2016年10月13日
アイデアよもやま話 No.3520 新・瞑想法“マインドフルネス” その4 マインドフルネスは遺伝子の活動までも変える!

8月21日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)で新・瞑想法“マインドフルネス”をテーマに取り上げていたので4回にわたってご紹介します。

4回目は、マインドフルネスは遺伝子の活動までも変えることについてです。

 

前回まで、マインドフルネスで脳の活動や構造に良い影響を与えることについてお伝えしてきましたが、最近の研究ではマインドフルネスによって変わるのは脳だけではないといいます。

病気やストレスと関係している遺伝子の活動までも変わるといいます。

 

マインドフルネス研究の大御所、アメリカ・ウィスコンシン大学のリチャード・デイビッドソン教授は、マインドフルネスをたった1日しただけで遺伝子の活動が変わることを突き止めました。

それはRIPK2という遺伝子です。

マインドフルネスをしなかった人ではこの遺伝子の活動はあまり変わりません。

ところが、マインドフルネスをした人はこの遺伝子の活動が劇的に下がりました。

デイビッドソンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この結果を見た時は非常に興奮しました。」

「とても面白いと感じたのは、これが純粋な心のトレーニングであることです。」

「人々が単に1日心のトレーニングを行うことで遺伝子の活動というレベルにまで効果があったのです。」

 

RIPK2の役割について、マインドフルネスの専門家で、早稲田大学人間科学学術院教授の熊野 宏昭さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。

「慢性の炎症に係わっている遺伝子のようですね。」

「慢性炎症っていうのは、例えばですね、肥満があったり、あるいは老化とか、がんが身体の中にある、そういう時には弱い炎症がずっと続いているってことが知られているんですね。」

「これがまた動脈硬化の原因になったりして更にその病気を進めていく、あるいは老化を進めていくようなことが分かっているので、この遺伝子の活動が抑えられてくるということはそういった老化であるとか肥満なんかに関わる動脈硬化などの進みが遅くなる可能性があることだと思うんですね。」

「(なぜマインドフルネスが遺伝子の活動にまで影響があるのかという問いに対して、)そこはまだちょっと分かってないんじゃないでしょうか。」

「それがなぜなのかというのは今世界中で研究がされていて、恐らく遠からず明らかになってくるだろうと思うんですけどね。」


「(マインドフルネスをやる場合の1番のポイントについて、)最初から無理をしない、力まないというのが大事ですよね。」

「だから、マインドフルネスって思わなくてもそういう時間が持てればいいわけなので、例えば、風に吹かれてその風の感じを感じてみるとか、五感を使うのがポイントなんですね。」

「外に出かけていく時に、周りをきちんと見ながら、感じながら歩く、それだけでもマインドフルネスの体験になりますので、あまり特別なことと考えないで、そういう気持ちを持ってやっていただきたいってことでしょうかね。」

「日本文化の中には、こういう心の使い方は昔からあるわけですね。」

「お茶とかお花とか書道とか。」

「お茶の先生とかイメージしてみると、凛としているじゃないですか、だらっとしていない。」

「いろんなことごちゃごちゃ考えているんじゃなくて、その時その場にちゃんと居るっていうような感じがしますよね。」

「あれはマインドフルネスの心の使い方を知っているんですよね。」

「でも今はスマホを見ているか、メールを打っているか、だからもうそういうスクリーンに向かっているっていうのがすごく多くて。」

「だから、感じている時間がすごく少ないんだと思います。」

「考えている時間があまりにも多いんだと思います。」

「だから、日本文化の中には昔からそういうものがあって、我々忘れているだけなんですね。」

「だから、思い出しましょうって、そういう話なんですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまで4回にわたってマインドフルネスについてご紹介してきましたが、そのたびごとに新鮮な驚きを感じてきました。

マインドフルネスによって、脳の活動や脳の構造まで変わってしまうだけでなく、更には遺伝子の活動までも変えてしまうというのです。

今回は、マインドフルネスがRIPK2という遺伝子の活動に影響を与えていることについてご紹介しましたが、今後の研究により更に他の遺伝子への影響が新たに発見されるかもしれません。

しかも、マインドフルネスはいつでもどこでもどんな道具も使わずに一人で行うことが出来るのです。

仏教の世界で2500年にわたって探求されてきた瞑想という人類の知恵として本当に素晴らしいと思います。

 

では、なぜマインドフルネスにはこうしたいろいろな効果があるのかですが、それは未だ解明されていないといいます。

以下は、私の勝手な想像です。

私たちは、怪我をしたり、いろいろな病気にかかったりするとすぐに薬をつけたり、飲んだり、病院で診察を受けたりします。

しかし、古代の人たちはそうした薬や医療技術を持ち合わせていませんでした。

そこで、自らの健康維持や治癒の方法の一つとして瞑想にたどり着いたのではないかと思います。

 

さて、番組の最後の熊野さんの「考えるだけでなく、感じることも大事」という指摘がとても印象に残っています。

どうも私たちの身体は考えることばかりでは、ストレスなど心の病に陥ってしまうようです。

また、考えることについては、既にゲームの分野では人類はAI(人工知能)に敵わなくなって来つつあります。

更には以前お伝えしたように、2045年にはシンギュラリティ、すなわち全人類の能力を超える処理能力のAIの出現する年を迎えるという予測までされています。

しかし、感じることについてはまだまだ人間の専売特許でAIには不可能だと思います。

ですから、総じて私たち人類の豊かさを高めていくうえで、感じることをベースとした活動については私たち人間が担当し、そしてそうした人間の活動を補完するあらゆることをAIやロボット、あるいはIoT(Internet Of Things)などのテクノロジーがサポートするという住み分けが妥当ではないかという思いに至りました。

 

最後に、マインドフルネスのキーポイントである呼吸が私たちの脳や遺伝子などにリアルタイムで大きな影響を与えている事実に対して、あらためて呼吸の重要性に対する思いを強くしました。

私たちは日頃無意識に呼吸をして外部から酸素を肺に取り込んでいます。

しかし、その呼吸の仕方によって私たちの生命力を高めることが出来るのです。

こうした素晴らしい効果のあるマインドフルネスなのですから、私たちはもっと積極的にマインドフルネスを日々の暮らしの中に取り入れるべきだと思うのです。


 
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