昨年12月30日(水)付け読売新聞の朝刊でAI芸術(人工知能芸術)関連記事を見かけたのでご紹介します。
公立はこだて未来大学の松原
仁教授らがAIを使って短編小説を自動的に創作する取り組みが話題を呼んでいます。
短編小説の名手、故・星
新一さんが手がけた約100作品の特徴をAIに学習させて作ったのです。
ちなみに、この作品はAIが全てを書いたわけではなく、一部は人の手を加えたといいます。
松原教授らは、この「AI小説」を一昨年9月末、「星
新一賞」に応募しました。
なお、新聞の紙面にはその作品が掲載されていましたが、違和感なく楽しめました。
また、短編小説に限らず、AIに音楽や絵画、小説などの芸術作品を作らせる取り組みが盛んになってきています。
一方、AIが様々な芸術作品を作りだすようになってくると問題になるのが著作権の取り扱いです。
著作権法は、著作物を「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義しています。
このため、現状ではあくまでソフトウェアに過ぎないAIの作ったものに著作権が認められる可能性は低いといいます。
ところが、AIの開発者は研究の成果を保護するために、作品の著作権を主張する可能性もあります。
優秀な研究者が積極的にAI開発に取り組みたくなる環境を作るためにも、何らかの方法で開発者の権利を保護する必要があります。
このため、政府は今年1月から写真家や漫画家、インターネット事業者らによる有識者会議で議論を始めることにしています。
こうした著作権を巡る議論の論点について、以下の4点を挙げています。
様々なAIが短時間に膨大な作品を生み出し続ける世界になると、何がオリジナルかを判断することが難しくなり、オリジナル版と海賊版をどのように区別するのか
このAIが原作者だということをどうやって証明するのか
AIが生み出した作品の著作権収入を誰が受け取るのか
著作権法は小説の著作権を「作者の死後50年間」としているが、「死」のないAIの著作権につてはどう設定すべきか
一方、1月15日(金)放送の「視点・論点」(NHK総合テレビ)でAIをテーマに取り上げていましたが、驚くべきはAIの創作スピードです。
自動作曲は現在、スペインのイアムスと呼ばれるシステムが1秒で1曲のクラシック曲を作曲出来るといいます。
このスピードで休まず作曲を続ければ年間3000万曲以上、これは日本音楽著作権協会(JASRAC)がデータベース上で管理している世界中のプロ楽曲の10倍にもあたるといいます。
つまり、数だけで言えば、一つの電子作曲家が1ヵ月で全世界の音楽家の数十年分に匹敵するほどの作品を作れるということです。
しかも、聴き手がどう評価したか、情報を集めて内容を改善していくことはAIにはとても得意な作業です。
特に、個々のユーザーごとに過去に視聴した作品やそれへの反応ぶりを把握してユーザーが最も求めそうな作品をテーラーメードで用意して提供することはまさにAIの独壇場です。
こうしたことは、小説などにも当てはまります。
このように膨大な量の創作物が生まれてくると、著作権の管理を人手で行うことはほとんど不可能になります。
ということは、大量の創作物のオリジナル性を評価するためのAIが求められるようになります。
ということで、私たち人間とAIとの住み分けをどうするのかが究極の課題と言えます。