2016年09月14日
アイデアよもやま話 No.3495 耕作放棄地の再生で防災・雇用へ!

耕作放棄地の有効利用については、太陽光発電の設置といった試みが進められています。

そうした中、6月30日(木)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で耕作放棄地の再生について取り上げていたのでご紹介します。

 

農家の高齢化や後継者不足のため全国各地で増え続けている耕作放棄地ですが、荒れたまま放置された農地は保水機能を失い、土砂災害が起きやすくなるとされています。

そうした中、岐阜県恵那市の山間部で耕作放棄地を農地として再生させ、防災と雇用につなげる取り組みが続いています。

 

農業生産法人、有限会社東野では山間に広がる畑でにんにくを栽培しています。

会社で栽培している畑の広さは約12ヘクタール、その半分余りは耕す人がいなくなり、荒廃した耕作放棄地です。

実は、社長の伊藤 仁午さん(61歳)の本業は建設業です。

農業に参入したきっかけは、16年前の災害でした。

2000年の東海豪雨では、恵那市は2日間で307ミリの雨が降り、山間部の上矢作地区では土砂崩れが起きるなど、大きな被害が出ました。

当時、災害復旧工事にあたった伊藤さんは、被災地を回る中、いたるところで耕作放棄地の被害を目の当たりにしました。

伊藤さんは、この時の想いを番組の中で次のようにおっしゃっています。

「建設業をやっている中で、この地域に入った時にこれはなんとかしないといけないだろうと、農地をもう一度復旧させて災害に強い農山村が出来ないだろうかと。」

 

荒れた農地は保水機能を失い、崩れやすくなっています。

伊藤さんは、こうした農地を少しでも減らそうと考え、8年前に企業が農業に参入出来る制度が導入されたのに合わせて農業生産法人を立ち上げました。

選んだ作物はにんにくです。

荒れた土地でも栽培しやすく、市場での需要が見込めるからです。

そして、耕作放棄地を借り受けては次々とにんにく畑に変えてきました。

地元の農家の人たちもこの取り組みを歓迎しています。

現在はにんにくの加工品で売上を伸ばし、経営も安定しています。

 

防災の視点で始めた耕作放棄地の再生が地域の雇用も生み出しています。

従業員はパートも含めて25人、全員が地元採用です。

幼い子どものいる人も働き易いように子ども連れでの出勤も認めています。

以下はここで働く男女2人の従業員の声です。

「ここに来れば、他のお母さんたちも子どもを連れてきているので、みんなで仲良く出来るし、ありがたいですね、働いている身としては。」

 

「事務員に預けて安心して営業にも行けるし、この仕事でなければ多分仕事を転々としなければ駄目だったのかなと思います。」

「嫁一人じゃ(子どもを)看られないと思うんで。」

 

また、伊藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「地域のためにしっかりやることを考えてさえおれば、どうしなくても継続的に地域の保全が出来るというふうに考えております。」

「農業生産法人、企業が農地をしっかりと管理していく、これが僕は大切だと思います。」

 

放置すれば地域に災害をもたらしかねない耕作放棄地、使われなくなった農地に人の手を加えることで新たな役割を生み出すことが可能になるのかもしれません。

 

この農業生産法人には各地の農協などが視察に訪れているほか、4年前からはJICA(国際協力機構)の研修先にもなり、毎年中南米の政府関係者などが研修に訪れているといいます。

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、耕作放棄地の荒廃が単に土地の放置にとどまらず地域に災害をもたらしかねないということは知りませんでした。

今回ご紹介した耕作放棄地の再生によるにんにくの栽培は、地元の雇用をもたらし、しかも防災にもつながると期待されています。

ですから、国内外でこうした取り組みが広がっていくことは太陽光発電の設置に比べてもいろいろな面でとても理に適っていると思います。


 
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