最近、フィンテック革命という耳慣れない言葉を耳にするようになりました。
そこで、この「フィンテック革命」について3回にわたってご紹介します。
2回目は、大手銀行の取り組みについてです。
2月8日(月)放送の「クローズアップ現代」(NHK総合テレビ)のテーマは「ITが変える“お金の未来”
〜フィンテック革命の衝撃〜」でした。
そこで、番組を通して大手銀行の取り組みについて以下にお伝えします。
これまで送金や決済、融資といった金融サービスを提供出来るのは、豊富な資金とシステムを持つ大手金融機関に限られてきましたが、今フィンテックと呼ばれるITを使った技術革新が大手金融機関が独占してきたサービスに次々と風穴を開けています。
ロボ・アドバイザーという資産運用のサービスも生まれています。
およそ6000銘柄の金融商品の値動きをAI(人工知能)が常にチェック、お客のニーズに合わせて自動的に銘柄を組み合わせて投資してくれます。
これまで資産運用サービスは主に銀行や証券会社の専門の社員が担ってきました。
これをAIで行うとチェック出来る銘柄数が格段に増えます。
人件費を抑えられるため、手数料はその分安く設定出来ます。
主に富裕層が利用していた資産運用のサービスを誰にでも格安で提供します。
こうした動きに対して、日本の銀行もフィンテックの新たな動きに対応を迫られています。
これまで銀行がIT企業に出資したり、買収することについては厳しく法律で規制されてきました。
しかし、金融庁も時代の変化に合わせて、規制緩和をし、新たなサービスの取り組みを促す方向に政策を転換しようとしています。
フィンテックを取り込まないと生き残れない状況下、大手銀行の一つ、りそなホールディングスでは、フィンテックをどう活用して事業を展開していくか、具体的なプラン作りを始めています。
今取り組んでいるのは顧客のニーズを先取りして融資などを提案していくサービスです。
そのために必要になるのがビッグデータです。
去年11月、カード会社と提携してネット通販のサイトを立ち上げ、顧客のデータを集め始めました。
この銀行の口座を持つ人がサイトを経由して買い物をすると、銀行からポイントが得られます。
銀行には、その人がいつ何を買ったのか情報が入ります。
このデータを分析して、結婚や出産といった転機を捉え、必要なタイミングで先回りしてローンなどを提案します。
一方、支店のあり方を抜本的に見直そうとしています。
ある支店では、最先端の認証技術を活用して口座開設などの手続きを簡略化しました。
事務作業にあたる人を減らし、その分ローンや資産運用の相談といった体面サービスにあたる人員を千人増やすことにしています。
東 和浩社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「新しいフィンテックの企業には、全く違う消費者側からの目線も入っていますし、銀行というビジネスモデルをひょっとすると捨てていかなければいけない・・・」
「重要な仕事というのは、フェイス・トゥ・フェイスのコンサルティング(相談)の部分だと思います。」
「勿論、フィンテックで技術競争をやっていくのはこれから避けて通れることではないですけれども、技術だけの部分ではなくていかにお客様の求めるものがどう違うかっていうのを今見つけなくてはいけない時代に来ているというふうに思いますね。」
翁さんは、日本の銀行のこうした動きについて次のようにおっしゃっています。
「(開発スピードが速いフィンテックに日本の銀行が勝てるかという問いに対して、)日本の銀行はやはり日本の銀行だけではないですが、銀行業というのは装置産業で、人も沢山雇っていますので、今の非常にインターネットを活用して、身軽なかたちで次々と起業しているベンチャー企業に比べるとコストの面で相当違いがあります。」
「そういう意味では、そういった特定の分野での勝負というと、特徴を出しているIT企業には勝てない部分がかなりあると思います。」
「今までは、規制でそういったIT企業に出資するとか出来ませんでしたので、どうしても自前主義でやらざるを得なかったということなんですね。」
「ですから、こういったITの流れに乗っていくためには、そういった新しいIT企業なんかとオープンなかたちで組んでイノベーションを起こしていくということが非常に課題になってきていると思います。」
「(その方向に金融庁も規制を緩和するということを打ち出していることについて、)そうですね。」
「同時に、先ほどフェイス・トゥ・フェイスっていうご紹介がありましたが、やはり金融業らしい、銀行業らしいサービスは何なのかということを、フィンテックへの対応も非常に重要なんですが、銀行ならではのサービスっていうのは何なのか、利用者の目線に立ってどういったサービスが出来るのかっていうことを本格的に考えなければいけないということではないかと思います。」
「(AIがいろんな分析が出来たり、アドバイスが出来るようになると、行員の再教育、人材育成が増々大事になってくるのではという問いに対して、)その通りだと思います。」
「やはり、人材をどうやって育成していくか、特にいろいろな専門性のある人材をいかに育てていくかということが重要になってくると思います。」
「銀行によっては、この分野を強化したい、例えば企業に対するサービスを強化したいというのであれば、事業の目利きとか、どういうアドバイスが出来るかというような人材を育成していくことが大事だと思いますし、例えば資産運用のアドバイスであれば、そういったことに対して非常に知識のある人材を育てていくといったようなかたちで、専門性のある人材を育てていくことが非常に重要になってくると思います。」
「(特に、銀行にとってマイナス金利という新しい局面で、積極的な貸出先を見つけることが求められている中で、本当にお金を借りたい人、今まで融資に無縁だった人たちとか融資してもらえなかったところ、だけど可能性のあるところをどうやって確実に見つけていくのかが問われることについて、)そうだと思います。」
「特に地域なんかでは、地方創生ということが課題になっていまして、やはり金融機関がそこの企業や自治体や大学などと組んで新しい産業をどう生み出していくか、そういったところに積極的に支援をしていくというようなことも求められると思いますし、やはり小さな企業であってもどうやって支援していくのかということも重要だと思います。」
「(私たち利用者として、フィンテックの動きをどう捉えたらいいのかという問いに対して、)自分に合った金融商品の提案など付加価値の高いサービスをフィンテックは与えてくれるものでありますので、安全性とかセキュリティなどに信頼が得られれば、私たちの暮らしを非常に豊かにしてくれる可能性を秘めた動きではあると思います。」
「(しかし、私たちにも金融機関やフィンテックに対するリテラシー(知識や利用能力)が問われるのではないかということに対して、)そうだと思います。」
「また、銀行のサービス向上も促されると、また競争が促されて、より良い金融システムになっていくのではないかと思います。」
金融とITが融合したフィンテック革命により、これまでの金融を取り巻く環境が一変し、大手銀行と言えどもこの時代の流れにうまく乗っていかないと生き残りが難しい時を迎えているのです。
また、こうしたITの進歩の速さを考えると、大手銀行と言えども安泰としていられない厳しい時代に入ったという認識が必要だと思います。