2016年11月06日
No.3540 ちょっと一休み その567 『西洋のピアノの黒い色の源は日本の漆工芸品の光沢の魅力!』

アイデアよもやま話 No.3537 バイオプラスチックへの新たな取り組み!で、日本が世界に誇る“漆ブラック”についてご紹介しました。

そうした中、11月1日に東京国際フォーラムで開催中の「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」に出かけたところ、“漆ブラック”が展示されており、たまたま実物を間近に見る機会がありました。

確かに、素人目には漆塗りの実物との区別は分かりませんでした。

 

説明員によると、“漆ブラック”の今後の課題は防水機能やアルコールなどの薬剤による変色防止、傷のつきにくさ対応、あるいはコスト削減ということでした。

なお、“漆ブラック”はまだ開発段階ですが、既に国内外のおよそ50社から引き合いがあるといいます。

 

ちなみに、ネット検索で漆について調べたところ、漆は一旦固まると、酸、アルカリ、アルコール等の薬品類や、高熱にも耐える強靭な塗膜を作るため、漆器は非常に耐久性に優れていることが分かりました。

ですから、古来からの伝統的な漆工芸品は今開発段階の“漆ブラック”が抱える課題をコスト以外はすべてクリアしていたのです。

ただし、“漆ブラック”にも伝統的な漆にはない優れたところがあります。

それは、金型を変えることによって様々なかたちを作ることが出来るという加工のし易さです。

 

なお、漆工芸は中国から伝わった、など起源について諸説ありますが、福井県で出土した世界最古(約12600年前)の漆器を解析した結果、現在では日本起源が有力となっているようです。

 

さて、西洋のピアノの黒い色の源は、江戸時代に日本を訪れた西洋の宣教師が日本の漆の美しさに魅せられて漆で作られた工芸品を本国に持ち帰り、その魅力が工芸職人にも伝わったということも説明員からお聞きしました。

工芸職人は漆と同じ光沢を目指したのですが、同じ光沢を出すことは出来なかったのです。

このように、漆の美しさは日本の伝統に裏打ちされた日本独自の世界に誇れる優れた工芸技術なのです。

 

こうしたお話に接すると、改めて日本の伝統文化や伝統技術の素晴らしさに思いが至ります。

同時に、伝統的な漆の光沢を現代風に蘇らせようとする取り組みにも単なるビジネスとしての価値以外に伝統の継承の意気込みを感じ取れます。


 
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