9月5日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で外国人旅行客の不便を対象とするビジネスについて取り上げていたのでご紹介します。
このところ急増しているのが日本を訪れる外国人です。
こうした外国人が日本での滞在で感じる不便さを解消してビジネスチャンスに結びつけようと、至れり尽くせりのサービスが登場しています。
日本を訪れる外国人の数は増加の一途で、2001年には約500万人だったのが2015年には約2000万人にまで増えています。
特に、ここ2、3年は大幅な伸びを示しています。
更に、観光立国を掲げる政府は2020年までに訪日外国人の数を今の倍の4000万人にすることを目指しています。
しかし、日本に不便さを感じる外国人も多いのです。
あるカナダ人女性は、日本語が分からないので道の名前も分からないし、一人だと迷子になりそうでホテルを出るのも怖いといいます。
また、別のカナダ人男性は、日本語が分からないと電車の乗り換えが難しいといいます。
旅行中に困ったことにおける政府のアンケート調査(総務省・観光庁)は、以下の通りです。
Wi−Fi環境 46.6%
コミュニケーションが取れない 35.7%
観光案内が多言語表示ではない 20.2%
訪日外国人にとっても便利なコンビニですが、その一方で問題となっているのがお客と店員とのコミュニケーションです。
最近増えているのがチケットの購入や発券についての問い合わせです。
そこで、セブンイレブンが始めたのが“同時通訳”サービスです。
その仕組みは、まず言葉が分からない店員が横浜にあるセブンイレブンの多言語通訳センターに電話する、更に回線は通訳のいる札幌のコールセンターにもつながり、三者が同時に会話出来るようになっているのです。
通訳を介して事情を理解した店員はお客をマルチコピー機に案内して操作を手伝います。
こうした外国人客の複雑な要望にも言葉の壁を超えてきめ細かく応えるのです。
セブンイレブンでは9月から全国およそ1万9000ある全店舗でこの“同時通訳”サービスを開始しています。
この“同時通訳”サービス、現在は英語と中国語のみですが、反応次第で更に言語を増やすことも検討中だといいます。
一方、訪日外国人客の平均宿泊数が10泊を超える今、手荷物も大きくなりがちです。
大きなスーツケースを抱えて電車やバスで移動するのは一苦労です。
そこで、9月から実証実験として「手ぶら観光支援サービス」がスタートしました。
利用方法は簡単です。
海外で事前に申し込んだ時に発行された2次元バーコードを端末にかざすだけです。
荷物の送り先が記入された伝票が出てくる仕組みです。
この仕組みについて、ヤマトホールディングスの三重堀 敦也さんは、情報連携で2分くらいで出せるのでストレス解消にもなると言います。
この「手ぶら観光支援サービス」、観光客の情報はJTBで、英語、中国語、韓国語を翻訳し、送り状の発行はパナソニック、荷物の集荷・配送はヤマトホールディングスと、三社が連携して始めたプロジェクトです。
このサービスに対する訪日観光客の反応は上々のようです。
空港で預かった荷物は、お客がチェックインする前に宿泊先のホテルに届けられるのです。
ホテルにも端末があり、空港や次の宿泊先まで荷物を送ることも出来ます。
ホテルサンルートプラザ新宿の渡邊 聡支配人は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「今までですと、お金の収受をからめて一件について荷物の大きさを測って、(伝票を)書いて、1件につき短くても5分ぐらいかかった手続きが1分ぐらいで終わってしまいますから、非常に簡素化される上にミスもないということで非常に期待しております。」
企業が様々なシステムを活用した“おもてなし”で、訪日外国人の満足度を高めようとしているのです。
以上、番組の内容をご紹介してきましたが、番組を通して私が特に関心を持ったのは、旅行中に困ったことにおける政府のアンケート調査結果です。
言語が通じないことよりもインターネットが通じないWi−Fi環境の不備の方を訪日外国人は問題視しているということです。
ここから見えてくる環境立国を目指す上での課題対応策について、以下に私の思うところを箇条書きにまとめてみました。
・Wi−Fi環境の全国的な整備
・スマホを活用した多言語を対象とする自動通訳、あるいは自動翻訳のサービス強化
・訪日外国人向けのサービス用ロボットを国内の主要箇所(宿泊施設や駅、ショッピングセンターなど)に設置
・訪日外国人の日本滞在中の行動パターンを全て網羅した要件をまとめ、それに対応したサービスモデルを構築・全国展開
そして、最終的に目指すゴールは“世界一、あらゆる面で最高レベルの“おもてなし”の実現“と考えます。
さて、今セブンイレブンで展開しているような人海戦術による対応では効率が悪く、今後の訪日外国人の急増に対応しようとすると人件費増を避けられません。
ですから、どんどん進化しているAIやロボット、あるいはIoTなどのテクノロジーを駆使してスマートサービス(賢いサービス)を展開していくことが少子高齢化による人口減時代到来を迎えつつある日本の現状を打破するためにも求められるのです。
AIを駆使すれば、何ヵ国語でも瞬時に通訳したり翻訳したり出来るのです。
そうした時に参考になるのが、今回ご紹介した複数の企業の連携によるシームレスなサービスです。
もう一つは、アイデアよもやま話 No.3292 ロボットホテルの現状と課題!でもご紹介した極力人手を介さないホテルの運用サービスです。
そして、こうした包括的な取り組みを進めるうえでとても重要なのが先ほどまとめた課題対応策の最後に記したサービスモデルの構築なのです。
こうした取り組みが日本のサービス業の生産性の低さを世界最先端の生産性へと押し上げる起爆剤となるのです。
是非、日本政府にはこのような方針で東京オリンピック・パラリンピックの準備を進めていただきたいと思います。
最近、レガシー(遺産)という言葉をよく耳にしますが、是非競技場など目に見えるモノに限らずサービスなど目に見えないモノについても負のレガシーではなく、将来につながるプラスのレガシーの構築を目指して欲しいと思います。