2016年08月14日
No.3468 ちょっと一休み その555 『宇宙人の高度文明 その3 人類を遥かに凌ぐ高度文明とは!』

4月7日(木)放送の「コズミックフロント」(NHKBSプレミアム)のテーマは「ついに発見!?宇宙人の高度文明」でした。

とても興味のある内容でしたので5回にわたってご紹介します。

 

2回目でご紹介したように、ロシア科学アカデミーの天文宇宙研究センター(モスクワ)のニコライ・カルダショフ所長は、地球外文明の進化の度合いを分類する、カルダショフ・スケールと名付けられた方法を考えました。

前回の繰り返しになりますが、尺度は文明が必要とするエネルギーの量で、それを3段階に分けます。

第一段階は、タイプ1の惑星文明、すなわち惑星レベルのエネルギー量で成り立つ文明です。

第二段階は、タイプ2の恒星文明、すなわち恒星規模のエネルギーを必要とする文明です。

そして、最終段階がタイプ3の銀河文明、すなわち銀河一つ分のエネルギーを丸ごと利用する高度な技術力を持った文明です。

そこで3回目は、人類を遥かに凌ぐタイプ2の人類を遥かに凌ぐ高度な文明についてのご紹介です。

 

超巨大なコロニーが現れました。

文明の主は故郷の惑星を離れ、宇宙空間で生活しています。

推進力はイオンエンジンのような電気推進システムです。

化石燃料などの天然資源は既に枯渇しているからです。

彼らが住んでいた惑星は今巨大な機械工場と化しています。

故郷の惑星から打ち上げられた小型衛星が向かうのは無数のパネルが並んでいる一画、光を吸収するパネルはそれぞれ互いの間隔を自動制御しています。

建造物は恒星を取り囲む巨大な規模のものになります。

パネルは光エネルギーを電気に変換、レーザービームでコロニーに送信します。

電力はコロニー内部の照明や食料の生産などあらゆることに利用されます。

このリングが謎の星の奇妙な現象を引き起こしている、科学者たちはその可能性を指摘していたのです。

 

宇宙空間で発電する技術は既に地球でも開発が進められています。

アメリカ海軍実験研究所(アメリカ・ワシントンD.C.)で開発担当のポール・ジャフィー博士は、宇宙太陽光発電システムの試作モデルを開発しました。

この装置は、主に2つに分かれています。

中央の太陽光パネルが上の照明の光で発電、それをマイクロ波に変換して下方向に送信します。

この装置はマイナス150℃の真空でも効率的に発電出来ることが実証されています。

現在、宇宙空間でのテストに向け準備が進められています。

理論では、宇宙空間でも24時間、365日休みなく発電します、

マイクロ波は雲を通り抜けるため、地球上のどこにでも電気を送ることが可能です。

しかし、技術的な問題を含め、課題は山積みです。

実用化の目途はまだたっていないのが現状です。

太陽をすっぽり覆うダイソン球となると、建設材料も全く足りません。

ジャフィーさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ダイソン球のような壮大な建造物を作るなど想像すら出来ません。」

「巨大な太陽を取り囲むにはとてつもない原材料となるでしょう。」

「地球の物質全てをかき集めたとしてもほんの一部にしかならないはずです。」

「太陽系の全ての惑星を使ったとしても分かりません。」

「ですから、人類がタイプ2の技術を獲得するのは遥か未来、数千年は先のことになるでしょう。」

 

恒星の光を遮る巨大建造物として示されたダイソン球仮説、それは星の光エネルギーを丸ごと利用するために作られたというものでした。

現在、この仮説を検証するため世界中の望遠鏡が謎の星に向けられています。

この恒星の光を遮るものは何か、次はその正体を確かめる観測の最前線に迫ります。

 

一時的に極端に暗くなる謎の星、白鳥座のKIC 8462852、2015年12月、スピッツァー宇宙望遠鏡でこの謎の恒星を分析した結果が公表されました。

観測データを分析したアイオワ州立大学天文物理学科のマッシモ・マレンゴ教授が注目したのは謎の恒星の周囲の赤外線です。

マレンゴさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「天体を様々な波長で観測すると、その天体の温度が分かります。」

「恒星の周りに物体があれば温度が比較的低いため、強い赤外線を放射します。」

「それを捉えれば、可視光線では見えなくてもそこに物体があることが分かります。」

 

物質が恒星からの光に当たると熱を吸収し、物質自体の温度が上がると同時に熱が放射されます。

それが赤外線として現れるのです。

もし、原始惑星の残骸や小惑星があるのなら、温められた熱が赤外線としてデータに現れるはずです。

実は、スピッツァー宇宙望遠鏡は謎の恒星が極端に暗くなった時、たまたまこの星がある領域を観測していました。

恒星の周りは赤外線で明るくなっていません。

塵や岩石などが周囲に無いことを示しています。

マレンゴさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「通常を超えるレベルの赤外線が観測されなかったので、原始惑星の衝突や巨大な小惑星帯が原因である可能性は極めて低くなりました。」

「もし、それらが原因であるならば、赤外線で確認出来るはずです。」

 

人工建造物の場合も同じです。

赤外線で何も映っていないということは、熱を発する物質が無いということを意味するからです。

では、いったい恒星の光を遮ったものは何なんでしょうか。

マレンゴさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「有力なのは彗星です。」

「楕円軌道なので恒星の近くに来るとスピードを上げてすぐに遥か彼方へと遠ざかって行きます。」

「恒星の周囲に赤外線の痕跡を残さず、光を遮ることが出来るのです。」

 

彗星の場合、すぐに恒星から遠ざかるのでその痕跡が赤外線に現れることはありません。

更に、主に氷でできているため温度が低く、放出された塵もすぐに拡散してしまうため赤外線を放射することもありません。

 

一方で矛盾もあります。

恒星の光が20%以上も暗くなるには大量の彗星が前を通ることになります。

それは現実に起こり得ることなのでしょうか。

マレンゴさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「私の提案した彗星説も徹底的な検証が必要です。」

「様々な観測データと一致するかどうか、今検証作業を進めているところです。」

 

更にその後、彗星説と矛盾する観測データが公表されました、

ハーバードカレッジ天文台の過去の観測データによると、謎の恒星は100年間で15%以上も暗くなっていたというのです。

同じ軌道を周期的に回る彗星ではうまく説明がつきません。

マレンゴさんは高度文明が建造したダイソン球という可能性も完全に否定されたわけではないと考えています。

マレンゴさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「出来ることは、私たちの知っているレベルの科学の枠組みで物事を考えることです。」

「ダイソン球を作るような我々の科学技術を遥かに凌ぐ文明なら、赤外線を出さずに恒星のエネルギーを利用する方法を編み出しているかもしれません。」

「だとしたら、今の私たちの科学では残念ながら観測不能です。」

 

マレンゴさんとは別な方法で奇妙な現象の正体を確かめようとしている研究者がいます。

カリフォルニア大学バークレー校SETIセンターの所長、アンドリュー・スィミオン博士です。

スィミオンさんは、連邦議会の公聴会で地球外知的生命について発言した研究者です。

スィミオンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「もし、恒星を取り囲む巨大構造物があるとすれば、そのようなものを建造出来る高度な文明を持つ知的生命がいることを示しています。」

「ですから、問題の恒星を電波望遠鏡で追跡調査し、巨大構造物とは別に文明が存在する証拠を直接見つけるのです。」

「高度な文明があるなら、他の惑星を植民地化しているでしょうし、他の惑星にいる仲間と連絡を取るために通信技術が発達していることも十分考えられます。」

「その文明が使っている電波信号を伝統的なSETIの技術を使って捉えるのです。」

 

グリーンバンク天文台にある電波望遠鏡で謎の星を追跡観測する予定です。

解析技術の進歩でドレイクさんの時より広い周波数を短期間で分析することが出来ます。

スィミオンさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これまで観測されたものとは違う、何か説明がつかない異常な現象が見つかった時、私たち天文学者はそれがいったい何なのかをとことん理解しようとします。」

「我々はこれから電波望遠鏡を使って徹底的に調べ上げようと考えています。」

「しかし、それはあくまでも沢山ある手段の一つに過ぎません。」

「謎の星の奇妙な現象は地球外文明が築き上げた人工物が原因なのか、あらゆる方法を駆使して謎の正体に迫るのが科学の神髄です。」

 

謎の恒星の奇妙な現象が発見されてから3年あまり、なぜこれほど多くの研究者たちが真剣に議論を重ねているのでしょうか。

巨大建造物の可能性を最初に発表したペンシルバニア州立大学天文学科で形骸惑星を研究するジェイソン・ライト准教授は、結局地球外文明が確認されなかったとしても、天文学は一歩前進することになると考えています。

高度文明の存在を証明することではなく、謎の現象の原因を科学的に解明することが真の目的だからです。

ライトさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この謎の正体が稀に起こる自然現象であることが解明されたとすれば、私を含め研究者はほっとするでしょう。」

 

かつて同じような事例がありました。

1967年、イギリスの天文学者が宇宙からやって来た電波を受信しました。

この電波は常に同じ方角から同じタイミングでパルスを刻んでいました。

当時の研究者たちは宇宙人が発した信号なのではないかと考えました。

その後、様々な方法で電波の発生源を調査しましたがその結果、それまで理論でしか確認されていなかった中性子星が規則的に電波を発していたことが明らかになったのです。

ライトさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「謎があることは科学にとってとても良いことです。」

「それを解明しようと努力することを通して、多くのことを学ぶことが出来るからです。」

「この謎の恒星も中性子星のように詳しく研究すれば新しく科学的な知見を得ることが出来ると考えています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

結局、恒星の光を遮るものは何か、その正体についての解明は、それぞれの仮説に一長一短があり、道半ばのようです。

しかし、ライトさんのおっしゃるように、こうした謎の解明の研究を通して科学は進歩していくのです。

天文学に限らず、こうした人類の好奇心こそが文明の進化の強力な推進力となっていると思います。

しかし、残念ながら好奇心の向かうところは必ずしも人類に豊かさをもたらすばかりでなく、核兵器開発のように人類を滅亡へと追いやる可能性も秘めているのです。

 

ということで次回は、知的生命が高度な文明を築き上げることの困難さについてご紹介します。


 
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