福島第一原発事故から5年、先日来、様々な角度から関連記事が各種報道により取り上げられております。
そこで、4回にわたってプロジェクト管理の観点から原発関連の問題点についてお伝えしたいと思います。
1回目は、廃炉作業を困難にしている変更管理の不備についてです。
3月9日(木)放送の「時論公論」(NHK総合テレビ)のテーマは「東日本大震災5年 試練続く福島原発 廃炉への道」(水野 倫之NHK解説委員)でした。
そこで、まず番組を通して廃炉作業を困難にしている変更管理の不備に焦点を当てて以下にご紹介します。
世界最悪レベルの事故から5年、福島第一原発敷地内の放射線量は下がりつつあるものの、廃炉作業は試練が続いています。
当面の最大の課題は溶けた燃料の取り出しに目処をつけることですが、予想外の事態に阻まれ思うように作業が進んでいません。
溶けた燃料は建屋内の格納容器にあります。
政府と東電(東京電力)がまとめた工程表では、取り出し開始予定は2021年、今はどこにあるのか確認して取り出し方法を決める準備期間に過ぎません。
その準備作業も予想外の事態が次々に発生し、2021年に溶けた燃料の取り出しが開始出来るのか予断を許さない状況です。
東電は政府の協力も得て、溶けた燃料の取り出しに向けてロボットの投入を目指し、作業の邪魔になるブロックを別のロボットで撤去しようとしましたが壊せませんでした。
現場での作業経験者を探して確認したところ、ブロックの裏が鉄板で補強されていることが判明しました。
このブロックを撤去するまでに数ヵ月かかったことと、現場の放射線量も作業が出来ないほど高いことが分かり、東電は今年1月にカメラのついたロボットの投入の延期を発表しました。
なぜこのようなことになるのか、ブロックの場所や大きさは東電も建設当時の図面で確認し、その場所にあることをカメラで把握していました。
しかし、鉄板での補強は原発完成後しばらく経って行われてようで、図面には記されておらず、またブロックの裏まできちんと撮影していなかったため把握出来なかったのです。
最近の図面は電子化され、設備変更もその都度変更されていることから図面だけでも現場の詳細な構造が分かります。
しかし、福島第一原発は古いものは1960年代に建設され、図面が紙の場合が多く、その後の設備変更などが反映されていないことがあるといいます。
事故は起こり得るということが念頭にあれば、こういう対応はあり得ないわけでやはり“安全神話”が蔓延していたということです。
今後は、格納容器周りは図面に頼らず現場の状況を事前にロボットで隅々まで確認した上で前に進む慎重さが必要だと水野解説委員は指摘しています。
調査開始までに時間がかかるかもしれませんが、結果的にその方が作業が早く進むことになるとも指摘しています。
この他に、1号機の追加調査も格納容器内の状況から見直しを迫られており、今年中に溶けた燃料の姿を捉えるのは困難な状況となっています。
政府と東電は5年後の2021年の溶けた燃料の取り出しの開始に向けて、来年中には取り出し方法の方針を決めるとしていますが、状態の確認さえ出来ないのに可能なのか疑問を持たれています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
福島第一原発は古いものは1960年代に建設され、図面が紙の場合が多く、その後の設備変更などが反映されていないことがあるといいます。
水野解説委員も指摘されているように、事故は起こり得るということが念頭にあれば、このような対応はあり得ず、やはり“安全神話”が蔓延していたと言わざるを得ません。
そもそも原発事故が起きた場合を想定して、素早く的確な対応をしようとすれば、設備変更などあらゆる変更に対するその都度の的確な変更管理は必須です。
それにも係らず、東電が設備変更などを適切に実施していないことがあったということは、原発に携わる事業者としてはそれだけでも失格です。
こうした不備の積み重ねが見えないかたちで私たちの支払う電気料金に跳ね返っているのです。
そして、こうしたこれまでの変更管理の不備は今後もどんなかたちで廃炉作業を困難にするか分かりません。
幸いなことに、最近の図面は電子化され、設備変更もその都度ドキュメントに反映されているということですから、東電には速やかにこれまでの変更漏れを見直して変更管理の不備を正して欲しいと思います。
なお、他の電力会社についても、もしこうした懸念が多少なりともあるのであれば同様の対応をしていただきたいと思います。