1月25日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新感覚のカーシェアリングについて取り上げていました。
そこで番組を通して、新たなカーシェアリングの潮流について4回にわたってご紹介します。
1回目は、個人間の貸し借りについてです。
若者のクルマ離れが進む逆境のクルマ業界で、成長を続けているのがカーシェアリングです。
最近では、駐車場の中にカーシェアリング用のスペースを見かけるようになりました。
こうした中、ベンツなどの高級車や名車が借り放題出来るという新たなサービスが注目を集めています。
この新感覚のカーシェアリングとは、ディー・エヌ・エーが運営するカーシェアアプリ「Anyca(エニカ)」です。
その仕組みは、クルマのオーナーがネット上でクルマの写真や利用料などを登録、借り手は乗りたいクルマの所有者にメッセージを送り、合意出来ればクルマを借りられ、ディー・エヌ・エーはその利用料の1割を受け取るというものです。
このサービスのメリットは、コスト的にクルマを購入出来ない人たちが乗ってみたいクルマに手軽に乗ることが出来ること、一方クルマのオーナーは維持費を捻出出来るところにあります。
なお、オーナーの月々の平均受取額は2万5000円といいます。
一般的にカーシェアリングと言えば、クルマの貸し出し企業が提供するクルマを複数のユーザーでシェアする方式ですが、「Anyca」でシェアするのは個人が持つクルマなのです。
そして、個人所有の場合は駐車場代などのコストがかかりませんから、「Anyca」では一般のカーシェアリングやレンタカーに比べて低料金での貸し出しが出来ます。
さて、オーナーの多くは30代から40代、一方借り手はクルマ離れが指摘されている20代後半が最も多いといいます。
「Anyca」の仕掛け人、大見 周平さんは、この状況について次のように分析しています。
「クルマ離れは意外に起きてないんじゃないか、単純にクルマが持てないだけなんじゃないかと思っています。」
「クルマに乗りたいニーズ自体はかなりまだまだ強いと。」
名車を売りに、「Anyca」のサービスを始めてから4ヵ月、登録台数は約800台、シェア回数は約1800回(1月15日現在)と順調な滑り出しです。
しかし、このサービスの課題も出て来ています。
ちょっと傷つけられたけれど、誰だか分からないというオーナーもいるのです。
そこで「Anyca」では、利用者に1日単位の自動車保険に加入させ、事故などのトラブルは当事者間の話し合いで解決する仕組みにしています。
また、利用者のモラルが問われるケースもあります。
クルマの安全をどう担保するか、取り組んだのはユーザー間の信頼関係づくりです。
「Anyca」では、利用後にオーナーと借り手が評価し合い、その内容が閲覧出来ます。
モラルの低い借り手は評価も低くなり、オーナーから断られることもあるのです。
さて、カーシェアリング「Anyca」の特徴は、高級車や限定車を中心に扱っているところにあると思います。
クルマ好きの人は、お金がなくてクルマを買えない人でもクルマを持っている人でも憧れの高級車や限定車に一度は乗ってみたいと思っている人は少数派ながらいるはずです。
ところが、企業が提供する従来のカーシェアリングは、自前でクルマを用意していますから車種や台数に限りがあります。
ましてや、高級車や限定車を扱ってはとてもビジネスとして成立しません。
それが個人間のカーシェアリングにより、手ごろな料金でこうしたクルマに乗れるサービスを受けられるのですから、「Anyca」のようなサービスは徐々に普及していくと思われます。
ただし、このサービスはオーナーと借り手の間でクルマの受け渡しが必要ですから、両者の間には距離的な制約があります。
それでも、例えば旅行先などで一時でも低料金で高級車でのドライブが出来れば、旅のいい思い出作りになると思います。
また、今後このようなサービスがどんどん普及していき、身近なところで利用出来るようになれば、距離的な制約も解消されるようになります。
また、こうしたネットを利用したサービスは元手がそれほどかかりませんから、誰でもアイデア次第で構築することが比較的容易に出来ます。
また、ネットの利用により容易にオーナーと借り手による相互評価結果を公開出来るので、相互に安心出来るサービスの利用を図ることが出来ます。
ということで、クルマに限らず様々な分野でのシェアリングサービスは今後とも普及していくと思われます。
また、こうしたライフスタイルは省エネにも貢献出来るのです。