2016年07月13日
アイデアよもやま話 No.3441 アップルの陰りに見る企業の成長の限界!

前回、ダイソンに見るモノづくりの秘訣についてご紹介しましたが、7月5日付け日本経済新聞の電子版でこれに関連したとても興味深い記事を見かけましたのでご紹介します。

 

ご存知のように、アップルは音楽の楽しみ方を変え、スマホで人間の生活そのものを変えました。

その結果、部品やソフトのメーカーを潤し、世界経済を支えてもいます。

ところが、6月13日、サンフランシスコで開いた開発者向けイベントで、アップル最高経営責任者(CEO)のティム・クックさん(55歳)の説明は、基本ソフト刷新など既存プラットフォームの小幅改善に終始し、「過去の話が多くなり、かつての大胆さが消えた」と出席者に印象づけたといいます。

 

創業者のスティーブ・ジョブズさんが2011年に死去する前にCEOを引き継いだクックさんは5年で売上高を5割増やし、株価を2倍に引き上げました。

ジョブズさんが嫌った「iPhone」の大画面化に踏み出して需要を再び呼び戻し、「アップルウオッチ」も世に問いました。

 

後継者として業績を安定的に伸ばしてきた経営能力は内外で高く評価されるクックさんをしても抑えきれない異変が今、アップルを襲っているといいます。

 

1月に始まった「iPhone6s」の減産は前年比3割に及びました。

前作「iPhone6」とパネルサイズが同じで機能差も大きいといえず消費者に違いを打ち出せていないのです。

 

2007年に登場したiPhoneの草創期は生産台数が少なく、世界で集めた最先端の部品を惜しげもなく採用出来ました。

それが今、新作は1億台以上に必要な量の部品を用意しなければなりません。

ビジネスが大きくなって品質管理の担当者が増え、新技術の採用に保守的な態度も目立ってきまました。

 

消費者が抱く「飽き」も避けられません。

アップルは新しいライフスタイルを提案する製品を幾度も生み出してきました。

でも、iPhoneを超えるような製品は久しく生まれていません。

日常品化したスマホという土俵で戦い続ければ、どんなに完成度が高くても感激は薄れてきます。

そういう盛者必衰のサイクルをアップルは緩やかに迎えつつあるのです。

 

そうした中、「それなしで生きていけないと思うほどの機能が新モデルに加わる」、5月2日、テレビ番組に出演したクックさんは今秋発売の次期iPhoneについて語りました。

ところが部品メーカーに伝えている生産計画の数量は現行モデル並みで、驚きを求める消費者の期待に新製品で応える「アップルモデル」は行き詰まっています。

 

以上、記事の内容をざっとご紹介してきましたが、ここで思い出されることがあります。

それは、かつてのソニーの画期的かつ世界的大なヒット商品「ウォークマン」です。

従来のライフスタイルを変えてしまうほどの素晴らしい製品もやがて日常生活の中に埋没してしまい、ユーザーに与えた当初の感動もだんだん薄らいでいきます。

また、他社による競合商品も登場してきます。

更には、技術革新とともに同じ機能を満たす媒体もどんどん進化していきます。

そして、今やネットを通して膨大な量の楽曲をダウンロード出来るような環境になっています。

残念ながら、こうした技術革新を最大限に活用したビジネスモデルを構築するというライフスタイルを提供し、世界的に普及させるリーダーはソニーではなくアップルだったのです。

ですから、企業が継続的に成長していくためには以下のプロセスが求められるのです。

1.新しいライフスタイルの提唱

2.新しいライフスタイルを実現させるための最新技術による製品づくり、およびサービス、そしてビジネスモデルの実現

 

ところが、企業の新製品や新サービスも必ずヒットするという保障はありません。

ちなみに、今や伝説的なロックバンド、ビートルズも彼らの人気の絶頂期に、次に発表する新曲がヒットに結びつくかどうか大変不安を感じていたそうです。

 

ヒットの保障がない中で、それぞれの企業は自社の存続を賭けて新商品の研究開発に取り組んでいかなければなりません。

しかし、今回ご紹介したアップルもこれまでの大企業の例に漏れず、企業の成長の限界が表れて始めているといいます。

そうした中で、今回ご紹介した、企業が継続的に成長していくためのプロセス、および前回ご紹介したようなモノづくりの秘訣をいかに社内の組織風土として定着させ、維持出来るかがアップルに限らず、どの企業にも求められているのです。

 

更に言えば、今や世界的な関心事である地球環境問題やエネルギー問題を解決するための“持続可能な社会”の実現の方向性に沿った“モノづくり”を実現させることが世界中の多くの人たちから尊敬される企業、すなわち“絶対的に社会的に存続価値のある企業”となり得るのです。


 
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