2016年08月20日
プロジェクト管理と日常生活 No.450 『北朝鮮の核実験にみる高まる核テロのリスク』

今回は、2つのテレビ番組を通して北朝鮮の核実験にみる高まる核テロのリスクについてご紹介します。

 

まず、6月5日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)でも「北朝鮮“機密ファイル” 知られざる国家の内幕」をテーマに取り上げていました。

ここでは番組を通して、なぜ北朝鮮は核開発にこだわっているのかに焦点を当てて以下にご紹介します。

 

番組では、北朝鮮軍の中枢から流出した1本のUSBメモリー、その中に北朝鮮の内幕を記した1万2000ページに及ぶ国家の“機密ファイル”が入っていました。

番組ではこのフィルを独自に入手し、それをもとに世界の専門家や元北朝鮮軍の関係者らとともに徹底分析を行いました。

 

このファイルには核開発に関する知られざる思惑についての文書も見つかりました。

その一部には以下のような記述があります。

「核の保有は、軍事費を抑え少ない費用で経済発展と国防強化が出来る最も現実的な路線である。」

 

事実上の長距離弾道ミサイル発射や核実験で国際社会を揺さぶり続ける金正恩体制、36年ぶりの党大会では核保有国としての地位を内外に喧伝しました。

金正恩委員長は、この党大会で以下のように演説しています。

「(我々は)核抑止力を持つことで米国の戦争挑発策動を粉砕し、朝鮮半島の平和と安全を守護している。」

 

これまで北朝鮮の核開発は、アメリカを交渉の場に引き出すための外交カードとしての側面が注目されてきました。

しかし、“機密ファイル”にはもう一つの目的が以下のように記されていました。

「我が国の核の力を強化し、軍の思想教育を強化すれば、全ての軍人が高い緊張状態を保ち、民族最大の念願である祖国統一を成し遂げられる。」

 

核開発には、揺らぐ国内の統治のために必要な手段という側面もあったのです。

ソ連時代から外交官として平壌に駐在し、北朝鮮側と太いパイプを持つモスクワ国際関係大学教授のゲオルギー・トロラヤさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「外交交渉を求めても、アメリカのオバマ大統領は振り向かないし、韓国の朴槿恵大統領も相手にしない。」

「そのことを北朝鮮側はよく分かっています。」

「核開発は金正恩の実績を示す国内向けのプロパガンダでもあるのです。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

次に、7月13日(水)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)の内容をご紹介します。

北朝鮮が再び核実験の動きを見せています。

そうした中、韓国国内で北朝鮮と過激派組織のIS(イスラム国)が手を結んでいるという話が浮上しています。

7月12日、アメリカの研究機関が北朝鮮の核実験施設で活動が活発化していると発表しました。

先週、アメリカは北朝鮮の金正恩委員長などを制裁対象に指定しました。

また、7月11日、米韓は迎撃ミサイルシステム「THAAD」を韓国に配備することを決定しました。

こうした動きに対して、北朝鮮は物理的な対応措置を取ると猛反発していました。

そんな中、韓国でとても不気味な話が浮上しています。

6月下旬、韓国の情報機関はISが韓国人と在韓米軍基地2ヵ所をテロ対象にしていることを突き止めたのです。

更に、韓国の朴槿恵大統領は、ISが北朝鮮と手を結び、韓国を標的にしている可能性があると示唆したのです。

こうした動きについて、元外務省主任分析官の佐藤 優さんは、月間雑誌「SAPIO」の7月号のコラムで北朝鮮とISが連携している可能性について以下のように指摘していました。

「北朝鮮の工作員がISの自称首都、ラッカに出没しているという情報がインテリジェンス関係者の間で流れている。」

 

「北朝鮮は地下秘密基地を造る土木能力に秀でているので、米軍の偵察衛星、無人飛行機やロシア軍の空爆から逃れる本格的な施設をISは必要としているのであろう。」

 

実は、北朝鮮と中東の一部の国とは長く関係が続いています。

例えば、北朝鮮はおよそ40年前の1980年代、リビアの故カダフィ大佐が身を隠していた地下施設を建設していました。

北朝鮮には、核実験施設など無数の地下施設があるとされ、南北を分ける非武装地帯では北朝鮮が掘ったトンネルがいくつも発見されました。

1時間に1万人の兵隊が韓国へ移動出来る規模だといいます。

その技術を当時のリビアは利用したのです。

元朝鮮日報記者は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「中東国家には反米感情があり、北朝鮮と国家同士の連帯を続けてきました。」

 

韓国に亡命した北朝鮮の元工作員は、中東地域の戦闘員が北朝鮮の工作機関で軍事訓練を行っていたと証言しています。

また、反米という共通点でつながっていた北朝鮮と中東の一部の国々、また北朝鮮はISとつながっていたアルカイダとも関係があったとも証言しています。

こうした動きについて、佐藤さんは以下のように指摘されております。

「ISと北朝鮮はイデオロギーは異なるが、米国とその同盟国に対する敵対行為については利益を共有している。」

「また、北朝鮮の工作員がISのテロリストを偽装して日本や韓国でテロ活動を行う危険に備えなくてはならない。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

2つの番組を通して見えてくることを以下にまとめてみました。

・北朝鮮の核開発の目的は以下の2つである

  アメリカを交渉の場に引き出すための外交カードとして利用すること

  金正恩委員長の実績を示す国内向けのプロパガンダとして利用すること

・北朝鮮と中東の一部の国々やISは、米国とその同盟国への敵対行為について利益を共有しており、それに伴う協力関係が以下のようなリスクを生み出していること

  北朝鮮の工作員がISのテロリストを偽装して日本や韓国でテロ活動を行うこと

  北朝鮮がISなどの軍事施設の建設や戦闘員の戦闘訓練などに関与すること

  北朝鮮がISなどに核兵器を提供し、実戦で使われること

 

こうしてまとめてみると、特に北朝鮮によって開発される核兵器のISなどへの拡散のリスクは、最も重要なものとして受け止めなければなりません。

また、注目すべきは、北朝鮮の核開発の目的の一つは国内向けのプロパガンダであるということです。

これは、独裁者と言えども国民の不平・不満を無視出来ないということを意味しています。

要するに、世界各国の指導者の統治上の課題の共通点は、諸外国との外交や協力関係、あるいは時として武力を背景に自国の国際的な立場をより有利にすること、そして国内統治の2つということです。

考えてみれば、中国の南シナ海における一連の強硬的な活動も各種報道記事によれば、その狙いはこうした2つの課題達成に見事に符合しています。

 

このように見てくると、国際平和の実現に向けての課題がおぼろげながら見えてきます。

・世界平和維持のためのルールの構築、およびその遵守

  世界平和を乱すような行為に対しては、そうした行為が経済を中心にその国の世界的な立場を不利にさせる結果をもたらすようなルールを確立すること

  そして、ルールが無視された場合には、罰則規定を忠実に実行すること

・世界各国の国民の意識向上

  世界平和の重要性についての教育を世界各国に義務付けること

  インターネットなどを介して、世界各国の国民が出来るだけ世界情勢などの情報を入手出来るようにすること

 

私のまとめた考えが的を射ているかどうかは別として、物事に対する考えを進めていく上で、プロジェクト管理の基本的な考え方はとても有効だと思います。

今回は、北朝鮮の核実験を通して、そこにはどのようなリスクがあるのか、また世界平和を維持していく上で何をすべきか、すなわち課題についてお伝えしました。


 
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