2016年07月31日
No.3456 ちょっと一休み その553 『宇宙人の高度文明 その1 宇宙人の巨大建造物仮説!』

4月7日(木)放送の「コズミックフロント」(NHKBSプレミアム)のテーマは「ついに発見!?宇宙人の高度文明」でした。

とても興味のある内容でしたので5回にわたってご紹介します。

1回目は、宇宙人の巨大建造物仮説についてです。

 

1500光年の彼方に地球より進化した文明が存在している、そんなSFのような話が今アメリカで真剣に議論されています。

きっかけは、2015年9月29日、「今後10年間の地球外生命探査と宇宙生物学」を議題としたアメリカ連邦議会の下院、科学・宇宙・技術委員会でアメリカを代表する天文学者たちが集まり、委員たちと意見交換しました。

そこの場で天文学者の一人が次のように発言しました。

「高度な文明を築き上げた知的生命の存在を巨大なエネルギー消費の痕跡などから間接的に確認することが可能です。」

 

学者たちの発言は、ある奇妙な天体の発見を受けてのものでした。

白鳥座の一角にある恒星、KIC 8462852、この星が今までの科学の常識を破る不可解な現象を起こしていました。

高度に発達した地球外文明の巨大建造物が存在している、そう考える科学者が現れたのです。

この仮説はテレビや新聞でも取り上げられ、大騒ぎに発展しました。

 

銀河系に存在する2000億もの星々、その中の一つに宇宙人の存在を示す星があるといいます。

騒動の発端となった奇妙な現象を発見したのは、アマチュア天文愛好家のダリル・ラコースさんです。

2012年、ある星が不自然に明るさを変えていることに気付きました。

ラコースさんが分析していたのはケプラー宇宙望遠鏡のデータです。

太陽系の外の惑星を見つけるのが主な任務です。

白鳥座の一角の15万もの星の明るさを観測しました。

恒星の光は惑星が前を通り過ぎるとわずかに暗くなります。

そのわずかな変化を感知することで惑星を見つけるのです。

ラコースさんが見つけた奇妙な星とは、地球から1470光年の彼方、KIC 8462852と呼ばれる恒星です。

ちなみに、この恒星の質量は太陽の1.5倍程度、表面温度はおよそ7000℃、年齢は太陽と同じく中年期にさしかかっていることが分かっています。

この星が2011年3月、1週間だけ15%も暗くなっていたことを観測データは示していました。

このことは一体何を表しているのでしょうか。

体積が地球のおよそ1300倍の木星ですら太陽と比べると1000分の1に過ぎません。

木星規模の惑星でも恒星の前を通った時に暗くなる割合はせいぜい1%です。

ラコースさんが注目したこの奇妙な恒星が15%も暗くなったということは木星よりはるかに巨大な天体が前を横切ったことを意味しています。

更に、この恒星が極端に暗くなる現象は2年後の2013年にも起こりました。

しかも、光が減ったことを示す曲線はなんと20%以上も暗くなっていたのです。

20%ほども暗くなるには恒星の半径ほどの巨大な何かが前を横切った計算になります。

いったいどんな天体が恒星の前を通り過ぎたのか、ラコースさんには全く想像もつきませんでした。

ラコースさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ケプラーのミッションで観測した15万の星とは全く異なる何か特殊なことが起こっていたことは明らかです。」

「私はプロジェクトの科学者チームに報告しました。」

「そして、何が原因でこんなことが起きたのか徹底的に調べてみることになりました。」

 

ラコースさんの報告に強い関心を持ったのは、イェール大学(アメリカ・コネチカット州)天文学科で分析ボランティアを取りまとめているタベサ・ボヤジアン博士です。

恒星が暗くなった原因は何か、ボヤジアンさんは変光星である可能性を検討しました。

光の成分を調べてみると、ある程度成熟し、安定した状態にあることが分かりました。

そこで、ボヤジアンさんはラコースさんたちといくつかの仮説を考えました。

一つは、天体衝突による残骸が原因だとする衝突による残骸説です。

このような現象は、誕生間もない恒星の周りでよく起ります。

しかし、安定した状態の恒星ではほとんど起きることはありません。

 

これとは別に、巨大な彗星の群れが前を通り過ぎたという巨大彗星群説も出てきました。

しかし、彗星にしても恒星の光を20%も遮る規模のものは太陽系の常識では考えられません。

ボヤジアンさんたちはこの他にも数多くの仮説を検討しました。

しかし、どれも一つの条件では説明出来ても別の条件では矛盾を引き起こしました。

どの仮説もそれぞれ一長一短あって、この奇妙な現象をうまく説明出来ないのです。

 

アイデアに行き詰まってしまったボヤジアンさんは結局外の天文学者にアドバイスを求めることにしました。

ペンシルバニア州立大学天文学科で形骸惑星を研究するジェイソン・ライト准教授は、ボヤジアンさんから送られたデータを見て、すぐにあることを思い付きました。

ライトさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これは惑星の影響ではありません。」

「丸くはない何かが光を遮って起こる現象です。」

「丸くはなく、公転周期もバラバラ、宇宙人の巨大建造物であれば説明がつきます。」

 

ライトさんが注目したのは、明るさを示す曲線がギザギザしていたことです。

惑星の場合、恒星の前にさしかかると明るさを示す曲線は右下がりのカーブを描きます。

横切っている間、明るさは変わりませんが、通り過ぎると元の明るさに戻ります。

惑星のような球体の場合、曲線は台形になります。

もし、人工的なもの、例えば梯子のようなかたちであれば、曲線は複雑なものになります。

謎の恒星の場合はかたちがギザギザしているうえに、谷も沢山あります。

惑星のような丸いものではなく、かたちのいびつな何かが、それも複数前を横切ったことを示しています。

ライトさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「この奇妙な曲線グラフを初めて見た時、とても興奮したことを覚えています。」

「高度な文明の巨大な建造物が光を遮ったとすれば、まさにこのような複雑な曲線になるはずです。」

「私は直ちに論文にして発表しました。」

 

ライトさんが発表した宇宙人の巨大建造物仮説は一般のメディアを巻き込んで大騒ぎになりました。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

今のところ、恒星の光が一時的に暗くなり、それが宇宙人の巨大建造物が恒星の前を横切るよるものであるというのは仮説に過ぎません。

 しかし、このように想像を絶するような巨大建造物を作れるほど進化した宇宙人の文明とはどのようなものなのか想像するととてもワクワクしてきます。

一方では、もしこのように人類よりもはるかに進歩した宇宙人と人類が遭遇した場合にどのようなことが起こるのか想像すると恐怖心が湧いてきます。

 

ということで次回は、高度文明の巨大建造物の目的とは何かについてご紹介します。


 
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