2016年06月21日
アイデアよもやま話 No.3422 “ちょい高”商品が売れる理由から見えてくること!

4月10日(日)放送の「シューイチ」(日本テレビ)で“ちょい高”商品が売れる理由について取り上げていました。

そこで、番組を通して“ちょい高”商品が売れる理由から見えてくることについてお伝えします。

 

衣料専門店チェーンのしまむらが今期の決算を発表しましたが、3期ぶりに経常利益がV字回復を遂げ、来期は更に伸びると予想されています。

その理由について、経済ジャーナリストで作家の渋谷 和宏さんは、次のように分析されています。

これまでしまむらの強さは安さだったのですが、今回の復活の原動力の一つとなったのは、これまでとは180度異なり“ちょい高”商品のヒット、つまりこれまでよりも高い商品を出したことだといいます。

例えば、これまでのしまむらのパンツの中心価格は1900円ですが、今ヒットしているのはそれより1000円高い2900円の“サラッと快適”な汗でベタつきにくい素材を使っており、ヒンヤリ感じられる加工がされているパンツなのです。

また、既に販売は終えていますが、冬物で裏地に高密度の起毛を使った“裏地あったか”パンツ、3900円も大ヒットしたといいます。

 

しまむら以外にも“ちょい高”でヒットしている商品があります。

例えば、小規模な醸造所で製法や味にこだわって作られたクラフトビール(価格は普通のビールの3倍ほど)、高級レトルトカレー、あるいはフレームにべっ甲などの高級素材を使ったメガネなどが売れているといいます。

 

こうした“ちょい高”商品が売れる理由について、2つあると渋谷さんは分析されています。

一つは“節約疲れ”です。

もう一つはこつこつ節約してきた結果、日本人はお金持ちになっているということです。

個人の持っている金融資産総額(日銀発表)が1741兆円(2015年12月末)で過去最高というのです。

 

こうした“節約疲れ”、そして蓄えが少し増えたことの2つが多少高くても欲しい商品を買いたいという潜在的な欲求を満たすことにつながったというわけです。

更に、消費動向は“安さ納得消費”から“価値納得消費”へと変化しているといいます。

つまり、品質や他にない特徴、機能など価格以上、あるいは価格と同等の価値があると納得すれば購入するということです。

つまり、企業が上手に消費者を説得してあげれば多少高い商品でも手を伸ばすという動きが出て来ているというのです。

 

このように、価値と価格のバランスが重要ということですが、このバランスの取り方は難しいといいます。

このバランスの取り方が非常にうまかったのがカジュアル衣料品大手のユニクロだったのです。

ところが、3月の国内の既存店の来客数は前年同月比で8.6%も減ってしまいました。

その理由は、2014年以降円安で原材料の輸入コストが上がり、それを反映させて2回値上げした結果、バランスが崩れてしまったことにあるというのです。

 

ということで、業績絶好調企業には消費者が納得を得る秘訣があると渋谷さんは結論付けています。

 

今、全体的に個人消費は低迷しており、その大きな理由は消費増税と言われていますが、それだけではなくて、買い物を楽しみたい“節約疲れ”をしている消費者をまだ企業が納得させていないということもあるのではないかというのです。

 

こうした観点からすると、家具雑貨専門店の大手で業績好調が続いているニトリのキャッチフレーズ「お値段以上ニトリ」はまことに的を射ています。

 

以上、番組のご紹介をしてきましたが、私が特に注目したいのは個人の持っている金融資産総額(2015年12月末)が過去最高という事実です。

今、格差拡大に注目が集まっていますが、金融資産総額が増えているということは潜在需要の総額も増えていることを意味しています。

 

経済の原動力の源は需要です。

需要があるからこそその需要に応える商品やサービスを提供する企業が存続出来るのです。

しかし、その需要は消費者の生活レベルに応じて変化していきます。

生活物資の不足している発展途上国の需要の主な決定要因は“低価格”です。

しかし、生活物資の一通り普及した先進国の需要の主な決定要因は今回ご紹介したような“消費者による価値納得”へと変化していきます。

ですから、当然発展途上国の経済成長率は生活物資一般が一通り行きわたるまで高い推移が続きます。

しかし、生活物資一般が一通り行きわたった先進国では、低価格商品が作ったそばから売れていく状況とは一変して、消費者が価値を納得してくれる商品を提供しなければ商品は売れないのです。

 

このように見てくると、今先進国の置かれている状況が見えてきます。

世界的に金利が下がっています。

日本でも日銀が経済成長を支援するために歴史的な低金利政策を実施していますが、期待するほどの効果が出ていません、

その理由は、生活物資一般を既に揃えている一般消費者が更に買いたいと思うような商品やサービスが企業から提供されることが少なくなっていることにあると思います。

一方で、生活物資一般を既に行きわたっている中で、“消費者による価値納得”商品を提供し続けることは企業にとってとても大変なことです。

ですから、特に先進国相手のビジネスを展開する企業にとって、消費者の潜在的な欲求に寄り添った商品やサービスを提供するためのアイデアこそが企業存続の決定要因だと思うのです。


 
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