2016年03月27日
No.3348 ちょっと一休み その535 『地球温暖化の新たな危機 その5 海洋酸性化による食物連鎖への影響』

これまで地球温暖化関連については何度となくお伝えしてきました。

そうした中、1月10日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)で「地球温暖化の新たな危機! 海洋酸性化」をテーマに取り上げていたので5回にわたってご紹介します。

5回目は、海洋酸性化による食物連鎖への影響についてです。

 

前回は、海の酸性化による生物の異変についてお伝えしましたが、今、海洋酸性化によって海の生態系の根幹が揺らぐかもしれないことが分かってきました。

筑波大学下田臨海実験センター(静岡県下田市)では、和田 茂樹助教が海の酸性化が生態系に与える影響を研究しています。

和田さんが注目しているのは、海の生態系の出発点にいる植物プランクトンです。

特に注目したのは、クリソクロムリナ(ハプト藻)と呼ばれる植物プランクトンの一種です。

ハプト藻は、植物プランクトンの中でも特に多く、世界中に分布しています。

代表的な植物プランクトンのけい藻と比べても比較にならないくらいです。

そして、このハプト藻の多くはクリソクロムリナと言われています。

そのため、海の生き物にとって貴重な食糧になっているのです。

 

和田さんは、海水を入れた水槽に人工的にCO2を溶かして酸性化した海を再現、クリソクロムリナに現れる変化を1ヵ月にわたって観察しました。

微量の海水に特殊な光を当て、その中に存在しているクリソクロムリナを青く示しています。

この時、海水のpHは8.1ですが、酸性度を上げると次第に少なくなります。

そして、pH7.7(2150年頃の酸性度)では現在と比べるとその数はわずか5%になっていたのです。

和田さんは、クリソクロムリナのような海の食物連鎖の出発点にいる植物プランクトンが減少すると、生態系が大きく崩れる可能性があると考えています。

 

弘前大学の野尻教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「食物連鎖の出発点が植物プランクトンなんですけど、今後の温暖化が進むと熱帯、亜熱帯の海での植物プランクトン生産が落ちるというふうに予想されているんですけども、そこに今度海洋酸性化が加わると、更に影響が深刻になるというような可能性も指摘されています。」

「(海洋酸性化を食い止める方法について、)原因物質がCO2ですから、CO2が海に溶けるのを減らす、つまり人間が大気にCO2の量を減らす、ということは温暖化の対策と全く同じ。」

温暖化の対策が進めば、海洋酸性化はさほど深刻になる前に止まる、ということが言えます。」

 

また、土屋NHK解説委員は、次のようにおっしゃっています。

「本当に、CO2の排出を減らしていくということを根本的に取り組んでいかないと出口が見えないということですね。」

「化石燃料の消費を減らして、水素化(水素エネルギーの活用)していったりとか、大きな話でいえば、CO2を地下に封じ込める地下駐留であったり、あるいは新光合成であったり、そうした革新的技術を開発しつつも、今出しているCO2を世界全体で減らすことが重要ですね。」

 

また、弘前大学の野尻教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「だから、新しい技術で物事を進めるのも勿論大事なんですけども、今やれるような省エネだったり効率化、そういったことを進めながら新しい技術も作っていくと。」

「ですから、温暖化対策はあれかこれかどれかをやればいいという話ではなくて、どうもあれもこれもやれることを全部やらないと世界の問題は解決しないという状態になっているというふうに考えています。」

「海洋というのは、人間が出す(CO2の)排出量を実質的にゼロにすると、そういう対策をしさえすれば、その後に非常に長期にわたって安定に吸収してくれます。」

「そうすると、一度CO2の濃度が高くなってしまっても元に戻す、昔に戻す、そういった働きをしてくれるのが海なんです。」

「ですから、我々もずっと後の世代がちゃんと地球に暮らせるかとか、そういったところを保証するために海をきちんと守ることが重要というふうに思っています。」

 

以上、これまで5回にわたって地球温暖化の新たな危機についてご紹介してきました。

これまでお伝えしたことを受験対策風にざっとまとめてみると、以下の通りです。

海の役割:

 熱の吸収

 CO2の吸収

CO2排出量の増加 ⇒ 地球温暖化

          ⇒ 海洋の酸性化 ⇒ 食物連鎖の崩壊 ⇒ 生態系の崩壊

 

これまで、CO2排出量の増大による地球温暖化に大きな関心が寄せられてきましたが、一方では海の酸性化による食物連鎖の崩壊、更には生態系の崩壊が進みつつあるのです。

その先には、人類も含めて地球上の多くの生物の生存の危機が待ち受けているのです。

そして、その原因を作ってきたのは、産業革命以来のたった250年あまりの人類の活動なのです。

ここで思い出されるのは、アイデアよもやま話 No.1223 大量絶滅時代の恐れ - 人類は地球のガン細胞か!です。

誕生以来46億年といわれる地球の悠久の歴史の中で、産業革命以来の数百年にも満たない人類の活動が地球の環境、そして生態系に壊滅的な打撃を与えようとしているのです。

 

私たち人類は、遅ればせながら突然変異、すなわち自らの意識改革によりガン細胞から地球に優しい良質な細胞へと変貌を遂げなければならないのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています