2016年10月30日
No.3534 ちょっと一休み その566 『画期的な核兵器禁止条約が賛成多数で採択されたが・・・』

10月28日(金)放送のニュース(NHK総合テレビ)を観ていてビックリしました。

そこで、以下に他の関連報道記事も交えてご紹介します。

核兵器そのものを法的に禁止する核兵器禁止条約、その条約制定を目指す決議が国連総会の委員会で10月27日に賛成多数で採択され、停滞している核軍縮が前進するのか注目されています。

その採決で、唯一の被爆国、日本は賛成でも棄権でもなく、核保有国のアメリカやイギリス、フランス、ロシアなど、およびアメリカの“核の傘”に守られている国々と共に反対を選択しました。

その対応に批判の声もあがっています。

ちなみに、中国は棄権しました。

 

オーストリアなど、核兵器を保有しない50ヵ国以上が共同提案した決議、国連総会の第一委員会で賛成123、反対38、棄権16というように賛成多数で採択されました。

オーストリアのクグリッツ軍縮大使は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「努力してきた国々や市民社会の勝利だ。」

「これまでの努力が実を結んだ。」

 

また、国際NGO「ICAN」のフィン事務局長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「重要な瞬間だ。」

「国連にとって歴史的な瞬間だ。」

 

今回の決議が今年12月の国連総会本会議で採択されれば、来年3月から核兵器を禁止する条約の交渉が始まることになります。

これまで核軍縮の枠組みとしては核兵器の廃絶を目指す「核拡散防止条約(NPT)」がありました。

しかし、段階的な核軍縮を主張する核保有国と速やかな廃絶を訴える非保有国の対立から交渉は停滞していました。

そこで今回、オーストリアなどが提案したのが法的拘束力を持って核兵器そのものを禁止する条約の制定を目指すことです。

今回の決議は、核兵器を法的に禁止し、核保有国に一気に核廃絶を迫ろうとするのが特徴です。

核軍縮への新たな枠組みを目指す今回の決議ですが、唯一の戦争被爆国である日本はアメリカなどと共に反対、日本が棄権ではなくあえて反対に回ったことは各国の間で驚きや批判を持って受け止められています。

国連総会が行う決議などは、投票国の過半数の賛成で採決出来るため、核保有国が参加しなくても条約の採決は可能なのです。

こうした中で、日本が反対した理由は、核兵器そのものを禁止することは核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう助長し、その亀裂を深めるからだといいます。

核軍縮は、両者の対立を避け、協力して段階的に進めるべきだという立場を取っているということです。

同じく反対に回ったアメリカは、採決前に北大西洋条約機構(NATO)の各国に対しアメリカの同盟国と友好国が依存している核抑止力の考え方を否定するものだとして、決議に反対を迫る文書を配布しました。

日本は核兵器廃絶を訴えながら一方でアメリカのいわゆる“核の傘”に守られてもいます。

決議に反対したものの岸田外務大臣は、条約制定に向けた今後の交渉には積極的に参加したいと述べております。

 

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員で、広島県原水爆被害者団体協議会理事長でもある坪井 直さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「日本が反対したのはおかしいと思う。」

「もっと言うべきことは言わねば。」

「今後のことを思ったら、これは皆で考えないといけませんと、それくらいのことは言わないと。」

 

また、同じく日本被団協の代表委員である岩佐 幹三さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「123ヵ国が(賛成)そこまできたということは新しい時代の一歩です。」

「それについていけない日本はなんなんだと。」

「核抑止力という論理だけでものごとを考えようとしたら、それは時代に取り残されていくと。」

 

更に、原水爆禁止日本国民会議議長で、長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長でもある川野 浩一さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「私は裏切り行為だと思うんですね。」

「自ら体験をしているわけですよ。」

「そのことを71年間経ってしまうと忘れてしまうのかと。」

 

一方、長崎大学核兵器廃絶研究センターの中村 桂子准教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「日本は大事なものを世界に向けて核問題で強い発言権を被爆国として持っていた、その部分を自ら捨て去るという選択をしたということになると思います。」

「世論に対しても背を向けたということを私たちは非常に厳しく見ていかなければいけない。」

「日本に対して非難だけではなく、その姿勢を正していくということをしなければならない。」

 

以上、番組の内容を中心にご紹介してきました。

そもそもとてつもない破壊力を持った核兵器の戦争での使用は人類に壊滅的な被害を及ぼします。

なぜならば、一方が核兵器を使用すれば、相手国からも核兵器による報復があるからです。

しかも、核兵器を使用するほどの戦争であれば、同盟国による同様な核兵器の使用が加わる可能性も大きいからです。

ですから、人類存続のためには核兵器のような大量破壊兵器の廃絶は避けて通れないのです。

しかし、アメリカやロシアなど核保有国は戦争の抑止力として核兵器の重要性を唱えています。

確かに、核兵器にはそうした側面もあります。

しかし、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を口にしたことがあるように、将来にわたって考えてみると、いざという場合に“あれば使いたくなる”のが人情であり、これまで独裁国家はいつの時代も存続してきました。

ですから、核兵器が存在する限り、核兵器使用の可能性がゼロになることはないのです。

                   

こうした観点に立つと、原則論で言えば核兵器の廃絶は極めて妥当と思われます。

なので、今回の核兵器禁止条約が賛成多数で採択されたことは画期的なことと言えます。

しかし、課題も残されます。

というのは、アメリカを始めとする核保有国が核兵器の持つ戦争抑止力を過大に評価して国連(国際連合)から脱退する可能性があるからです。

このことを日本は危惧して今回の決議で反対に回ったということです。

しかし、国連総会の第一委員会で賛成123というように賛成多数で採択されたのですから、この大きな流れに乗って、核保有国の国連からの脱退リスクを乗り越えて核廃絶に向けて世界各国が十分な議論を重ねたうえで邁進して欲しいと思います。

今、北朝鮮が核兵器開発に邁進していますが、核保有国であるアメリカが北朝鮮に対して開発を止めるように強く働きかけても説得力は期待出来ないのです。


 
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