2016年04月23日
プロジェクト管理と日常生活 No.433 『熊本地震に見る過去の大震災の経験が活かされていない災害対策』

4月14日21時26分頃に、熊本県熊本地方を震源とする、 マグニチュード6.5、最大震度7の地震(前震)が発生しました。

更に、4月16日1時25分頃にはマグニチュード7.3、最大震度7の地震(本震)が発生しました。

マグニチュード7.3は阪神・淡路大震災と同規模の大地震で、4月14日以降、今も断続的に余震が続いており、大変な被害をもたらしています。

なお、一連の地震活動で、震度7を2回観測するのは過去に例がないといいます。

ちなみに、どのタイミングの地震が本震であるかを見極めるのは気象庁でも大変難しいといいます。

 

さて、いろいろなテレビ番組でこうした状況を見守っていて、とても残念に思ったことがあります。

国内各地から届いた支援物資が集積所に置かれたままで避難所に届いていないというのです。

その理由の一つは、どの避難所で何がどのくらい必要とされているのかが分からないからだといいます。

道路が寸断されて輸送出来ないというような状況ならともかく、本当に何がどれだけ必要かが分からないという理由で支援物資が避難所に届けられていないという状況であれば、これは大問題です。

なお、支援物資が避難所などに届くのが遅くなる理由としては、他にも道路の渋滞やドライバー不足、あるいは配送する支援物資の仕分けの人手不足があるといいます。

これまで、阪神・淡路大震災や東日本大震災の貴重な経験があるのですから、なぜこうした経験を活かした災害対策が実施されないのか、とても残念に思います。

 

実際に大震災が起きれば、ご自身も被災されていても、市町村の役所の方々は被災された方々のために真摯に対応されていると思います。

でも、今回の熊本地震のように長期にわたる余震の対応が必要な大震災では、こうした役所の方々の対応疲れ、および被災者の方々への支援物資の配給不足がとても心配になります。

そこで、以下に私の考える、出来るだけスムーズな被災時対応を可能にする必要最低限の災害対策をまとめてみました。

・災害対策に関する組織体制の構築

  国や県および、市町村、あるいは近隣自治体における連絡系統、およびそれぞれの予備も含めた役割の決定

被災規模に応じた災害対策本部の立ち上げ、および災害対策全般の統括

避難所ごとに責任者を設置し、その責任者が災害対策本部と連携して必要な支援物資(食料、飲料水、医療品など)、およびその数量を管理

・情報の一元化

  被災時にも機能する連絡体制の確立

  災害対策本部による被災状況や支援状況などの一般公開

・避難所での非常食などの常備

  乾パンや飲料水、簡易発電設備など

・定期的な災害訓練の実施

 

さて、今回の熊本地震においても、大なり小なりあらかじめ国や各地方自治体において、災害対応策は検討されていたと思います。

でもなぜこうした基本的な災害対策が組織的に機能しないのかについて考えてみると、その根底には国や地方自治体がいつやってくるか分からない災害に対する危機感が弱いからと言わざるを得ません。

災害対策が構築されているにも関わらず、それがいざという時に適切に機能しないということは、災害対策の想定に漏れがあったり、対策が不十分で現実的でないということです。

そして、こうしたことの多くは定期的な災害訓練の実施で弱点が見つかり、修正可能なのです。

先ほどお伝えした、各避難所で必要とする支援物資への対応策などは、机上訓練をするだけでもすぐに検討出来たはずです。

そして、今のITを駆使すれば、とてもスマートな災害対策を構築することは十分可能なのです。

 

今回あらためて私たちは、活断層の多い地震国、日本に暮らしていることを強く認識しました。

今回の熊本地震を契機に、特に活断層のある地域や津波の発生する恐れのある地域においては、国や地方自治体を中心に実践的でスマートな災害対策作りの取り組みをしていただきたいと思います。

 

プロジェクト管理において、リスク管理がとても重要であるように、大震災に対応した災害対策は国民の暮らしを守るためにとても重要なのですから。

災害対策の任に当たられている方々が適切な災害対策を怠ることが、災害発生時の被害をより拡大してしまうということを肝に銘じていただきたいと思います。


 
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