3月17日(木)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)で、新たな価値観で時代を切り拓く若者たちを取り上げていました。
そこで、5回にわたってご紹介します。
1回目は、社会に貢献することで充実感を得たい若者の増加についてです。
バブル崩壊後、低成長が続く日本、雇用環境の悪化や社会保障制度の限界、こうした中で今社会に積み残された課題に向き合う若者たちが次々と登場しています。
大きな時代のうねりの中で、当たり前だったことがそうでなくなり、失われた10年がいつの間にか20年になっていきました。
グローバル化が急速に進み、激しい価格競争の中でコスト意識を強めざるを得なくなった企業は人を減らし、柔軟に人件費を調整出来る非正規雇用を拡大していきました。
大人たちが信じていたことが変わっていった時代、日本の経済成長が下降に転じてから生まれ育った世代は、失われた20年という実感そのものも乏しいと見られています。
内閣府が13〜29歳を対象に行った調査では、将来について明るい希望があると答えた若者の割合は、アメリカ、スウェーデン、イギリス、韓国、フランス、ドイツ、日本という順位で日本は断トツの最下位でした。
内向きで、政治や社会に無関心、社会に傷つけられても自己責任と自分を責めがちな世代と見られがちですが、一方で別な内閣府の調査では20代の半数近くが自分の生活の充実より国や社会のことにもっと目を向けるべきだと考えるようになっています。
社会に貢献することで充実感を得たいという若者が増えていることを示しています。
とは言っても激しい競争、管理の強化、横並びに従わざるを得ない同調圧力といったプレッシャーによって決して声をあげたり、行動がし易いとは言えない社会、そうした中で自ら声をあげ、痛みを乗り越えていくために行動を始めた若者たちがいます。
去年8月、多い時には数万人が集まったデモ、当初10人ほどで始めたデモは社会現象になり、若い世代の力を印象付けました。
この安全保障関連法案に反対するデモを主導した10代、20代の学生団体「SEALDs」の奥田 愛基(アキ)さん(23歳)は、今年明治学院大学の大学院に進学します。
以前は、この社会に諦めに似た気持ちを感じていました。
ところが、東日本大震災の被災地にボランティアに行ったことをきっかけに、社会問題に向き合いたいと考えるようになった奥田さんは、ユーチューブとかで検索して海外のデモを参照したりして、自分たちの想いを大人たちに示したいと友人たちとデモを始めたのです。
奥田さんは、街頭デモで、次のように訴えました。
「おじいちゃん、おばあちゃんは戦争の話をしたがるし、何なんだよそれって、ずっと思ってましたよ、正直ね。」
「だけど、今考えたらそれを聞いてて良かったなと思いますよ。」
等身大の言葉は、ユーチューブなどで爆発的に広がっていきました。
これまで社会に無関心と思われていた若者たちは、声をあげ、大きなうねりとなったのです。
奥田さんは、デモを始めたことについて、次のようにおっしゃっています。
「それが僕的には「諦めること」を諦めるということ。」
「この社会の“痛み”っていうのは空気感とか言えないとか、おかしいと思っているんだけど、それは素直に表現出来ないっていうことなんだと思うんですね。」
「本当に自分の周りのこととか自分の生き方のことを考えたら、それだけじゃいられない。」
今、社会の問題を自分たちで考え、行動する若者たちが増えています。
去年5月、18歳選挙権について審議するために開かれた衆議院特別委員会、推進する立場として与党の参考人として推薦された斎木
陽平さん(24歳)は、高校生を中心に若者の政治意識を高めるための活動を行っています。
今の政治には中高年の意見しか反映されていないと感じているからです。
そうしたイベントの場で、斎木さんは次のように訴えています。
「若い世代が「これは投票に行かないと」って思えるような何かっていうのを、そういうムーブメントはどうやって作れるんだろうか。」
参加していた若者からは、議員の「若者枠」を作ったらどうかといういかにも若者らしい意見が出されました。
これまでに延べ2000人以上の高校生が斎木さんの考えに賛同し、主催するイベントに参加しています。
こうした状況について、斎木さんは次のようにおっしゃっています。
「大人たちに対しての怒りみたいなものはやっぱりありますよ。」
「なんか全部先送りにされているというか。」
「自分自身が「俺はこう思うんだ」というのをちゃんと言っていく中で、ある意味“志の輪”みたいなものが広がっていくのかな。」
以上、番組の内容をご紹介してきましたが、内閣府が13〜29歳を対象に行った調査で、将来について明るい希望があると答えた若者の割合で日本が断トツの最下位というのはちょっとショックでした。
しかし一方で、社会に貢献することで充実感を得たい若者が増えている状況には救われます。
いつの時代もその時代の閉そく感を打破する突破口を切り拓くのは時代の空気に敏感な若者たちだと思います。
ですから、そうした若者たちの行動しやすい環境を作り出すことがこれまでの時代を築いてきた世代の役割だと思います。
今の社会は良くも悪くもこれまで何世代にもわたって営々と築いてきた成果なのです。
そして、これからの社会の将来は今の若者たちの手にかかっているのです。
ですから、将来に向けての世代間のバトンタッチをいかにスムーズに行うかということを世代間でお互いに意識することが大切だと思うのです。