2016年07月09日
プロジェクト管理と日常生活 No.444 『舛添都知事の辞任から見えてくること その2 政治活動の“見える化”の必要性』

私は都民ではありませんが、アイデアよもやま話 No.3413 舛添都知事の政治資金支出にみる政治家のあり方!でもお伝えしたように今回の舛添都知事の辞任に関してはいろいろと考えさせられました。

そこで、プロジェクト管理の基本的な考え方を通して、私なりに舛添都知事の辞任から見えてきたことを4回にわたってご紹介します。

3回目は、政治活動の“見える化”の必要性についてです。

 

前回、舛添都知事の辞任のような問題が起きないような対応策についてお伝えしました。

しかし、政治資金規正法の改定や都議会自らの仕組みの見直しなどはすぐには手が付けられそうもありません。

そこで、今回は“見える化”をキーワードに絞った具体的な対応策についてご紹介します。

 

これまでプロジェクト管理と日常生活 No.394 『国の政策にも求められる数値化目標による”見える化”の必要性』などで、様々な問題の解決やある目標を達成するプロセスにおける“見える化”の必要性についてお伝えしてきました。

“見える化”とは、具体的な数値化などによる状況把握です。

今回の東京都の舛添都知事の辞任報道に接して、あらためて一人一人の政治家の活動の“見える化”の必要性を感じました。

それぞれの政治活動が常に“見える化”されていれば、政治家の不正や不適切な活動の防止、およびより良い政治の維持が図られると思うのです。

政治家の良し悪しは弁舌さわやかなどによるイメージや人気で測られるのではなく、過去の政治活動の実績や選挙公約の内容、およびその実現可能性という具体的な内容で測られるという状況を定着させることが大切なのです。

また、こうした状況により、政治家は選挙区内での様々なイベントなどへの参加に労力を費やさず、政治家としての本来の活動に邁進することが出来るようになります。

 

さて、相次ぐ政治とカネの問題ですが、今政治資金をめぐる新たな取り組みに注目が集まっています。

以下は、6月11日(土)放送の「報道特集」(TBSテレビ)および関連ネット記事からの内容です。

学生をインターンシップとして国会議員らの事務所に派遣する東京のNPO法人「ドットジェイピー」が中心となった「政治と国民を近づける会」が専用サイト「ラポール・ジャパン」を6月3日に公開しました。

現職の国会議員が関係する約2000の政治団体の収支報告書に記載された情報をデータベース化(2014年分)したのです。

例えば、安倍総理の名前で検索すると、関連する政治団体の収入と支出がグラフで表示されます。

また、政治資金の用途を検索することも出来ます。

これまでインターネット上に公開されていなかった情報についても都道府県から収支報告書を直接取り寄せるなどして一括して検索出来るようにしたのです。

一人の政治家が関係する複数の政治団体が総務省と都道府県にバラバラに収支報告書を提出しており、これまで全体像が見えにくいという問題があったのです。

ところが、全てを電子データとして集め、情報を連結決算にしてより正しい情報を把握することが出来るようになるとNPO法人「ドットジェイピー」では期待しています。

 

政治家のカネの流れを可能なかぎり“見える化”しようとするこの取り組みをどのように活用出来るのかについて、日本大学法学部の岩井 奉信教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「もし舛添さんが国会議員をお辞めになって都知事になる時にこのサイトがあれば、国会議員時代の収支はどうだったかというのをクリック一つで見ることが出来るわけですね。」

「で、こんなモノをいろいろ買っているぞというのも出てくることになりますからですね、やはりこういったような問題がもっと早い段階で出てきた可能性もある。」

「逆に言えば、こういうサイトがあればあんなお金の使い方はしなかったんじゃないだろうか、そういう抑止力にもなったのではないかなあという感じもしますよね。」

 

今回ご紹介したようなサイトがあれば、少なくとも政治家の政治資金の支出の妥当性の判断が出来るようになります。

しかし、こうした作業も一般有権者が個々に行うのはとても難しいと思います。

そこで、マスコミやNPO法人などが、こうしたデータに加えて個々の政治家の過去の政治活動の実績や選挙公約の実現可能性などを分析し、ミシュランガイドのように第三者として客観的に5段階などでの評価した結果を公開すること、すなわち“見える化”することが求められます。

また、こうした“見える化”はマスコミなどによって評価結果が多少異なってもかまわないのです。

競争原理が働き、いずれより適切な“見える化”に集約されていくからです。

このような“見える化”により、有権者は単なるイメージではなく、候補者の実像を把握したうえで投票に臨むことが出来るようになります。

一方、政治家も緊張感を持って政治活動に邁進することが出来、しかも実績を積み上げれば正当に評価され、それが励みになるのです。

 

もし舛添さんが都知事繊に立候補した時にこうした“見える化”がなされていれば、恐らくその時点で舛添さんの弁説さわやかな演説と過去の実績とのギャップに有権者は舛添さんに信頼感が持てず、多くの有権者は舛添さんに投票していなかったと思います。

それ以前に、そもそも舛添さんは“見える化”されているご自身の過去の実績から立候補していなかったかもしれません。

あるいは、与党である自民党や公明党も舛添さんを推薦することもなかったかもしれません。

 

こうした“見える化”がなされないままでの選挙では、いつまで経っても私たち有権者はマスコミによる断片的な情報に頼るか、あるいは候補者の所属政党やイメージで投票する状況が続いてしまうことになるのです。


 
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