2016年11月02日
アイデアよもやま話 No.3537 バイオプラスチックへの新たな取り組み!

バイオプラスチックについてはこれまでアイデアよもやま話 No.1652 プラスチックの秘めるすごい可能性!などで何度かお伝えしてきました。

そうした中、8月17日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でバイオプラスチックへの新たな取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。

 

一般のプラスチックは石油から作られていますが、環境に優しいことからトウモロコシや木材など植物を原料としたバイオプラスチックが今注目を集めています。

しかし、コストが高く普及していないため、広めるための新たな取り組みが始まっています。

普及のキーワードは、“美しさ”と“手軽さ”です。

 

8月17日、NECが新たなバイオプラスチックを発表しました。

日本の誇る伝統工芸の漆器の和の美しさ、“漆ブラック”を初めて実現したのです。

新開発の“漆ブラック”、原料は木材などに豊富に含まれるセルロースという成分です。

そこに漆塗りの美しさを再現したといいます。

従来のバイオプラスチックと比べると、黒が濃く、光沢も強くなっています。

しかし、なぜわざわざ漆の質感を再現したのでしょうか。

NECのIoTデバイス研究所の位地 正年主席研究員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「環境調和性だけでなく、プラスアルファの付加価値を付けていく。」

「コストが高くてもいろいろなところに使ってもらいたいと。」

 

バイオプラスチックはCO2を吸収して成長した植物が原料なので、燃やしてもCO2を増やさず環境に優しいと言われています。

しかし、石油由来のプラスチックに比べて製造コストが高いのが課題です。

価格はおよそ2倍、そのため生産量はプラスチック全体の1%にも達していません。

NECには美しさという付加価値で販路を広げて大量生産につなげようという狙いがあるのです。

 

では、“漆ブラック”は実際にどのように作られているのでしょうか。

ポイントは、色を付けるための炭素の粉にあります。

プラスチックに混ざり易いように炭素の粒は髪の毛の直径の100分の1程度の大きさです。

更に、炭素の粒の表面を混ざり易いように薬剤で加工してあります。

このカーボンを黄色がかったセルロースの樹脂に混ぜて作ります。

石油由来の透明の樹脂では逆に作りにくいといいます。

 

普及を目指すうえでの“漆ブラック”のメリットは加工のし易さです。

通常のプラスチックと同じ約200℃で柔らかくできます。

金型に流し込んで固めると出来上がりです。

金型を変えることによって様々なかたちを作ることが出来るといいます。

NECは自動車や住宅の内装材などにこのバイオプラスチックを売り込んでいく方針で、2020年までには様々な製品に展開したいとしています。

なお、ある漆職人によるこの“漆ブラック”の評価は今のところ実際の漆に比べて85点はあげられるといいます。

 

一方、東京大学(東京都文京区)ではその作り方の研究を進めており、今年お手軽にバイオプラスチックを作ることに成功しました。

岩田 忠久教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「水性で作れるということと室温で作れますし、非常に安全ですから本当に簡単に作ることが出来ます。」

 

その製造方法ですが、必要なのは普通の水と砂糖、そして人間の虫歯菌が作る酵素だけです。

水に砂糖を加えた後、この酵素を入れてかき混ぜます。

後は常温で待つだけです。

すると、3時間ほどで液体は白くなり、どろどろになります。

これがバイオプラスチックの原料になります。

酵素が砂糖に反応し、砂糖をプラスチックの原料に変えるといいます。

乾燥させ、粉状にして化学的な処理をした後、加熱すると出来上がりです。

製造方法が簡単だと大掛かりな装置もいらず、環境への負荷も少なくなり、普及が進み易いといいます。

岩田さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「いろんな有機溶媒を使うと、廃水処理の問題などがあるが、(この方法は)そうした問題はないと思います。」

「環境に優しいマイルドなコンディションで作れるというのが大きいと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

冒頭でお伝えしたように、環境にやさしいバイオプラスチック普及のネックは一般のプラスチックと比べた価格の高さです。

そこで普及のカギは、価格の高さを上まわる付加価値を出せるか、あるいは一般のプラスチックと同等以下の価格まで引き下げられるかということになります。

そういう意味で、最初にご紹介した“漆ブラック”は確かに価格は一般のプラスチックに比べておよそ2倍と高いですが、本物の漆に比べればかなり安いといいますから、その光沢の美しさという付加価値からいろいろな方面からかなりの引き合いが期待出来そうです。

 

一方、東京大学で開発中のバイオプラスチックは、製造方法が簡単なことから一般のプラスチックとの価格競争力に期待が持てます。

ですから、後は一般のプラスチックと同等の品質が確保出来れば、普及が進みそうです。

 

アイデアよもやま話 No.3501 海から離れた場所でのプラスチックゴミを減らす取り組み!でもお伝えしたように、プラスチックゴミの弊害が世界的に拡大しているので、プラスチックゴミ問題の解決のためにも出来るだけ早くバイオプラスチックの普及に結びつけて欲しいと思います。


 
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