ゲノム編集については、以前アイデアよもやま話 No.3188 命を変える新技術 − ゲノム編集 その1 生物を自在に作り替える驚異的な技術!でもご紹介したことがあります。
そうした中、9月5日(月)放送のニュース(NHK総合テレビ)でゲノム編集でトラフグが手軽に食べられるようになる取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。
トラフグを通常の2倍のスピードで成長させることに京都大学などのグループが成功しました。
これを可能にしたのは将来ノーベル賞を受賞する可能性もあると注目されている遺伝子を操作する技術、ゲノム編集です。
高松市にある研究施設で飼育されているのはゲノム編集の技術を使ったトラフグです。
通常のフグとの違いは肉付きのよさです。
身の部分が通常のフグの1.4倍ほどもあるといいます。
この肉付き、筋肉の成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」を操作し、働かなくしたことで作り出されました。
ゲノム編集は、生命の設計図にあたる遺伝情報を自在に書き換えられる画期的な技術です。
ハサミの役割を持つ物質を使って遺伝子の一部を狙い通りに取り去り、新たに組み入れたりすることが出来ます。
4年前に低コストでより簡単な方法が開発され、世界中で遺伝情報を書き換える研究が進められています。
研究グループは肥満の人にも注目しました。
肥満の人のおよそ100人に1人が生まれつき食欲を抑える遺伝子に異常があるという研究があります。
研究グループはトラフグでこの食欲を抑える遺伝子をゲノム編集の技術で働かなくさせました。
すると、エサを食べる量が増え、通常の2倍のスピードで成長するようになったのです。
養殖フグを出荷出来る状態になるまでの期間が通常の半分にあたる1年ほどになったということです。
研究グループは、技術を確立したうえで安全性を確かめ、数年後には実用化に向けて量産体制を整えたいとしています。
京都大学の助教、木下 政人さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「筋肉量が増えて生産コストが安くなれば、お手軽に皆さんがご利用していただけるようになると思います。」
ゲノム編集のトラフグ、安全性はどのように確保されるのでしょうか。
従来の技術で作った遺伝子組み換え生物は、食品衛生法など法律で国の定める基準・審査を満たせば、出荷が認められています。
しかし、今回のトラフグは法律の規制対象になるかまだ決まっていないといいます。
ゲノム編集の研究は急速に進んでいて、農林水産省は関係省庁と今後対応を協議したいとしています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
考えてみれば、私たちが普段食べている鶏肉や豚肉、牛肉などは少しでも成長を早く、そして肉付きを良く、あるいは美味しくするために飼料などあらゆる改良を重ねてきたと思います。
そうした中で、今や世界中で研究が進められているという、遺伝情報を自在に書き換えられる画期的な技術、ゲノム編集はこうした手段の中でも究極の手段と言えます。
確かにいろいろな食べ物がより美味しく、しかも低価格で手に入るようになれば私たちの食生活はそれだけ豊かになります。
しかし、生物の遺伝子を組み換えてまで私たちの食生活を豊かにしていいのかという私たち人類も含め生物に対する根源的な問いに私たちは直面しているのです。
でも、安全性が保障されさえすれば、将来的に人間は遺伝子操作で自分の望む理想的な人間に近づこうとする欲望を抑えられなくなると思います。
そのためにたとえ何億円かかろうとも特に世界中の富裕層は将来にわたる家族の繁栄を願って代々生まれてくる子どもたちに対して、自分たちの望む理想像により近づくように遺伝子操作を施す懸念があります。
その理想像としては現実にはノーベル賞級の科学者や芸術家、あるいは政治家などの遺伝子が参考にされるようになると思われます。
同様に、より病気になりにくいように様々な病気の原因となる遺伝子を取り除くような操作もされるようになると思われます。
一方、富裕層でなくても既に私たちは虫歯になれば入れ歯をしたり、骨折すれば人工骨を入れたりというように当たり前のようにこうした医療技術を受け入れています。
こうしたことから、安全性の保障、および治療費の低料金化とともに行き着くところまでゲノム編集に限らず再生医療などあらゆる医療技術を私たちはいずれ受け入れるようになっていくと思われます。
その行き着く先は秦の始皇帝が生涯夢見ていたけれども手に入れられなかった“永遠の命”を人類は手に入れる時を迎えるのです。
当然そうした時代には寿命=健康寿命の状態も実現していると思います。
その時、人類にとって“死”という概念は“本人が死を望み、それを実現した時の状態”というように変わっていると想像されます。