2016年02月18日
アイデアよもやま話 No.3316 公害先進国から環境保護への歩み その4 公害先進国から公害規制先進国への大転換!

これまで何度となく、一人一人の意識が変わり、行動を起こすことにより社会を変えることが出来るとお伝えしてきました。

そうした中、ちょっと古いですが、昨年7月18日(土)放送の「戦後史証言プロジェクト 日本人は何をめざしてきたのか 未来への選択(3) 公害先進国から環境保護へ」の録画を最近ようやく観ました。

そこで、主に番組を通して公害先進国から環境保護への歩みについて8回にわたってご紹介します。

4回目は、公害先進国から公害規制先進国への大転換についてです。

 

1970年は大きな転換の年になりました。

人類の進歩と調和をテーマにした日本万国博覧会は世界中から6000万人以上を集めました。

しかし、同時に深刻な公害が連日テレビや新聞で報じられていきました。

NHKの「1970年ニュースハイライト」では以下のように報じています。

「駿河湾の田子の浦、万葉の歌にも詠まれたこの海も今はヘドロが浮かぶ汚れた海になっています。」

「海の自然までも破壊してしまいました。」

「漁民の曳く網からは背びれや尾びれの溶けた魚が獲れました。」

「一方、都会では激増する交通事故とともに自動車の排気ガスが恐ろしい公害としてクローズアップされました。」

 

「すり鉢の底のような東京新宿の柳町交差点、車の排気ガスを吸い続けている地元の人たちの血液に普通より鉛が多く含まれているという検診の結果が5月下旬、民間の医師団から発表され、都会に住む人に不安を与えました。」

 

「東京杉並区の高校で生徒四十数人を倒した光化学スモッグ、(救急車で運ばれた女生徒の一人の声)「午前中クラブやってて、それで目がチカチカし出してきたんですね。で、その時は別に気にも留めなないで、午後の講習のプールに入ったんです。そしたら、先生が出なさいって。で、その時からちょっとめまいがしたり咳が出ちゃったりして、そして救急車で運ばれてきて。」」

 

「(杉並区広報車からの呼びかけ)ただいま光化学スモッグが高くなっておりますので、次のことにご注意下さい。」

「屋外にはなるべく出ないようにして下さい。」

 

また、当時の新聞は記事のタイトルを次のように記しています。

逃げ場なし、“光化学スモッグ”

大気を返せ

公害にのろわれた日本

 

この年の1970年、NHKが首都圏で行った調査によると、自身が何かの公害を受けているかという問いに76%がイエスと答えました。(回答者数 1486人)

 

公害問題が大きく報道される中、当時の佐藤 栄作首相は、その対策に本腰を入れて取り組むことになりました。

この年の7月、佐藤首相は内閣に直属する公害対策本部を設置しました。

本部長は首相自身が務めました。

公害対策本部には各省庁から24人のメンバーが集められました。

 

こうして1970年11月、後に“公害国会”と呼ばれるようになる臨時国会が徴集されました。

佐藤首相はこの国会で次のように演説されています。

「私は、今後の政策の基調を、“福祉なくして成長なし”という理念に求めたいと考えております。」

「国民生活優先の見地から公害対策基本法の改正を提案することといたしました。」

 

この時、佐藤首相は公害対策基本法の中の「経済調和条項」を削除することを決断しました。

公害国会で成立した法律では、騒音の規制、大気・水質・海洋・土壌の汚染の防止など、14もの公害対策法が制定されました。

人の健康を害する物質を排出した企業などを公害犯罪として処罰する法律も作られました。

 

元厚生省公害課長補佐の古川 貞二郎さんは、こうした状況について番組の中で次のようにおっしゃっています。

「私は、振り返ってみると、あの公害国会というのは、公害発生の先進国から公害規制の国に180度転換する最初の基盤じゃなかったかなと思います。」

「ただし、まだ環境の議論というのはまだあまりなかったですよね。」

「公害ということでの公害先進国から公害規制先進国に変わる転機だったということは言えるんじゃないかと思いますね。」

 

それにしても、1970年、NHKが首都圏で行った調査によると、4人に3人が何らかの公害の被害に遭っていたという状況には驚きです。

公害先進国から公害規制先進国への大転換については、誰もが認めると思いますが、なぜ公害の被害がここまで進まなければ国が真剣に取り組まないのか、とても残念です。

本来の国のあり方は、国民の受ける被害が発生する前に、あるいは発生したらその当初に対策を講じることだと思うのです。

 

次回の5回目は、環境権の誕生とその世界展開についてお伝えします。


 
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