ちょっと古い情報ですが、2月13日(土)放送の「サワコの朝」(TBSテレビ)のゲストは中尾ミエさんでした。
中尾さんは歌手として十代から活躍されており、その後活躍の場を女優やバラエティ番組などにも広げていきました。
デビューから50周年を迎えた今もなお、美しい歌声とその歯に衣着せぬトークで輝き続けています。
そして、70歳を迎える今年も新たなミュージカルを計画中だといいます。
さて、番組の中で最も印象に残ったのは中尾さんの次の言葉です。
「(高齢者に対して)何もしなくていいっていうのは親切じゃないんですよ。」
「最後の最後までこき使わなきゃ。」
この言葉を裏付けるのは、映画「人生、いろどり」(2012年)です。
この映画は、葉っぱビジネスで大成功した高齢者たちが生きがいを取り戻していく実話を元にした作品です。
ちなみに、葉っぱビジネスについてはアイデアよもやま話 No.2057 参考にすべき高齢者の”葉っぱビジネス”!でもお伝えしたことがあります。
中尾さんは、この映画に出演したことで老後への考え方が変わったといいます。
葉っぱで商売になるということが分かって、みんながやり始めたらなんと老人ホームに入っていたおじいちゃん、おばあちゃんも寝たきり老人だった人もベッドから離れて商売を始めたといいます。
その結果、老人ホームを廃止したというのです。
こうした状況について、中尾さんと司会の阿川佐和子さんの会話は次のように進んでいきます。
(中尾さん)
「だって、お金が儲かるんだもん。」
「それも半端なお金じゃないから。」
「何千万(円)とかって入ってきちゃうから、孫に家を建ててやるのにおじいちゃん、おばあちゃんがお金出してやったって言うから、いくらって言ったら1000万(円)とかって。」
「寝てる場合じゃないもの。」
「実際、そこで撮影やってたんでエキストラはみんな土地の人なの。」
「明るいのよ、はつらつとしているし、」
「で、人間ってこういう目的とか、自分が世の中の役に立っているっていう意識があれば元気になれるんだと思って、これちょっと考え方変えなきゃなあと思った。」
(阿川さん)
「私も報道の仕事をしている時に、老人の自殺の多い町に行ったんですよ。」
「なんで自殺したくなるかっていうのをいろいろリサーチしてみたら、もう自分を必要とされていないと自覚すると、ここにいると邪魔だろうと思って命を絶つんですよ。」
「だから、ずうっと例えば孫のお弁当を作っていたのがおばあちゃんの役割だったのに、「おばあちゃん、もうやんなくていい、そこでテレビ観ていればいいから」と言われちゃうとダメだと。」
(中尾さん)
「そうなの、それは親切じゃないのよ。」
「もうそれが苦痛なんですよ、やることがないっていうのは。」
「私の父親が93歳まで生きて、一緒に暮らしてたんですけど、元気だったんですよ。」
「だけど、何が辛いって、朝起きて今日一日何もやることがないっていうのが一番苦痛だって言ってましたね。」
(阿川さん)
「で、そういう人たちに今はデイケアシステムとかここでやることあるでしょって言うけど、男の人は特になじまないんですってね。」
「それまで部下なんかを使っていて社長とか言われていたのに、「はい、おじいちゃん、手をつないで下さい」みたいなことを言うとプライドが許さなくて行きたがらないって話を取材で聞いたことがある。」
(中尾さん)
「そうなんですよ。」
「だからね、「人生、いろどり」の映画を終えて、「ヘルパーズ」っていう(中尾さん演じる大物タレントが介護士を目指して奮闘する)ミュージカルをまず作ったんですよ。」
「それはヘルパーになってみなさんの役に立つっていうね。」
「それで、いろんな老人ホームなんかに行くと、違うなあっていう、自分もそっちに向かってんだけど、いやいやちょっと(ここには入りたくない)とこばっかりなんですよ。」
「そしたら、今自分が元気なうちに自分の理想郷みたいなところを作りたいと思ったわけ。」
「それで、「ヘルパーズ」っていうのを6年間ぐらいやったんですけど、ある日はたと気がついて「ヘルパーズ」じゃないよ、高齢者のためにって思っていたのがいやいや私自分もそっちなんだと思ったわけ。」
「それで、(ミュージカルの内容を変えて、デイサービスに通う高齢者たちを描いた中尾さん主演・プロデュースの)「ザ・デイサービス・ショウ It’s Only Rock’n Roll」(2015年)っていうのを作ろうということになって。」
「で、老人ホームなんかに行くと、唱歌とか歌ってるわけ。」
「でも、ちょっと待ってよって。」
「私たちの若い頃のあれ(歌)はビートルズやプレスリーの世代なんですよ。」
「それで育って来てるんだから、もう唱歌とかなんとか逆に知らない。」
「で、ロックバンドを作ったんですよ。」
「実際、演奏するんですよ、みんな(「かしまし娘」で活躍されていた庄司 花江さんなど高齢の出演者)で。」
「最初は仕事として企画したんだけど。これが本当に私がやりたかったデイサービスと思ったんですよ。」
「ヤング@ハートっていう、アメリカで75歳以上しか入れないっていう(平均年齢80歳の)コーラスグループあって、ロックなんですよ。」
「世界中公演して回ってるんですよ。」
「で、(公演から)帰ったらそういう施設なんかに戻ってとかって言うんだけど、それがちゃんと仕事になって。」
「だから、もう生きがいが全然違うじゃん。」
「で、来年また新しいミュージカルやろうと思ってるんです。」
「それは「レビュー」。」
「金井 克子さんと前田 美波里さんと。」
「だから、国にも言いたいんだけど、みんなね、若い頃に身に付けたものとかあるじゃないですか、それぞれが。」
「みんなまとめて収容するんじゃなくて、小さい区切りでここはこういうことが得意な人というふうにすればいいと思うのね。」
「あと、やっぱりビジネスを作ってあげないと。」
「だって、ビジネスしたら、お金儲かったら税金も払うのよ。」
「で、介護する人も手がかからないし、本人も楽しいし。」
「(今が一番人生で楽しいという噂について、)だってさあ、ここまで来れば誰も文句言わないじゃない、何やったって。」
「だから、今一番楽しいですよ。」
「(中尾流の老後の楽しみ方についての1番目は、)苦手だったこと、避けていたことにあえて挑戦すること。」
例えば、字が汚いから返事も書けないというので習字を習ったり、料理が出来なかったので普通に家庭料理を習っても今更誰もビックリしないので雑穀料理を習い始めたといいます。
「(二番目は、)話したい人には躊躇せずに話しかける。」
例えば、新幹線で隣に座っていた全く知らない人にも話かけるといいます。
実際に、たまたま乗り合わせた瀬戸内寂聴さんにも話しかけたといいます。
「(苦手なことに挑戦して何がどう変わったかという問いに対して、)一番版大きいのはいろんな人に会える。」
「十代からこの世界でしょ、(なので)全然違う世界の人と会うチャンスがない。」
「で、全く違う世界の人と出会って、いろんな人から聴くことで(脳の活性化になるような。)」
「だから、年取ったらまず一番は明るいことですね。」
「もう、少々のことじゃ何失言したって、「ばあさん、何言ってんだ」ってふりますから、ボケたふりしていいたいこと言う。」
「(番組の最後に、「ザ・デイサービス・ショウ It’s
Only Rock’n Roll」での高齢の出演者の頑張りを引き合いに出して、)だから、本当に何もしなくていいっていうのは親切じゃないんですよ。」
「最後の最後までね、こき使わなきゃ。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
私も実家の親の件で、介護老人保健施設を何度か訪れることがありますが、番組でも紹介されているようにあまり元気のなさそうな高齢者の姿を目にします。
そして、この番組を観てから、老人ホームが廃止されるくらいに高齢者が趣味やビジネスで元気になれるような社会が実現したらどんなに素晴らしいかと思っています。
そして、実際に徳島県上勝町では“葉っぱビジネス”により高齢者が元気に暮らせる社会を実現しているのですから、決して夢ではないのです。
ここまでいかなくとも、せめて2世帯住宅などでも家事の分担でおじいちゃん、おばあちゃんにも一定の役割があったり、あるいは趣味やボランティア活動を通して自分が家族や社会から必要とされていると高齢者が実感出来るように暮らせるような社会であって欲しいと思います。
いずれにしても、高齢者に限らず、相手が本当に何を望んでいるのかを確認しつつ“思いやりの精神”で自分の望んでいることと折り合いを付けつつ、お互いに助け合い、あるいは補い合うことにより、お互いに少しでも暮らしやすい社会であって欲しいと思います。
単純に考えても、少子高齢化が進む中で、まだまだ元気な高齢者のパワーを活用しないのは高齢者にとっても社会にとってもとてももったいないと思うのです。
まさに、中尾さんのおっしゃるように高齢者に何もさせないのは親切ではないし、社会にとっても大きな損失なのです。