2016年05月02日
アイデアよもやま話 No.3379 フィンテック革命 その1 10年後には現金がなくなる!?

最近、フィンテック革命という耳慣れない言葉を耳にするようになりました。

そこで、この「フィンテック革命」について3回にわたってご紹介します。

1回目は、10年後には現金がなくなるという驚くべき予測についてです。

 

2月13日(土)放送の「マネーの羅針盤」(テレビ東京)のタイトルは「フィンテック革命で変わる“お金のカタチ”」でしたので以下にご紹介します。

 

1月20〜23日に開催されたダボス会議で、ドイツ銀行CEOのジョン・クライアンさんが衝撃的な発言をされました。

10年後には現金は存在しないだろう。

 

確かに、今やプリペイドカードやお財布携帯など、現金はどんどん不要になってきています。

実は、これらを可能にした技術がフィンテック(Fintech)なのです。

フィンテックとは、金融(Finance)にIT技術(Information Technology)を融合し、そこに新しい価値を見出していこうとするものです。

 

その動きは更に加速しています。

銀行などの金融機関を介さずにIT企業を介して、個人間で送金したり、個人間での融資も活発に行われています。

また、仮想通貨も現実になっています。

金融業界に進出するITベンチャー企業、株式会社メタップスCEOの佐藤 航陽さんは、その未来像について、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「どの会社も何かしら金融業をやっていて、何かしらインターネットサービスをやっている状態が20年後ぐらいには訪れるだろうなと。」

「なので、IT業界も金融業界も私は無くなると思っていますね。」

 

一方、メガバンクはこうした動きについて危機感を持っています。

三菱東京UFJ銀行デジタルイノベーション推進部の藤井 達人さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「技術の進展自体がドッグイヤーと言われるスピードで進化していまして、金融機関といえどもなかなか競争力を保つことは出来ない世界になっている。」

 

フィンテックを使った最先端のサービスは意外な場所で活躍しています。

茨城県土浦市にある久松農園では、年間50品目以上の有機野菜を栽培しており、契約した消費者と飲食店に野菜を直接販売しています。

多くの顧客と直接取引する業態だからこそ、問題になったのが決済です。

例えば、これまでは200万円のカード決済があった場合、およそ5%、つまり10万円の決済手数料をクレジットカード会社に支払うため手元には190万円しか残りませんでした。

そんな時に出会ったのが株式会社メタップスが運営する「SPIKE」という決済サービスです。

「SPIKE」を使った決済サービスでは月々8000円の決済手数料だけで課金、決済の両方が行われ、200万円の売り上げなら手元には199万2000円が残ります。

しかも、この決済サービスは、月額100万円までなら決済手数料が無料、発生するカード会社への手数料は「SPIKE」が負担しているといいます。

 

株式会社メタップスがこうした決済サービスにこだわる理由は、こうしたサービスの先に狙いがあります。

株式会社メタップスは、決済サービスだけでなく、SPIKEコインというプリペイド型の仮想通貨を発行、保有しているだけで年間1%のポイントが付きます。

更に、そのコインを使ってSPIKEでのショッピングサイトでの買い物でもポイントが加算されます。

その狙いは、独自の経済圏を作ることです。

CEOの佐藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「極力、自分たちの経済圏からお金が逃げないようにどう作るかということ次第かなと思っていて、実際に楽天さんとかは10年前ぐらいから同じような取り組みをしてますし。」

 

SPIKEや楽天などの企業が目指す経済圏とは、以下の通りです。

まず、自社が運営するショッピングモールでの買い物に対して、仮想コインでポイントを加算し、次の買い物を促します。

更に、送金や融資などもそのコインで出来、個人の経済活動のほとんどが特定のコインで完結してしまいます。

このように顧客を囲い込むのが狙いなのです。

今、その経済圏をめぐり、世界中で熾烈な競争が始まっているのです。

CEOの佐藤さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「国家というものが通貨をコントロールして経済をコントロールする時代から企業がそこに参戦してきて、どちらの経済システムがユーザーや消費者にとっていいものなのかをちゃんと選べるようになってきていると。」

 

こうした動きの中、コンサルタント会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーは次のような予測をしています。

フィンテックは今後10年間で銀行の売上を40%減らし、利益は60%減らすというのです。(2015年9月 グローバルバンキング・アニュアルレビューより)

 

では、大手銀行はこうした動きにどう対応するのでしょうか。

三菱東京UFJ銀行デジタルイノベーション推進部の藤井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「何か付加価値を付け加えたサービスをご提供していく必要があると考えております。」

「例えば、送金であれば送金に伴う何らかの補償のような機構を一緒に付けると。」

「自分たちの金融サービスを高度化していく、非常にチャンスだと捉えています。」

 

東京大学大学院教授の柳川 規之さんはこうした動きのポイントについて、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ポイントは「革命前夜」です。」

「これからは銀行とか証券というものが、実は言葉としては無くなってしまって、IT業界と垣根がなくなったり、あるいは現金だとか銀行預金を支払いに使っていたのが、そういうものが一切使われないで決済が出来てしまうような世界が起こるような革命が起きるかも知れない。」

「ただ、今我々が利用者として見ているのは、それより随分手前な世界なんで革命前夜、大きな変化が起きるけれども予兆が起きているという。」

「将来的には仮想通貨というものがかなり使われるようになって、モノの支払いだとか預金だとかいろいろなかたちで使われるようになるんですけど、実はこういう動きは既に起こっていて、Tポイントとかポイントというものがあるんですけど、最近は使い勝手が良くなっていて、いろいろなコンビニだとか喫茶店だとかお店でポイントが使えたりとか、しかもポイントが貯まったり、いつの間にか現金を持たなくとも相当生活が出来るようになってきているんですね。」

「その変化がどんどん進んでいくと、かなり銀行預金や現金が使われなくなると。」

「で、もう一つのポイントはですね、そうやってポイントが使われることで、いろいろな情報が我々の利用情報とかが、そのポイント発行会社に溜まっていくんですね。」

「先ほど経済圏て話がありましたけど、一つのポイントっていうのはいろいろな情報が集められる。」

「そうすると、それを使ってこの人に融資してあげようとか、その人にはもっとお金を貸せるとか、そういうことが今までだと銀行しか出来なかったことが結構ポイント発行会社にも出来るようになってくる。」

 

「(一方で、ディメリットや信用の問題が起きてくる懸念について、)技術革新が起きているので新しいビジネスが出てくると。」

「そういう中では、そういうビジネスがちゃんと成り立つようにするためには安心だとか安全だとかこういうものをきっちり担保していく必要は出てくるんだろうと思うんですね。」

「そういう(安全を担保する)法律をどういうふうに作って安心を実現させていくかっていうのは大きなポイントなんですけど、技術はかなり発展してきているんでいわゆるグーグルだとかアップルだとかこういう会社は、皆さんスマホを持っていると思うんですけども、その中にはもう電子的な決済をするような仕組みはもう出来ているんですね。」

「なので、それを実際に使うのかどうかは別なんですけども、仕組みとしてはもう出来ていて、これでもう世界中に送金や決済が出来てしまうという便利な技術はもう出来ている。」

「やっぱり、銀行も今までの銀行だけじゃなくて、こういう技術を使ったサービスを活用していくと、そういう方向に行くんだと思うんですね。」

「ところが、そこで問題になってくるのは、今の銀行規制の問題ですね。」

「だから、楽天は銀行を持ってるんですけども、銀行の方は楽天のような会社は持てないと、こういうようになっていたので、ここを変えて銀行も今後いろいろなビジネスが出来るようにしようというのが今政府の審議会で議論がされているということなんですね。」

 

「もう技術革新がとっても速いんで、いろんなサービスが出来るようになってくると。」

「そのサービスをきちっと取り込むかたちで、銀行業、あるいは証券業もやっていかないと国際競争にも勝てないし、かつ利用者にも利便性が提供出来ないということになるんですね。」

「本当は、いろんな新しいサービスがこれから出てきますんで、それをきちっと安心の適用されたかたちでやっていくということがこれから期待されるところですね。」

 

今回、フィンテックという金融分野の新しい潮流についてご紹介してきました。

しかし、考えてみれば銀行のオンラインシステムやクレジットカードが登場した時に、既にその萌芽は誕生していたのです。

では、当時と現在の違いはというと、一言で言えばテクノロジーの進歩、あるいは進化だと思います。

具体的には、インターネット、あるいは回線スピード、記憶装置、ビッグデータ、AI(人工知能)などの技術の性能向上や進化による利用料金の低コスト化、あるいは無料化です。

要するに、それまで不可能だったこと、あるいは可能だったけれども高い利用料金がネックで普及しなかったことが技術革新によって可能になったということです。

更には、認証技術の進化による暗証番号以外による認証の実用化です。

また、こうした大きな社会変革のベースは一部の優れた人たちの沢山のアイデアによるテクノロジーの進化、そしてそれらをうまく利用することを思いつく人たちのアイデアの相乗効果とも言えます。

ですから、フィンテックのこれからの展開を思えば、現在はまだまだ入り口付近で、これからもどんどん進化していくと思われます。

 

さて、一般ユーザー、あるいは利用する企業の立場からすると、フィンテックにはどのようなメリットがあるのかを以下にまとめてみました。

・現金の持ち歩きが不要

・クレジットカードの持ち歩きが不要

・暗証番号の暗記が不要

・審査次第で、必要な時に必要な金額のローンが容易に可能

・株式以外にも、多くの投資、あるいは資金の貸し付けが容易に可能

 

ですから近い将来、何枚ものクレジットカードで分厚くなっている財布の持ち歩きは不要ということになります。

これらの機能は、全てスマホでカバー出来てしまうのです。


 
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