かつてのアイドル、歌手・タレントのアグネス・チャンさんによる「子連れ出勤」の是非をめぐる論争があり、1988年の新語・流行語大賞では、「アグネス論争」が流行語部門・大衆賞を受賞しました。
この「アグネス論争」を記憶されている方もいらっしゃると思います。
そうした中、3月28日(月)放送の「白熱ライブ ビビット」(TBSテレビ)でこのアグネスさんの教育法について取り上げていたのでご紹介します。
アグネスさんは、子どもが小さい頃、常に職場に子どもを連れてきたといいます。
その理由について、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「1歳半までは、子どもをそばに置いて育てたいと思ってたんですね。」
「というのは、1歳半まで子どもは初めて経験することが多いんです。」
「例えば首がすわったとか、寝返りしたとか。」
「だから特定の人間がずっとそばにいてあげて、眠かったら寝かしてくれる、お腹が減ったら食べさせてくれる、そういうような信頼できる人物がとても必要なんですね。」
(もう一つの理由について)
「大人の会話の中に子どもたちを入れるんですね。」
「子どもだから黙ってろっていうことはやらない。」
「それによって聴く耳も育てられるし、表現力も考えをまとめる力も育てられるので、子どもたちが小さい頃からTPO(時と場所と場合)を守れるようになったんですね。」
以上を要約すると次のようになります。
1.常に一緒にいて信頼関係を作る
2.大人の会話に入れ、マナーを体で覚えさせる
このように、アグネスさんは世間から批判されても子連れ出勤を続け、自己流の子育てを貫き通したのです。
その後1989年、スタンフォード大に留学し、大学に子どもを連れていくなど、ここでも常に子どものそばにいることを大事にしました。
この時のことについて、アグネスさんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(大学に)連れてって、キャンパスの中で預けるところがあるんです。」
「で、授業の間におっぱいをやりにいって、また預けて次の授業に。」
「夜の授業になると、(子どもを)連れていってもいいって言われて、その時結構惚れ込みました、いい大学だなって。」
「自由だし、いろんな人を受け入れてくれる、これ未来系の大学だなって思って。」
やがて、アグネスさんはスタンフォード大学院で1994年に教育学博士号を修得し、学んだ学習法を3人の息子たちに実践しました。
その結果、息子3人は共に世界トップクラスのスタンフォード大学に合格したのです。
そんなアグネスさんに、番組では町のママたちが持つ子育ての2大お悩みをぶつけてみました。
(親が黙ってても子どもが自分から率先して勉強してくれる方法についての問いに対して)
「1番大切なことは、文字を好きになる子にしたいと思ったの。」
「字を読みたい子にしたい。」
「絵本を読みました。」
「ただ本を読んであげるだけでなく、パパのところに絵本の物語を説明させる。」
「理解出来なければ説明出来ないから、どのくらい理解しているかチェック出来るんですね。」
「説明出来る、頭の中にいろんなことをまとめる練習にもなるんですね。」
(苦手分野の克服方法について)
「苦手な科目をやらせるよりは、得意な科目をとことん伸ばす。」
「そうすると、自信が付くんですよ。」
「で、勉強する習慣も付くから他に得意じゃない分野も付いてくるんですよ。」
以上を要約すると次のようになります。
1.文字を好きにさせること
絵本を読み聞かせた後、本の内容を知らないお父さんに説明させる
一から説明することがプレゼンテーションの訓練になる
2.苦手な科目は放っておき、得意な分野を好きなだけ学習させること
得意な科目を勉強することで自信が付き、気持ちに余裕が出来て苦手な科目を自分から手を付けるようになる
ちなみに、「アグネス論争」は当時アメリカでもちょっとした話題になり、スタンフォード大学のある教授がうちの大学で勉強しないかとアグネスさんに勧めたことがアグネスさんの留学につながったといいます。
また、子どもの反抗期に親は悩まされますが、アグネスさんはそもそも子どもの反抗期は存在しないと考えているといいます。
息子さんが9歳くらいになった時、アグネスさんは次のように言い聞かせたといいます。
「ちょっとイライラすることがあったら、それはホルモンのせいだよ。」
「子どもが思春期に入ることによって男性ホルモン、女性ホルモンのバランスでイライラするだけで、あなたが悪いわけでもない、親が悪いわけでもない。」
「だから、反抗期というものはないんだよ。」
このように息子さんを諭すことによって、3人とも反抗期はなかったといいます。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
反抗期についての息子さんへの説明は、全ての子どもたちに有効かどうか分かりませんが、アグネスさんの教育法はとても理に適っていると思います。
特に、少子化対策の一環として、子育て中のお母さん方が安心して仕事の出来る環境として、お母さん方が働いているすぐそばに子どもを預けられることはお母さん方にとっても子どもにとっても安心出来ます。
一方で、子どもの鳴き声など騒がしい声は周りで働く人たちの集中力の妨げになります。
ですから、こうした周りへの配慮に対しての工夫を凝らしながらも、子連れ出勤以外にもフレックスタイムや在宅勤務の導入など、安心して子育て出来る環境作りが少子化対策の一環としてとても重要だと思うのです。
いくら国が少子化を問題視しても、夫婦が安心して子育て出来るような環境が整備されていなければ、少子化問題の根本的な解決にはつながらないのです。
また、アグネスさんの実践された本の読み聞かせは、自分の頭で考えることの出来る大人へと成長させるうえでとても理に適っていると思います。
今後ともAI(人工知能)やロボットの普及に伴い、私たち人間のやるべき仕事の分野は否応なくどんどん頭脳労働へとシフトしていくからです。
そうした状況では、自分で考える発想力がとても重要になっていくのです。
なお、プロジェクト管理と日常生活 No.440 『ヨーロッパを代表する知性の指摘する課題・リスクとその対応策 その3 日本に求められる役割』でもお伝えしたように、日本の少子高齢化問題について、経済学者で思想家でもある、ヨーロッパを代表する知性のジャック・アタリさんは以下のようにおっしゃっています。
「日本で高齢化社会が進むならそれは自殺行為です。」
「大国としての地位を維持出来なくなります。」
「日本は人口バランスを安定させるべきです。」
ですから、今を生きる私たち日本の大人たちは次の世代、あるいはその次の世代のためにも、政府にばかり頼らず、もっともっと少子高齢化問題に真剣に取り組む必要があると思うのです。