2016年05月20日
アイデアよもやま話 No.3395 仮想通貨が決済手段に!

3月17日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で決済手段として広がりつつある仮想通貨について取り上げていたのでご紹介します。

 

2年前、インターネット上の仮想通貨であるビットコインの取引所、マウントコックスが経営破綻し、この事件でビットコインのイメージは悪化しました。

ところが、政府は3月4日に仮想通貨を決済手段の一つに位置づけることを決めるなど、今再び注目を集めています。

 

三重県鈴鹿市のある主婦の方は、カナダに留学中の娘さんへの仕送りに最近仮想通貨のビットコインを使うようになりました。

娘さんの口座を示すQRコードをスマホの専用アプリに読み込み、送金額を入力して送金ボタンを押せば手続き完了です。

その3分後には娘さんから送金されたとスマホに連絡があります。

こちらの主婦がビットコインを使い始めたのは、送金手数料の安さからです。

これまで何千円だったのが何円になったくらい安いというのです。

以前使っていたゆうちょ銀行の送金手数料は、10万円の送金で2500円(受け取りは別料金)でしたが、ビットコインの送金手数料はアプリ会社などに払う6円だけで済むのです。

 

ビットコインの専用アプリ、coincheckを開発したレジュプレス株式会社(東京都渋谷区)創業時メンバーの大塚 雄介取締役は、ビットコイン最大の特徴のついて、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「世界で海外に送金している方々にとっては非常に安くて簡単で便利に送れる方法。」

「より少額を早く送れるので、そこのところが非常に新しい市場が出来てくると思っています。」

 

では、なぜビットコインを使うと格安に送金が出来るのでしょうか。

従来の一般的な海外送金の場合、複数の金融機関を経由するため、送金額の数%も手数料がかかります。

一方、ビットコインの場合、暗号化されてインターネット経由で送られるために原則無料なのです。

 

ビットコインの普及を目指す大塚さんはある日、NPO法人、グッドネーバーズ・ジャパンを訪問しました。

その目的は、ビットコインでの寄付の紹介です。

スマホで該当のQRコードを読み取って、金額を入力して押すだけで寄付が出来るというのです。

ビットコイン・アプリ「coincheck」を使えば、送金手数料なしに手軽に少額の募金が出来るのです。

 

このNPO法人は、アジアやアフリカなどで12年前から貧しい子どもたちの支援を行っています。

また、東日本大震災の時には、被災地で活動しました。

広報部の飯島 史画さんは、ビットコインを使った募金には多くのメリットがあると感じており、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「海外の団体や個人の方から「寄付したい」と申し出がありまして、銀行振り込みの手数料だったりとかで難しい面もあったんですね。」

「(ビットコインには)ディメリットがないんじゃないかと思います。」

 

現在、ビットコイン売買サービス「coincheck」では、NPOなど8団体に対してビットコインで寄付が可能な仕組みを整えています。

ビットコインを使った寄付のかたちは広がっていて、ロシアに編入されたウクライナ、クリミア半島の人たちがQRコードを掲げて世界に支援を求めたこともありました。

 

ビットコインなどの仮想通貨はどこまで勢いを増すのか、こうした状況について、経済学者で早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口 悠紀夫顧問は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「通貨を巡るこれまでの仕組みが仮想通貨の登場によって非常に大きく変わる可能性があります。」

「人々が銀行の送金システムを使わないで仮想通貨を使う可能性は十分に考えられますね。」

「ただし、銀行もそれを指をくわえて見ているわけではなくて、銀行自体が仮想通貨を導入しようということも既に計画が進んでいます。」

「銀行が自分で仮想通貨の仕組みを作って海外に送金する場合も使うでしょうし、国内での送金に使うことも考えられますね。」

「銀行が対応すれば、逆にこれまでの仮想通貨がつぶされる可能性もあるんですね。」

「どっちがどうなるか分からない。」

 

アメリカのシティバンクをはじめ、バークレイズやゴールドマンサックスなど、国際金融機関40行は2015年9月に仮想通貨の研究会を立ち上げました。

この研究会には日本のメガバンクも参加しています。

銀行は仮想通貨にどのように向き合っていくのか、全国銀行業界の佐藤 康博会長は、ある会合で次のようにおっしゃっています。

「仮想通貨ということそのものが悪ということではなくて、これは社会の利便性を上げるという意味で有用な面もありますし、具体的にどういうサービスが可能になってくるのかお話出来る状態ではないわけですけども、「決済」という観点から見ても十分利便性があるものにつながっていく可能性が見えてきていると。」

 

革命的とされる仮想通貨の技術を巡り、社会は既に大きく動き始めています。

 

なお、日本銀行(日銀)でも3月17日に黒田総裁が日銀内にフィンテックセンターという新組織を作ることを表明したといいます。

中央銀行が自らこうしたセンター作りに乗り出すというのはビットコインなど仮想通貨の存在感が増しているという背景があると見られています。

 

番組の最後に、仮想通貨の将来性について、番組コメンテーターで大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸さんは、次のようにおっしゃっています。

「今は仮想通貨の残高は60億ドルまで増えていて、利用者は1200万人まで来ていると。」

「ですからかなりの勢いで今拡大しているんですね。」

「これからは3つの主体が入り乱れて戦国時代のような状況になってくる。」

「一つは新たな新興企業で、ここは送金手数料が安いということをてこにして市場を拡大していく。」

「他方で、既存の銀行などは送金手数料が高くて、そこがドル箱でしたから手をこまねいていてはいけないんで、そこに乗り込んで逆襲に出てる。」

「3つ目は、例えば中国だとかイギリス、カナダなどが、国だとか中央銀行とかそういう公的なところが乗り込んでいくと、この3つがこれから戦っていくかたちですね。」

 

「規制を強めると信用度は上がるわけですが、自由度は下がってしまう。」

「逆に、自由にすると信用度は落ちるわけですから、この信用度と自由度のトレードオフですね。」

「そのバランスが重要なると。」

 

以前にもお伝えしましたが、インターネットが日本で普及し始めた1990年頃、私はいずれインターネットを通してあらゆる情報が行き来する時代になると直感しました。

そして、その普及のスピードはどんどん加速しており、まさに“情報のビッグバン”が起きていると言えます。

そうした中の一つが仮想通貨であり、これはアイデアよもやま話 No.3379 フィンテック革命 その1 10年後には現金がなくなる!?でご紹介したフィンテック革命の一つの現象と言えます。

特に利用料金の安さから仮想通貨が決算手段として今後普及していくことは間違いありません。

同様に、今後はクレジットカードも仮想通貨に取って代わられる可能性を秘めています。

なぜならば、クレジットカード決済の登録企業は、クレジットカード会社に5%ほどの手数料を支払っているからです。

 

ということで、金融業全般がテクノロジーの進歩、およびその活用により大きな変革の時代を迎えているのです。

ですから、こうした状況の中で最もテクノロジーをうまく活用したビジネスモデルを生み出した企業が新たな業界リーダーとなり得る千載一遇のチャンスなのです。


 
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