これまで地球温暖化関連については何度となくお伝えしてきました。
そうした中、1月10日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)で「地球温暖化の新たな危機!
海洋酸性化」をテーマに取り上げていたので5回にわたってご紹介します。
3回目は、CO2吸収で進む海の酸性化についてです。
前回、海の熱吸収機能の異変による海面水温上昇の問題についてお伝えしました。
ところが、今、海の中ではもう一つの大きな問題が進行中なのです。
海がCO2を吸収する量は人類が排出するCO2のおよそ4分の1ですが、CO2吸収で進む海の酸性化という大きな問題が起きつつあるのです。
ちなみに、私たち人類の暮らしから排出されるCO2の量を100とすると、陸上での吸収29、海洋での吸収26、大気中の残留45といいます。
気象庁の調査船、凌風丸は太平洋の大海原で海洋調査を行っています。
水を採取する装置を水深150mから800mの深さまで沈めて海水のサンプルを採ります。
海水に溶けた酸素の量やCO2の濃度を分析して大気が海水に与える影響を調べています。
調査チームを率いる気象庁の中野 俊也調査官は、30年間収集してきたデータから海で起きているある異変を明らかにしました。
中野さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「海洋にCO2が溶け込むということで、海洋の酸性化といった問題が今起こっています。」
「海洋酸性化が進みますと、海水中の化学的なバランスが崩れてくるということになりますので、今度は逆にCO2を吸収する能力が低下するということが考えられます。」
「これは大気中のCO2が増えると、残ってしまうことを意味しますので、地球温暖化を逆に加速させるのではないかというふうに考えられています。」
海洋の酸性化とは以下の通りです。
CO2は水と反応し、炭酸になります。
更に、炭酸は水素イオンと炭酸水素イオンに分かれます。
つまり、CO2が海に溶ければ溶けるほど水素イオンが増えるのです。
これが海洋の酸性化と呼ばれる現象です。
酸性化の進み具合を表すために、指標として使われるのがpHです。
7より小さければ酸性、7より大きければアルカリ性です。
中野さんたちは、1990年からの海のpHの変化に注目しました。
2014年までの変化を見てみると、太平洋の海域で酸性の箇所が増えているのです。
この20年だけでもpHは0.04下がったと言われ、水素イオンはおよそ1割増加、大幅に酸性化が進んでいるのです。
更に酸性化が進むと地球温暖化に大きな影響を及ぼす可能性があるといいます。
CO2が海に溶け、水と反応して水素イオンや炭酸水素イオンが増え続けると徐々にこの反応が起きにくくなります。
このため、大気中に残るCO2が増えるというのです。
今回ご紹介したように、CO2の吸収により海の酸性化が進み、更に大気中に残るCO2が増えるので地球温暖化にも大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
次回は、酸性化による海の生物の異変についてお伝えします。