最近、フィンテック革命という耳慣れない言葉を耳にするようになりました。
そこで、この「フィンテック革命」について3回にわたってご紹介します。
3回目は、アメリカで急拡大するフィンテックについてです。
2月8日(月)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)のテーマは「ITが変える“お金の未来”
〜フィンテック革命の衝撃〜」でした。
そこで、番組を通してアメリカで急拡大するフィンテックについて以下にお伝えします。
金融サービスの新たな可能性を切り開くフィンテック、急拡大しているのがアメリカです。
きっかけは8年前のリーマンショック、経営が悪化した大手金融機関が貸し渋り、低所得者や中小企業が融資を受けにくくなりました。
これをチャンスと捉えたIT企業が新たな発想で融資などの金融サービスに乗り出したのです。
そのアイデアとは、資金を借りたい人と貸したい人をネット上で仲介する仕組みです。
Funding Circle(会社名も同様)というサイトで、借りたい金額の他、事業内容、売り上げなど、必要な情報を入力し、融資を申請します。
すると、銀行より金利は高いものの約3000万円の融資を受けることが出来たのです。
この会社では、融資の申し込みを受けると、その経営状態を審査し、5段階で格付け、金利は格付けに応じて約5%〜22%に設定します。
資金を貸したい人は、この格付けをホームページで確認し、共感出来る企業に融資します。
リスクはありますが、高い利回りも期待出来ます。
既にこのサイトを通じた融資は1800億円以上に上ります。
世界で3億人以上が利用するツイッターの創業者、ジャック・ドーシーさんもフィンテックの可能性にいち早く気づき、リーマンショックの翌年に新たな会社、スクエアを起こしました。
ドーシーさんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「金融サービスの分野では、我々の目の前に広大な“空き地”が広がっているのです。」
まず手掛けたのは、独自の決済システムです。
ある小型機器をスマホやタブレット端末に取り付けるだけで、クレジットカードが利用出来ます。
どこでもカードが使えるため、小さな店からも人気を集め、およそ200万の事業者が利用しています。
実は、この新たな会社、スクエアは、このシステムを通じて業者の決済のデータも集めています。
これらのデータを活用し、企業への融資まで始めています。
スクエアは事業者の売り上げを日々分析しています。
そして、事業者が資金を欲しがりそうなタイミングで自動的に判定、融資可能な金額と金利をはじき出し、持ち掛けるのです。
スクエアから融資を受けたあるコーヒーショップでは、ある日およそ400万円の融資が可能であるという知らせが突然届きました。
ちょうどコーヒー豆の焙煎器を購入しようか迷っていたところでした。
この店では即座に融資を申し込み、翌日にはおよそ400万円が振り込まれ、焙煎器を購入出来ました。
このコーヒーショップの経営者は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「資金が早く手に入れば入るほど、ビジネスは成功します。」
また、ドーシーさんは、次のようにおっしゃっています。
「これまで銀行が手の届いていなかった人々に融資を実行することが出来るようになりました。」
急拡大するフィンテック、その可能性を評価する金融当局もフィンテックが銀行の経営に打撃を与え、金融システムを揺るがさないか警戒しています。
サンフランシスコ連邦準備銀行のマーク・ゴールド副総裁は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「現在、我々が目にしている技術革新の中には金融のあり方を破壊しかねないものもあります。」
「何が起きているかを監視し、長期的にどんな影響があるのか考えていかなければなりません。」
一方、これまでにない付加価値を提供出来るフィンテックの課題について、番組コメンテーターの日本総合研究所の副理事長、そして金融庁のフィンテックの検討会メンバーでもある翁
百合さんは、次のように指摘されております。
・もう少し時間が経たないと、フィンテックでどのくらいの不良債権が発生するか分からないこと
・個人情報などのセキュリティ管理のレベルアップ
・認証技術の更なる進化
・既存の金融システム破壊リスクへの対応
アメリカを先頭にフィンテック革命は否応なく進んでいきますが、まだ具体的にどのようなかたちに落ち付いて行くか専門家にも分からないようです。
ですから、しばらくの間はいろいろなアイデアが試行錯誤でかたちになっていくと思われます。
しかし、いずれにしても私たちユーザーにとってこれまでに比べてメリットのある方向で動いていくことは間違いなさそうです。
同時に、フィンテック革命に伴うリスクにも十分に注意を払うことが求められると思います。