2016年08月06日
プロジェクト管理と日常生活 No.448 『ミス撲滅の要諦 ― ミスが報告されても決して叱らない』

私たちは日々の暮らしの中で、あるいは仕事の中でいろいろと失敗を繰り返し、その中からいろいろと学んでいきます。

そうした中、5月25日(水)放送の「深層NEWS」(BS日テレ)のテーマは「成功のカギは失敗にあり!」でした。

番組ではいくつかの企業の取り組みを取り上げておりましたが、今回は、番組とネット検索の結果を参考に、各地で高級感ある温泉旅館やリゾートホテルを運営している星野リゾートの失敗への取り組みに焦点を当ててご紹介します。

 

ミスを減らすことを目的に立ち上げた「ミス撲滅委員会」は、星野リゾートの軽井沢・ホテルブレストンコートで始まった取り組みです。

「ミス撲滅委員会」では、「ミスを憎んで、人を憎まず」というキャッチフレーズのもと、以下の3つのルールを定めています。

(1)ミスを報告する人は、「実際にミスをした人」「他の人がしたミスについて知っている人」のどちらでもよい。

(2)ミスをした人を絶対に叱らない。

(3)ミスを報告してくれたことについてしっかり褒める。

 

このルールを定めた結果、ミスの報告を怠ることは減り、当事者がミスに気づかない「隠れたミス」の報告も集まるようになったといいます。

こうして集めた現場レベルの情報をもとに、ミス再発防止の仕組みづくりができるだけでなく、「真実の瞬間」の対応力までも上がってくるといいます。

 

人はミスを犯すと、出来るだけ隠せるものなら隠そうとする傾向があります。

ですから、上記の3つのルールの中でも特に(2)の「ミスをした人を絶対に叱らない」ことはとても重要です。

叱らないだけでなく、(3)の「しっかり褒める」ことにより、安心してミスを報告することが出来るのです。

更に、こうした取り組みをする上で、最も重要なことは経営層の本気度です。

経営層が本気で取り組むことにより、こうした取り組みは生きてきます。

しかし、かたちだけの取り組みになってしまうと、単なる生産性の低下に陥ってしまうので要注意です。

 

さて、こうした取り組みの延長線上で、既に星野リゾートでは実施済みと思われますが、私の提案を以下にまとめてみました。

(1)「ミス報告書」には、ミスの原因分析、および再発防止策の項目が含まれていること

(2)「ミス報告書」の分析結果を定期的にまとめ、全社員に公開すること

(3)「ミス報告書」だけでなく「成功事例報告書」も提出するように義務付けること

 

こうした失敗事例と成功事例を社員間で共有することにより、個人レベルではなく全社レベルでのサービス向上が図られることが期待出来るのです。

 

最近、大企業による不祥事が立て続けに起きていましたが、そうした企業においても大なり小なり何らかのこうした取り組みはなされていたと思います。

しかし、形骸化していたがために、不祥事につながってしまったのです。

ですから、こうした取り組みは経営層をはじめ会社全体の意識のあり方次第で効果のレベルは全く異なってくるのです。

 

ミスではありませんが、とても残念な事例の一つとして挙げるのは、8月2日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で取り上げられた三菱自動車の燃費不正問題への対応です。

 

番組によると、燃費不正問題で、外部の弁護士からなる特別調査委員会が不正の経緯や原因に関する調査報告書を8月2日に発表しました。

調査では、5年前の2011年に行った全社員を対象にした無記名のアンケートで、虚偽報告が存在する、品質記録の改ざんなど、不正に関する複数の指摘があり、これらは経営陣に報告されたにも係わらず、燃費不正の当事者だった性能実験部の部長が「問題なし」と報告、不正は見過ごされていたことが明らかになりました。

 

なお、特別調査委員会では今後の再発防止策については具体的に提案していないといいます。

その理由は、これまでも三菱自動車はしっかりとした再発防止策を何度も策定してきたが、それを実行してこなかったことを挙げています。

要するに、再発防止策は既にしっかりしたものがあるので、後は“実行あるのみ”で、それは三菱自動車自身の問題であるという見方です。

要するに、危機意識を全社的に共有していない社風を変えなければ、燃費不正問題はこれからも起こり得るというわけです。

 

さて、星野リゾートでは、No.468 ルールの少ないのが成熟した社会!でご紹介したリッツ・カールトンホテルと同様に、個々の社員の判断でお客様へのサービスに取り組む方向でサービス向上を目指されているようです。

 

さて、プロジェクト管理においても、何らかの問題が起きた場合には必ず再発防止策を検討・実施することが求められます。

こうした取り組みの積み重ねによって、ミスの減少が図られるのです。

また同時に、継続的な改善活動も重要です。

継続的な改善を通して、プロセスの耐えざる改善が継続され、管理レベルが向上し、ひいては生産性の向上図られ、お客様へのサービスレベルが向上が期待出来るからです。

ただし、そのための大前提として、組織全体として、目的意識が共有されていることが求められるのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています