニングの他にもリハビリなどの医療分野での活用も期待されています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組でも伝えていたように、VRはゲームのみならず様々な分野での活用が見込まれます。

共通しているのは、単に映像を見るだけでなく、自分が映像の中に入り込んであたかも自分が実際に体験しているように感じてしまうところにあります。

実際に体験したいけれども怖かったり危険だったりで体験出来ないもの、あるいは行ってみたいけれども金銭的に、あるいは時間的に、更には宇宙旅行のように行けないところをVRの世界で訪れたり、あるいは臨場感溢れるゲームの世界を体験出来る、というところが一般の人たちにとってのVRのメリットだと思います。

一方、ビジネスをはじめ様々な分野でもVRを活用した研修やトレーニングなど思わぬかたちでVRが活用されると見込まれます。


 
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