2月10日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“水増し”燃料の実用化について取り上げていたのでご紹介します。
軽油に水を混ぜても、そのパワーが落ちないという次世代エコ燃料が開発され、今年から実用化が始まっています。
山梨県富士吉田市で、日本初のエコ燃料で一般道を走るバスがあります。
その燃料は、水50%と軽油50%、つまり水で薄めたエコ軽油燃料です。
このバスの運転手は、乗っていて今のところ問題ないといいます。
このエコ軽油燃料を開発したのは、エネコ ホールディングス株式会社です。
この燃料の作り方ですが、まずタンクに軽油10リットルを入れます。
続いて水も10リットル投入します。
すると、比重が軽い軽油は上に、比重が重い水は下に溜まり、境目がくっきり分かります。
そして、ポイントは独自に開発した界面活性剤で、水と油を付ける接着剤です。
この界面活性剤を入れると、水と経由が混ざり合い、エマルジョン燃料と呼ばれています。
検査所で分析したところ、驚くことに、このエネコ製エマルジョン燃料から水分はほとんど検出されず、JIS(日本工業規格)が定めた軽油100%とほぼ同じ結果になりました。
そもそもなぜ水を混ぜても燃焼効率が落ちないのでしょうか。
軽油の中に入り込んだ水は、高熱を加えると沸騰して爆発を起こし、軽油が細かい粒になります。
細かい粒になることで、軽油は熱を受ける面積が増えて、より燃焼がし易くなるのです。
更に、このエマルジョン燃料を使うことによって50%CO2削減になるというのです。
また、排気ガスのSOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)も半分以上削減出来るといいます。
この次世代エコ燃料を試験的に使っているのが、井出造園です。
除雪作業で悩みの種は燃料代です。
そこで使い始めたのがエマルジョン燃料です。
従来の100%の軽油と比べても、パワーも燃費も同等といいます。
エマルジョン燃料を使い始めてから1ヵ月、1月の燃料費は従来の76万円から48万円へと約4割のコスト削減が出来ました。
半分が水で出来たエマルジョン燃料は、燃料費が削減出来、排気ガスも削減出来て環境にも優しいという、まさに一石二鳥のエコ燃料です。
ただ、問題もあります。
このエマルジョン燃料は、現在山梨県内でしか燃料の製造・販売が出来ません。
この問題について、エネコ ホールディングスの副社長で、開発責任者でもある山本 泰弘さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「これ(軽油)に混ぜ物をした場合、その分は税金がかかっていないということで不正軽油というかたちになります。」
「もう少し、税金をかからずして、これが日本全体、また世界全体で使っていただければ、そこが僕たちの一番の課題です。」
軽油は、1リットル当たり約32円の地方税がかけられています。
しかし、50%を水で作ったエマルジョン燃料には半分の約16円の税金しかかけられないので、公道を走ることは認められませんでした。
そこで、エネコ ホールディングスは水の部分も納税することで山梨県からようやく許可が下りたのです。
急に税金の壁が立ちはだかろうとしている中、山梨県のこの中小企業が、今世界の注目を集めています。
2月8日、山本さんが出迎えたのは、タイからやって来た、タイ空軍の大佐とタイの商社の社長の二人です。
タイでは、原油の需要が年々増加し、輸入依存度は70%を超えています。
エネルギー資源が乏しい国にとって、喉から手が出るほど欲しい技術なのです。
ということで、エマルジョン燃料による新エネルギー事業の基本合意書が調印されました。
エネコ ホールディングスの技術を求めているのはタイだけではありません。
3月末までに、シンガポールやガーナなど16ヵ国と契約を結ぶ予定になっています。
こうした状況について、山本さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「全世界を探しても、私たちのこの技術を出来るのはエネコ ホールディングスしかありません。」
「これからも世界に発信します。」
エネコ ホールディングスでは、水の割合を更に上げる研究が続けられています。
水50%と軽油50%を混ぜたエマルジョン燃料に水を更に50%ずつ混ぜていきます。
合計でエマルジョンを3回繰り返すというのです。
1回目のエマルジョンの水の割合は50%、2回目で75%、3回目で87.5%になります。
こうした新たに開発したエマルジョン燃料の分析を新日本検定協会(横浜市港北区)に依頼した結果は、従来の軽油とほぼ同じ燃焼効率というものでした。
この結果について、検査担当者もビックリです。
これで満足していない山本さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「今、(エマルジョンの)繰り返し3回で加水率87.5%、これを確実に出来るように技術をもう少し確立しなきゃいけないのと、更に3回を10回くらい出来るまで実験を繰り返し、この技術を確立していきたいと思っています。」
なお、現在は軽油の他に重油や灯油でもエマルジョン燃料を作ることが出来ますが、3月からはいよいよガソリンを使った実験も始めるということです。
軽油などに水と界面活性剤を加えるだけで、燃焼効率が大幅に向上するという現象はちょっと信じられませんが、実用化され、普及が世界的に進めば、間違いなく化石燃料の枯渇時期を遠のかせるだけでなく、地球温暖化問題の解決にも大いに貢献出来ます。
この発明がノーベル賞の受賞に値するかどうかはともかく、ガソリンなど全ての燃料をエマルジョン燃料として実用化出来れば、世界的な貢献度は計り知れないと思います。
ですから、国は原発再稼働に力を注ぐよりも、こうした画期的なエコ燃料や再生可能エネルギーの研究開発、および普及に向けた取り組みに対して、国家プロジェクトにするとか、開発補助金を付与するなど、積極的に支援していただきたいと思います。