今や、非正規労働者の割合の増加による格差問題が大きくクローズアップされています。
そうした中、1月29日付けのネット記事で少し明るい内容を目にしました。
パート従業員や契約社員など非正規労働者の正社員化などを進めるため、厚生労働省は、新年度から2020年度まで実施する5か年プランを策定したというのです。
ちなみに、非正規社員の割合は4割を超えているといいます。(昨年12月4日(金)放送の「特報首都圏」(NHK総合テレビ)より)
また、年収の比較でみると、正社員478万円、非正規社員170万円といいます。( 国税庁 2014年調査結果)
ですから、安倍政権は失業率が改善されていると自己評価されていますが、その実態は非正規社員としての雇用が進んでいるということになります。
こうした状況からみれば、企業に正社員採用を促し、非正規労働者のうち、望まないのに非正規で働く「不本意非正規」の人の割合を、14年平均の18・1%から10%以下に減らす目標を掲げたという方向性は評価出来ます。
なお、同省が非正規労働者の数値目標を定めるのは初めてといいます。
目標達成のため、同省は企業に対し、正社員に切り替えた際に企業が受けられる助成金の活用や勤務時間が短い「短時間正社員」制度の導入などを促すといいます。
さて、ここで問題はいくら厚生労働省が正社員に切り替えた際に企業が受けられる助成金制度を導入しても、企業にしてみれば、その正社員が働く場を提供し続けられるだけのビジネス規模を維持出来るかどうかです。
要するに、企業は正社員の雇用に際し、今後のビジネスの成長の期待度が高ければ、補助金の有無に関係なく、積極的に雇用を促進するのです。
そうでなければ、いくら国が雇用促進を企業に働きかけても企業は動かないのです。
いざという時には解雇しやすい非正社員のままでの雇用を選ぶのです。
経済規模が縮小すればその分雇用規模も縮小するし、経済規模が拡大すればその分雇用規模も増大するというわけです。
ただし、雇用に作用しない分野での経済拡大があっても雇用に結びつくことはありません。
例えば、単純にコンピューター化、あるいはAI化が進めば、その分それまでの作業に携わっていた従業員の方々は働く場が奪われてしまいます。
そして、そうした従業員が増えていけば雇用規模が縮小し、やがて国レベルでの消費力が落ちていきますから、国レベルの経済規模が縮小するという悪循環に陥ってしまいます。
でもこれまでの歴史が証明していることは、技術革新によって必ずしもこうした悪循環に陥らないで済んでいる、あるいはそれまで以上の経済発展を迎えているのです。
そのポイントは以下の2つです。
・需要の拡大
・需要に応える産業の関連技術者の確保
成功例としてまず思い浮かぶのは18世紀の産業革命です。
産業革命では、大量の雇用が生まれ、それが需要に結びついて経済成長の好循環に結びつきました。
一方、最近の世界経済は、技術革新はあるのですが、作業プロセスにおける人手を介す割合が相対的に少なくなっているので必ずしも雇用に直接結びついていないのです。
更に、先進国での従業員の賃金低下も加わって需要減を招いていると思うのです。
ということは、極めて当たり前のことなのですが、雇用対策、あるいは格差対策の基本は雇用に作用するような技術革新とそれに伴う経済発展、あるいは経済規模の維持だと思います。
この基本の上に正社員を希望する人は誰でも正社員になれる、また正社員を希望しない人でも同一労働同一賃金が徹底される、こうした政策によって格差是正がなされると思うのです。
同時に、国が打つべき対策はいかに企業が動きやすい環境を整えるかという一点なのです。
具体的には以下のような項目が挙げられます。
・企業活動の足を引っ張るような様々な規制の撤廃
・研究開発関連の融資制度の促進
そして、最も重要なことは、企業における継続的な技術革新をもたらすチャレンジ精神です。
チャレンジ精神の中からこそ技術革新は生まれるからです。