2016年02月23日
アイデアよもやま話 No.3320 公害先進国から環境保護への歩み その7 地球規模で環境保護が世界的課題に!

これまで何度となく、一人一人の意識が変わり、行動を起こすことにより社会を変えることが出来るとお伝えしてきました。

そうした中、ちょっと古いですが、昨年7月18日(土)放送の「戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか 未来への選択(3) 公害先進国から環境保護へ」の録画を最近ようやく観ました。

そこで、主に番組を通して公害先進国から環境保護への歩みについて8回にわたってご紹介します。

7回目は、地球規模で環境保護が大きな世界的課題になっていることについてです。

 

1990年代に入り、地球規模で環境保護が大きな課題となりました。

地球温暖化、産業活動で増えた温室効果ガス、平均気温が上がり海水面が上昇、生態系の変化が生じようとしていました。

その危機感は世界に広がっていきました。

温室効果ガスを削減しなくてはならない、1997年、世界各国の代表が集まり京都会議(第3回気候変動枠組条約締約国会議 COP3)が開催されました。

 

なぜ日本はこの会議を誘致したのか、当時、環境庁地球環境部長で京都会議の担当責任者だった浜中 裕徳さんは当時を振り返り、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「1990年頃に地球環境問題が世界的に大きな問題になった時に、日本は魚の獲り過ぎとか、あるいは熱帯の破壊に手を貸しているんじゃないか、木材輸入というものを通じてですね。」

「で、批判をされたもんですから、ちょっとやはりそういう批判されてばっかりではよくない、やはり日本はかつて公害に苦しんだけども経済成長にも悪影響がなく克服した。」

「(日本は)そういう公害対策先進国なんだと。」

「そこをベースにしてですね、これからむしろ日本は積極的な役割を果たしていくべきだと。」

 

COP3には160を超える国からおよそ1万人が参加、温室効果ガスをどれだけ減らせるか、先進国の数値目標を打ち立てるのが目的でした。

しかし、アメリカは大幅な削減は出来ないと主張、会議は難航しました。

会議終了3日前、アメリカのゴア副大統領が到着してから膠着していた会議が動き出しました。

アメリカ交渉団は柔軟な対応へと大きく方針を変えました。

予定を半日延長して議定書は採択されました。

経済活動に枠をはめることにもつながる前例のない取り決めとなりました。

温室効果ガスの削減目標(1990年比)は、EU 8%、アメリカ 7%、日本 6%、省エネの達成度など各国の事情を考慮した異なる目標設定となりました。

 

COP3から4年、合意に達した各国に激震が走りました。

アメリカが議定書の枠組みから離脱すると発表したのです。

当時のアメリカのジョージ・ブッシュ大統領は、当時、次のように演説しています

「世界第二の(温室効果ガス)排出国の中国は京都議定書の義務を免れている。」

「もし私たちが京都議定書を批准すれば、失業は増え物価は上がり、経済的にマイナス。」

「常識ある人はまともな政策だと思わないだろう。」

 

京都議定書では、途上国は温室効果ガス削減の枠組みに参加していなかったのです。

更に、ブッシュ政権を支えていた石油産業界は一貫して反京都議定書キャンペーンを繰り広げていました。

経済の停滞は許されないという理由でした。

日本はアメリカを京都議定書に飛び戻そうと交渉を続けました。

同時にCOPを舞台にEUなどと京都議定書を運用するためのルール作りに取り組みました。

 

京都議定書を巡る国際交渉の先頭に立ったのが初代環境大臣の川口 頼子さんでした。

川口さんは、当時を振り返り、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自分の国の利益だけ考えていたらまとまらないところをどうやってまとめるか、やっぱり、このまんまいったら地球はどうなるのっていう感じを皆さん持っていたと思いますね。」

「日本は止めますというわけにはいかない国だと私は思いましたし、それから課題自体は地球的な非常に大きな課題ですから、やっぱり大げさに言えば人間の歴史の中で「これ止めた」っていうのは許されないだろうとも思っていたので・・・」

 

アメリカが加わらないまま京都議定書の運用ルールは合意に達しました。

これを受けて、2002年、日本は京都議定書を批准しました。

温室効果ガスを6%削減する義務を正式に負いました。

 

産業界全体に突き付けられた削減目標、かつて公害対策に取り組んできた四日市コンビナートの中核企業も例外ではありませんでした。

石油を精製する過程で多くのCO2を排出する昭和四日市石油は、公害対策に加えて、地球温暖化対策にも力を注いでおり、燃料に換算すると、この10年で約8万キロリットルの原油に相当するエネルギーを削減する計画だといいます。

 

2011年3月11日、東日本大震災が発生、全電源喪失による福島第一原発の事故、発電量の3割を占めていた原発の停止で火力発電の割合は6割から9割に増えました。

日本の地球温暖化対策は難しさを増しています。

東日本大震災から半年あまり、南アフリカでCOP17が開催され、京都議定書に代わる枠組みについて話し合われました。

新しい枠組みは2020年スタートを目指すことになりました。

それまで京都議定書を延長することも決まりました。

しかし、日本は延長した京都議定書には参加しないことを表明しました。

実はこの時、途上国も含めた削減の枠組みが出来ており、日本はこれに加わっていました。

元経済産業省環境政策課長で京都議定書に携わった澤 昭裕さんは、当時の経済界の思惑について番組の中で次のようにおっしゃっています。

「京都議定書というのは外交的な金字塔であるように見えるんですけど、一方でアメリカに抜けられ、途上国にはなんの義務も課せられないという一種の欠陥条約であるにもかかわらず、これにいつまでこだわるんだという気持ちが非常に強かったわけですね。」

「で、途上国が今や6割、先進国が4割CO2出している、それだけひっくり返っている。」

「京都議定書ができた時には逆に先進国が6割で途上国は4割だったんですね。」

「それが逆転して、途上国が削減してってくれないと、先進国が例えばゼロになったとしてもですね、その数値(目標)には達しない。」

「ですから、途上国にどうやって削減に参画してもらうか、協力してもらうかっていうことが非常に大きなポイントになってくるので、途上国も巻き込んだかたちでみんなが削減に協力し合えるような枠組みを作らなければいけないんではないかと。」

 

日本は今、途上国を含めた枠組みに基づき温室効果ガスの削減を続けています。

2020年から始まる予定の新しい枠組みでは、2030年には温室効果ガスを2013年比で26%削減するという目標を打ち出しています。

 

1988年、地球温暖化を防ぐため、世界中の科学者が参加する研究機構、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が作られました。

IPCCは、CO2など温室効果ガスで今世紀末までに世界の平均気温がおよそ4℃上がってしまうと予測、温室効果ガスの削減でこの気温上昇を2℃程度に抑えないと地球全体に深刻な影響が出ると警告しています。

 

IPCC報告書の執筆者の一人、国立環境研究所の江守 正多さんは、最新の報告書に基づき、日本各地で講演を重ねています。

江守さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「我々の世代、我々が生きているうちに弾いてしまった引き金によって、これから海面が1m、2mと上がっていって、子の代、孫の代、もっと先の代の人類は非常に大規模に移住をしなくちゃいけなくなったりですね、南太平洋の島が沈んでしまったりとか、そういうことが起こるかもしれないということですよね。」

「で、これが恐ろしいのかどうなのかと、これは認識の問題になっていくと思いますよね。」

「将来世代の人のことが本当に心配出来るのか、途上国の人のことが本当に心配出来るのか。」

「で、それを責務であると、倫理であると、公平でなければならないと、そういうタームで我々は腑に落ちて、例えば我々の社会を大きく変えるようなことに踏み出せることが出来るのかということですよね。」

「それが本当にシビアに問われているだろうと思います。」

 

今、中国のPM2.5など、経済成長を続ける国々で公害が問題化しています。

かつて公害先進国だった日本は今何を伝えていくべきなのでしょうか。

元環境大臣の川口さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「公害にしても省エネルギーにしても、日本がどうやってそれをやったか、そういった日本の経験を今まさに工業化をして伸びていく国に対してそれを伝えていくっていうのが日本の役目だと思うんですね。」

「日本もまだまだ公害問題の悪影響で健康を害された方が現に大勢いらっしゃるわけですよね。」

「いまだに被害に苦しんでいるという方々がいて、発展途上国でそういう人が既にいますし、またこのまま行ったらもしかしたらもっともっと生まれるかもしれないという状況ですよね。」

「ですから、日本がこうすればいいんだということを伝えていくっていうのは日本の責任だと思いますね。」

 

私は、川口さんのおっしゃることに全く同感です。

日本には、公害問題の深刻さ、環境保護の重要さ、そしてこうした問題を回避するための技術や資金の支援について、先駆者として大きな役割を担う責任があると思うのです。

 

次回の8回目は、いよいよ最終回で今も続く国内の公害被害者の苦悩と将来への展望についてお伝えします。


 
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