2016年06月25日
プロジェクト管理と日常生活 No.442 『舛添都知事の辞任から見えてくること その1 なぜ不適切な政治資金の支出に至ったのか』

私は都民ではありませんが、アイデアよもやま話 No.3413 舛添都知事の政治資金支出にみる政治家のあり方!でもお伝えしたように今回の舛添都知事の辞任に関してはいろいろと考えさせられました。

そこで、プロジェクト管理の基本的な考え方を通して、私なりに舛添都知事の辞任から見えてきたことを4回にわたってご紹介します。

1回目は、現状把握、すなわちなぜ舛添さんが不適切な政治資金の支出に至ったのかその経緯についてです。

 

6月17日(金)放送の「特報首都圏」(NHK総合テレビ)のテーマは「緊急報告 舛添都知事辞職」でした。

番組の中で、政治資金収支報告書などを分析し、舛添都知事のカネをめぐる問題を指摘する研究者を取り上げていたのでご紹介します。

 

日本大学法学部の岩井 奉信教授は、舛添都知事が参議院議員時代に政治資金の使い方の変化に注目しました。

舛添さんは2001年に国際政治学者から参議院議員に初当選を果たし、その後9年間自民党に在籍していました。

岩井教授は、自民党時代はつましい支出だと指摘しています。

1万円を超える書籍や絵画の購入記録はありませんでした。

翌年の2002年、舛添さんは新党「改革」を結成し、代表に就任しました。

ここから報告書に変化が表れました。

舛添さんの資金管理団体の政治資金収支報告書(2012年)では書籍・資料代の名目で美術品関係の支出が沢山出てきました。

その購入先の欄にはギャラリーや画廊の名前が並んでいます。

美術品を数多く購入していたのです。

資料代で美術関係がこれほど多く出てくるのは珍しいと岩井教授は指摘しています。

資料として購入した中には、コミックや子ども向けのクイズ本も含まれていました。

党所属の一国会議員から党首になった舛添さんは、この変化が公金への意識を薄れさせたのではないかと岩井教授は指摘しています。

 

そして2014年、舛添さんは“世界一の福祉都市”を掲げて立候補し、東京都知事に就任しました。

都知事就任直後の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で、舛添さんは次のようにおっしゃっています。

「出来るだけ少ないコストで出来るだけ大きな成果を上げる。」

 

都の予算は効率的に使うと話していました。

しかし、週末になると都の公用車を使って100km離れた湯河原の別荘に通うようになりました。

自宅のある世田谷区を経由して別荘に移動する記録も残っていました。

“公私混同”ではないかという批判に対して、舛添さんはルールには反していないと繰り返し主張しました。

このことについて、岩井教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「知事というのは現代の殿様と言われるんですよね。」

「昔は知事から国会議員になるというのが一般的でしたけど、最近国会議員を辞めて知事になる方が次々に出ている。」

「動かせるお金も人も膨大なものになるわけですから、そういう中でだんだんお金の使い方とか人の使い方がどんどんルーズになっていったんではないかなってことが想像されますよね。」

 

更に、東京オリンピック・パラリンピックを控えて繰り返された高額な海外視察、スウィートルームでの宿泊やファーストクラスでの移動が批判を浴びる結果になりました。

公金に対する意識が次第に薄れていった舛添さんは、都民の感覚とかけ離れた末の辞職でした。

 

なお、舛添さんが特に力を入れるとしていたのは待機児童対策で、都知事就任当初には4年間で8000人をゼロにしたいと訴えていました。

しかし、この公約はまだ果たされていません。

 

以上、番組の内容をご紹介してきましたが、ここから読み取れるのは舛添さんの政治家としての行動の変化です。

政治家になった当初は適切な行動をしていたのが、政治家を取り巻く環境、すなわち政治家としての特権や政治資金規正法などの実態を把握することによって、不法でない範囲でその特権を最大限に活かそうというふうに変化し、だんだん庶民感覚からかけ離れていったのです。

 

今回、舛添都知事の度重なる過去の不適切な行為がマスコミや国民から集中砲火を浴びて辞任に至りました。

しかし驚くことに、舛添都知事は辞任に伴いこれまでマスコミや多くの国民から疑問視されてきた“不適切な支出”に対しての説明責任を果たさず沈黙を守り続けています。

また、それに対して、都議会は今回の問題に対してこれ以上の追求をせず、終止符を打ってしまっているようです。

このような状態では、再発防止策の検討は期待出来ません。

都議会は、猪瀬都知事、そして今回の舛添都知事の辞任と2回も都政の仕組みの見直しの機会を見逃してしまったのです。

ということは、今後とも都知事をめぐる同様の問題が起こる大きなリスクが残されたままとなってしまうのです。

また、都議会が真剣に再発防止策を検討しないということは、他の都議会議員の方々の中にも規模の大小はあるものの同様の行為がこれまであったのではないかと疑われても仕方ありません。

 

ということで、今回はなぜ舛添さんが不適切な政治資金の支出に至ったのかその経緯についてお伝えしましたが、次回は選挙をめぐる問題、および問題対応策についてお伝えします。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています