2016年09月03日
プロジェクト管理と日常生活 No.452 『築地市場移転に思う その1 不可思議な計画』

小池都知事は都知事選で公約の一つに掲げていた都政の透明化の一環として築地市場移転計画の見直しを表明されていました。

そうした状況を反映して、連日のように関連記事が報道されています。

プロジェクト管理の観点からそうした記事の中から5回にわたって私の感じたことをお伝えします。

1回目は、不可思議な計画についてです。

 

プロジェクト開発に限らずどのような業務を進めるうえでも、マスタースケジュールを作り、それに則って作業を進めるのは常識です。

ところが、最近の報道記事を見ていると、築地市場移転プロジェクトの進め方は一般的なプロジェクト計画とはかけ離れていることが目についたのでプロジェクト管理の観点からお伝えします。

 

8月28日(日)放送の「新報道2001」を見ていてビックリしました。

まず、これまでの築地市場移転計画の経緯は以下のとおりです。

1935年 築地市場海上

1972年 大井への移転計画

1986年 築地の再整備計画

1996年 移転検討

2001年 豊洲への移転決定

2014年 豊洲新市場建設着工

今年7月  小池都知事による移転の再検討の発言

8月26日 小池知事による総合精査実施の発言  

 11月7日 豊洲新市場の開場予定

 

なお、他の報道記事によると、新たな移転時期は、豊洲新市場の土壌の安全性について、地下水の水質のモニタリング調査の最終結果が来年1月中旬に公表されるのを踏まえて判断され、5月の連休明けが有力と見られています。

 

そもそも1996年に移転の検討がなされた際に、その一環として土壌の安全性について調査し、その結果に基づいて2001年に豊洲への移転の可否が決定されるべきだったのです。

ちなみに、こうした調査はフィージビリティスタディ(実現可能性調査)と言われています。

こうしたプロジェクトの初期段階で行われるべき調査結果の最終報告がなぜ豊洲新市場への移転後に計画されているのでしょうか。

誰の責任において、どのような理由でこうした計画が決められたのかそのプロセスにとても興味が湧きます。

こうした極めて非常識な手順が踏まれている計画の背景には、以下の2つが考えられます。

1.安全性を無視してでも早く移転を完了させたい見えない力が働いていること

2.これまで築地市場移転プロジェクトに関する進捗状況関連の情報が公開されてこなかったこと

 

明確な理由の説明もないまま当初の予定通り、11月7日に豊洲への移転が完了した後で、来年1月になって土壌の安全面に問題があることが発覚したらいったいどうするのでしょうか。

 

築地移転計画は不可思議と思うしかありません。

小池都知事が安全面に問題ありとして、11月7日の移転を延期し、来年1月のモニタリング調査結果を踏まえて移転の可否を決定すると明言されたことに救われます。

また、小池都知事が情報公開を重んじていることについても今後の都政に期待が持てます。

情報公開によって、何か問題やリスクがあれば早期に都民の目に触れ、今回のような問題は起きずに済んだ可能性が高いのです。

そういう意味で築地市場移転に関係してきたこれまでの都知事や都議会の責任は重いと思います。


 
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