2016年07月06日
アイデアよもやま話 No.3435 パナマ文書から見えてきたこと その3 タックスヘイブン問題と解決への道筋!

つい最近までパナマ文書が世界的に大きな話題となっていました。

そこで、パナマ文書関連について、3つのテレビ番組を通して3回にわたってご紹介します。

3回目は、1回目、2回目の内容と一部重複しますが、タックスヘイブン問題と解決への道筋についてです。

 

4月27日(水)放送の「視点・論点」(NHK総合テレビ)で「タックスヘイブン問題と解決への道筋」をテーマに取り上げていたのでご紹介します。

なお、今回の論者は横浜市立大学の上村 雄彦教授です。

 

タックスヘイブン(租税回避地)とは、「そこにお金を持っていけば、税金を払わずに済み、名前なども公開されずに、好き勝手にお金の出し入れできる国や地域のこと」を指します。

 

タックスヘイブンにペーパーカンパニーを作り、そこにお金を移して本国で課税されるのを免れるわけですが、世界の銀行資産の半分以上がタックスヘイブンを経由して送金され、国際的な銀行業務や債券発行業務の約85%がタックスヘイブンで行われています。

タックスヘイブンの利用者は、「これは合法だし、節税対策だ」と主張します。

そこで、上村教授は、脱税、節税、租税回避の違いについて以下のように解説されています。

まず、脱税とは、本来納めるべき税金を納めないことで、勿論、違法です。

例えば、1億円の所得に対して5千万円の税金がかかったとします。

それを納めない、あるいはごまかして少なく申告するというようなことを指します。
それに対して節税は、住所や本社を他国に移し、本国では納税しないことで、合法です。

例えば、日本は税金が高いと考えて、税金の安い香港に住所や本社を移すとします。

もし香港での所得税が1千万円であれば、4千万円を節税することができます。

この場合、日本に税金を納めなくても、合法です。
さて、問題は租税回避です。

これは、住所や本社を「形だけ」他国に移し、本国では納税しない形だけ「合法」の行為を指します。

こうすることで、高額の所得や財産があっても、本国にも、どこにも納税しないで済むのです。

このように、タックスヘイブンは大きな問題を孕んでいますが、タックスヘイブンを利用するようなお金持ちや大企業が、そもそもなぜお金持ちになったり、会社を大きくできたのかという理由を考えてみましょう。
そもそも税は人類が編み出した一つの知恵で、みんながお金を出し合うことによって支え合う仕組みです。

政府は集められたお金を用いて医療、教育、福祉を整え、社会も安定し、モノやサービスを買ってくれる消費者が誕生します。

そして、彼らがモノやサービスを購入してくれたから、企業は発展し、お金持ちはお金持ちになることができたのです。

その大企業やお金持ちが租税回避するということは、彼らは社会からの恩恵を受けるだけ受けていながら、その義務や責任を回避し、自分たちが豊かになれた社会の土台そのものを掘り崩している、ということを意味します。
一方、ほとんどの庶民は、税は源泉徴収され、租税回避はできません。

ということは、富裕層や大企業が租税回避した「しわ寄せ」が庶民に降りかかることになります。

これが格差を拡大します。

人々が「こんなことは不公平で不公正だ」と声をあげるのも無理はありません。

タックスヘイブンの一番の特徴はその秘密性にあります。

これは、悪いことをして稼いだお金であっても、タックスヘイブンを通れば「きれいな」お金になって戻ってくるというマネーロンダリングの温床にもなっています。
さらに、タックスヘイブンに秘匿されている資金の大きさです。

タックス・ジャスティス・ネットワークによると、その額は実に2310兆円〜3520兆円です。

日本の国家予算はおよそ100兆円ですので、仮に3000兆円で計算すると、日本の国家予算の30倍のおカネが裏経済にまわされて実態が隠されているということになります。
この秘匿されている資金にきちんと課税すれば、年間21兆円〜31兆円の税収が上がると試算されています。

ちなみに、日本の企業によるケイマン諸島への投資残高は63兆円で、アメリカに次いで2番目の大きさです。

もしこれに消費税と同じ8%を課税すれば、5兆円の税収が得られ、それは消費税の2%相当します。

このタックスヘイブン問題ですが、解決策はあるのでしょうか?

もちろん簡単には解決できない難しい問題ではあるのですが、その中で今重要な対策として注目されているのが、グローバル・タックスです。

つまり、グローバル化した地球社会を一つの「国」とみなし、地球規模で税制を敷く政策です。

 

もう少し詳しく言うと、3つの話に分類できます。

まずは、「漏れを防ぐこと」、つまりタックスヘイブン対策で、情報の透明化が鍵になります。次に、タックスヘイブン税など実際に税金をかける議論です。

最後に、税をかけ、お金を集め、使うための仕組みを創る議論があります。
解決に向けてできることは、まず各国の税務当局が、タックスヘイブンにある口座情報を自動的に交換できるシステムを構築することです。

現在OECO(経済協力開発機構)と関連する国際機関が中心となって、その実現に向けて動いています。

次に、明らかになった情報に基づき、規制を行う、あるいは、その情報に基づき、課税を行うことです。

そのことにより、タックスヘイブンを利用する「旨み」を減らし、徐々に利用者を少なくしていくことで、長期的にタックスヘイブンをなくしていくことが可能となると考えられます。

更に、タックスヘイブンに移されたお金の多くはマネーゲームに回されています。

そこで、マネーゲームをすればするほど、つまり金融取引をすればするほど税金がかかる金融取引税を併せて実施すれば、投機を抑えつつ、税収を上げることができるようになります。
例えば、日本で金融取引税を実施すれば、最大3兆円の税収が上がるという試算を、グローバル連帯税推進協議会は行っています。

先ほどのタックスヘイブン課税と合わせると、8兆円の税収が得られる可能性があるのです。

しかも、課税されるのは私たちではなく、タックスヘイブンを使ってマネーゲームに興じているお金持ちと大企業です。
タックスヘイブンの闇を明らかにして、取るべきところから税を取り、税収を途上国や私たちの暮らしの向上のために使うことができます。

つまり、タックスヘイブンの問題は、遠い海外の問題ではなく、実は日本に暮らす私たちにも直結する重要な問題なのです。
パナマ文書をきっかけに、多くの方々がこの問題に関心を持ってくださることを期待します。

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、以下に要約してみました。

・税は人類が編み出した一つの知恵で、みんながお金を出し合うことによって支え合う仕組みであること

・世界の銀行資産の半分以上がタックスヘイブンを経由して送金され、国際的な銀行業務や債券発行業務の約85%がタックスヘイブンで行われていること

・富裕層や大企業が租税回避した「しわ寄せ」が庶民に降りかかり、これが格差を拡大していること

・タックスヘイブンに秘匿されている資金は2310兆円〜3520兆円と見られていること(日本の国家予算およそ100兆円のざっと30倍ほどのおカネが裏経済にまわされている)
・この秘匿されている資金にきちんと課税すれば、年間21兆円〜31兆円の税収が上がると試算されていること

・日本の企業によるケイマン諸島への投資残高は63兆円で、アメリカに次いで2番目の大きさであること

・もしこれに消費税と同じ8%を課税すれば、5兆円の税収が得られ、それは消費税の2%に相当すること

 

そもそも税は人類が編み出した一つの知恵で、みんながお金を出し合うことによって支え合う仕組みなのですから、公平でなければならないのです。
ところが、タックスヘイブンはこの公平な税の仕組みに風穴を開けており、それが様々な問題を引き起こしているのです。

要するに、タックスヘイブンは、不正行為でなくとも公平な納税、あるいは公平なビジネス競争の観点から大変大きな問題なのです。

こうしたタックスヘイブン問題の解決策として、上村教授はグローバル・タックス(グローバル化した地球社会を一つの「国」とみなし、地球規模で税制を敷く政策)の導入を提唱されています。

そして、グローバル・タックスは以下の3つの要素に分けられます。

・情報の透明化

・タックスヘイブン税など実際の税金のかけ方

・税をかけ、お金を集め、使うための仕組み

 

ということで、消費税を上げなくて済むためにも早急に国際的な協力のもとにグローバル・タックスの仕組みを確立していただきたいと思います。


 
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