5月31日(火)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)で海水中に残留するマイクロプラスチックの脅威について取り上げていたのでご紹介します。
東京農工大学環境資源科学科の高田 秀重教授は、東京湾の海水中に浮いているマイクロプラスチック(微細プラスチック)を採取し、人体への影響を調査しています。
東京湾多摩川河口で調査を開始、網を投入し、海の中にある異物を採取します。
およそ20分後、網を引き揚げてビーカーに移して見てみると、明らかに天然と違う白色や緑色のものがマイクロプラスチックで魚が間違えて食べてしまうといいます。
これまでの調査で東京湾の魚の6〜8割がマイクロプラスチックを保有していると推察されています。
もしマイクロプラスチックを含んだ魚を食べると人体に影響はあるのかについて、高田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「プラスチック自体は人間の体に溜まるわけじゃないんで、やがて排出されてしまいますので、それ自体を問題にする必要はないと考えています。」
「(しかし、プラスチックは海の中の有害物質を吸着しやすいため、魚が食べてしまうと有害物質が魚の脂肪に溜まると考えられていることに対して、)現状では量的には少ないんですけど、将来プラスチックの量が増えた場合には、人への影響も考慮する必要があると考えています。」
「免疫力が低下して、風邪をひきやすくなるとかいろいろな感染症にかかりやすくなるとか、そういうようなことが起こり得ることとして考えられます。」
今のところ微量なので人体に影響が出るということはありませんが、今後マイクロプラスチックの量が増加すると、人にも影響が出る可能性があるといいます。
更に、九州大学の研究によると、日本近海には世界平均の27倍の量のマイクロプラスチックがあると見られています。
マイクロプラスチックが日本近海に多い理由について、一つは海や川に捨てられたプラスチックごみの影響、このごみが海に流されるうちに細かくなり、マイクロプラスチックへと変わっていくのです。
そしてもう一つは、中国などから流れてくるごみです。
去年発表されたデータによると、海洋に流出されたプラスチックごみの量(2010年の1年間)は以下の通りです。(アメリカ・科学誌「サイエンス」2015年2月発表より)
1位 中国 132万〜353万トン
2位 インドネシア 48万〜129万トン
3位 フィリピン 28万〜 75万トン
こうしたプラスチックごみが中国や東南アジアから流れている海流に乗って日本を覆い込むように流れてきているというのです。
押し寄せるプラスチックごみ、半永久的に海に残り回収も難しいため、海に増え続ける一方です。
この対策について、高田さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「削減(Reduce)、再利用(Reuse)、リサイクル(Recycle)、この3Rを進めることが海のプラスチックごみの削減にもつながる有効な手段だというふうに考えられます。」
世界の海には5兆個のマイクロプラスチックが漂っていると言われ、今世界的な課題となっています。
こうした中、マイクロプラスチックの一種で、一部の洗顔フォームや歯磨き粉などに配合されているマイクロビーズ(直径0.001〜0.5ミリ)を世界各国で規制する動きが見られ、昨年12月にはアメリカで製造・販売を禁じる法案が可決されました。
オーストラリア、イギリス、カナダなどでも同じような法案が今検討されているといいます。
当然、日本でも真剣に検討していくべき課題です。
そこでネット検索したところ、今年3月に日本化粧品連合会が洗い流しのスクラブ製品におけるマイクロビーズの使用禁止に向け自主規制を開始したといいます。
以上、番組の内容を中心にご紹介してきました。
今のところマイクロプラスチックは人に無害のようです。
しかし、マイクロプラスチックは半永久的に海に残り回収も難しいため、海に増え続ける一方だといいます。
ということは、今のうちに適切な対策を実施しないでいると何十年後か何百年後には世界中の海で有害物質が脂肪に溜まる魚が蔓延し、私たちはこうした魚を食べることが出来なくなってしまいます。
同時に、魚をよく食べている人たちの中には体に異変を感じる人が出てくるかもしれません。
こうした事態が現れてしまっては後の祭りで、元の状態に戻すまでにとれだけの期間がかかるか分かりません。
もしかしたら、対策が効を奏すよりも先に沢山の魚が絶滅状態になってしまうかもしれません。
魚が食生活にしっかりと根付いている日本人にとってはこうした事態はたまらなく悲しいことです。
ここで思い出されるのは、以前アイデアよもやま話 No.3079 かつての日本は公害先進国だった!でもご紹介した公害病の水俣病やイタイイタイ病、そして光化学スモッグのことでした。
水俣病やイタイイタイ病は特定の企業が垂れ流した有害物質が原因で発生しました、
ですから、特定の企業が対策を講じれば解決出来ます。
しかし、光化学スモッグは運送業のトラックやタクシーだけでなく不特定多数の一般ドライバーが運転する自動車の有害な排気ガスが原因で発生していたのです。
この光化学スモッグと同様に、海中のマイクロプラスチックの増加は私たちが普段の暮らしの中で垂れ流している一部の洗顔フォームや歯磨き粉など、あるいは海や川に捨てられたプラスチックごみが原因なのです。
ですから、私たちは無関係ではいられないのです。
では、海中のマイクロプラスチックの増加問題に対して、私たちにはどのような対策が打てるでしょうか。
それは、高田さんのおっしゃるように、削減(Reduce)、再利用(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rを進めることだと思います。
更に、根本的な対策としては、プラスチックメーカーが今のように半永久的に海に残り回収も難しいプラスチックではなく、海中に限らずどこに存在してもいずれ分解されて無害な状態になるようなプラスチックを製造することです。
また、プラスチックの代替製品の開発という手段もあります。
そうした方向性の下に、政府はこうしたプラスチック、あるいは代替製品の研究開発の支援や従来のプラスチックの使用禁止法の制定が求められるのです。
私たちの多くはふだんプロジェクト管理の考え方など意識して暮らしていないと思います。
しかし、海中のマイクロプラスチックの増加に伴い、将来魚が食べられなくなるリスクに対しては多くの日本人は無視していられないと思います。
将来にわたって世界中の人たちが魚を食べ続けられるように、私たちはふだんから3Rを実行することがこのリスク対応策となるのです。